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第25話
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受付嬢達にリゼへの対応を簡単に伝えると、クリスティーナは
リゼに、怪我が完治するまでの間、孤児部屋に滞在をしても良い事を伝える。
それを聞いたリゼは頭を下げて礼を言う。
「まずは怪我を治す事に専念して下さい。掃除をしようとしたりして、無理に体を動かす事も禁止です」
「はい、分かりました」
「何か質問はありますか?」
リゼはギルド会館内の作業で、受注出来るクエストの事を訊ねる。
クリスティーナは秘密にする事でも無いので、淡々と答えた。
クエスト内容は『魔物素材の仕分けや解体』になる。
しかし、内容により報酬は銀貨一枚から三枚と異なる。
成功報酬が銀貨一枚の『魔核の仕分け』
魔物によって、魔核と呼ばれる物を討伐した証として、ギルド会館に持ち帰ってくる。
汚れた魔核を綺麗に洗い、魔核毎や大きさ別にに仕分けする作業だ。
主に内臓器官が明確でない魔物に多い。
スライム系が、その部類に入る。
しかも、魔核の破壊が魔物討伐になる為、粉々になった魔核も有ったり、殆ど傷が無い魔核もある。
持ち込まれた魔核の状態を見れば、冒険者の腕も分かる。
このクエストのみ時間制の為、一日二回まで受注する事は可能だ。
しかし、汚れが綺麗に取れていなかったり、仕分けの数が少なすぎたりした場合は、報酬は減額される。
成功報酬が銀貨二枚の『魔物の解体(軽)』
小型から中型の魔物であれば、討伐した状態でギルド会館に持って来る。
それを、ギルド会館の裏で部位毎に解体する作業だ。
本来であれば、解体専門業者に卸す。
しかし魔物を解体する事で、魔物の体の仕組みを覚える事を目的とする為、ランクCに昇級した冒険者は必ず行うクエストだ。
解体の際は、解体業者から指導して貰える。
魔物の体の構造を知る事や、出来るだけ傷を付けずに討伐する箇所等を知る事が出来る。
魔物討伐クエストは、単純に討伐すれば良いという事では無い。
内容によっては、素材の持ち帰りが条件になっている事も多い。
当然、傷が少なければ査定の際の高評価となり、報酬も多くなる。
傷が多く使い物にならない場合は、報酬も減額される事になる。
勉強も兼ねて定期的に、このクエストを受注する冒険者も居る。
成功報酬が銀貨三枚の『魔物の解体(重)』
大型魔物の場合、討伐後に解体をしてギルド会館に持ち込む。
布に包んで持って来る者や、アイテムバッグに保管してくる者等、持ち込み方は様々だ。
鮮度が関係する素材もあるので、高報酬を貰おうとアイテムバッグを所持したい冒険者は多くいる。
持ち込まれた素材を更に解体して、素材毎に仕分けする。
一番重労働で、時間を要する。
魔物の体の仕組みは理解出来るが、持ち込まれる素材はランクB以上で難易度が高いクエストになる。
普通の冒険者であれば、一生討伐する事が無い魔物も居る為、このクエストは人気が無い。
『魔物の解体(軽)』で解体業者からのお墨付きが無ければ、このクエストは受注出来ない。
冒険者を引退しようとする者等は、第二の人生を解体業者で過ごそうと考える者達への職業訓練にもなっている。
いずれのクエストも解体業者へは、ギルドから報酬は支払われている。
説明を受けたリゼは、クリスティーナに質問をする。
例えば、『魔核の仕分け』を二回受注して、『魔物の解体(軽)』や『魔物の解体(重)』を受注する事が可能かだった。
クリスティーナは『魔物の解体(軽)』であれば可能だと答える。
但し、『魔物の解体(重)』は時間を要するクエストなので、出来たとしても『魔核の仕分け』は一回受注出来れば良い方だとも答えた。
そして、『魔物の解体(軽)』や『魔物の解体(重)』を受注した後に、時間を見ながら『魔核の仕分け』を受注した方が良いとも教えてくれた。
「ありがとうございます」
「仕事ですので」
礼を言うリゼに、クリスティーナは冷静に言葉を返す。
「どちらにしろ、動けるようになるまではクエストは受注させませんので、覚えておいて下さい」
「はい……」
普段通りに話すクリスティーナだったが、リセにとっては威圧的に感じた。
クリスティーナに嫌われていると思い込んでいるリゼにとって、今の会話で確信に変わろうとしていた。
孤児であると言う事。
そして、孤児部屋から出れない状況を作ってしまった自分に対して、クリスティーナが怒っているのだと思っていた。
「何か必要な物があれば、言って下さい」
「あっ! ……何でもありません」
「何ですか? 言いたい事があれば、気にせずに言って下さい」
リゼは言うべきか悩んだが、クリスティーナの言葉の圧に押されて言う事にした。
「あればで結構ですが、冒険に役立つ本等があればお借りしたいです。先程の解体等の今後、クエストに役立つ本等もあればで結構ですが……」
「分かりました。少し探してみます」
「御願いします」
「では、ゆっくり休んで下さい」
「はい」
クリスティーナはリゼを寝床に寝かせると、孤児部屋を出て行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
受付に戻ると、クリスティーナは机に向かう。
(一時も無駄にしたくないのかしら?)
クリスティーナはリゼの事を考える。
体が動かせない間も、冒険者としての知識を広めようとしている。
冒険者になった喜びからと言うよりも、生き急いでいるような印象を受ける。
「受付長。今、宜しいですか?」
「はい、何ですか?」
レベッカがクリスティーナに話し掛けて、書類を見せる。
貼り出す前の新規クエストについての確認のようだ。
「これは難しいですね。情報が集まるまでは貼り出すのを保留にしましょう」
「分かりました」
王都から各領地に配られる共通クエスト。
決められているのは、成功報酬と期間のみ。
難易度等は、各領地のギルドに任されている。
曖昧な情報だけの場合もある為、難易度を低く設定してしまうと、冒険者達の危険度が増す事もある。
後日、追加情報が届く事もよくある。
共通クエストの場合、最終判断はギルドマスターになる。
各ギルドにより、仕組みは異なるがオーリスの場合、受付嬢が内容確認した後に受付長であるクリスティーナが確認する。
クリスティーナが問題無いと判断した後に、ギルドマスターに承認を貰うような仕組みになっていた。
「有難う御座いました」
「あぁ、レベッカ」
「はい、なんでしょうか?」
「クエストの張り出しが終わったら頼みたい事がありますので、アイリと来て貰えますか」
「分かりました」
レベッカは、軽く頭を下げて戻って行った。
レベッカ達受付嬢が忙しそうにしている姿は、この位置からでも見えている。
何日もこのような光景を見てきているし、受付長になる以前は同じようにクエストの仕分け等も行っていた。
クリスティーナは引き出しから、一冊の古びたノートを取り出す。
ノートには幾つかの名前と日付が書いてあった。
最後の行にはリゼの名前が記載してある。
クリスティーナは、リゼの空白になっている退去日を見ていた。
リゼの上に書かれている名前を指でなぞり、上へと移動していく。
(何人が今も生きているのでしょうか……)
このノートには、このギルド会館の孤児部屋に入居した孤児達が記録されていた。
クリスティーナが受付長になる前、受付をしていた時代から記録されている。
何十年も前から受け継がれているノートだ。
年季の入ったノートだが、書かれている頁は二頁しかない。
それだけ、孤児部屋に入居する孤児が少ないという事だ。
クリスティーナも、ここに書かれている孤児達の何人かが命を落とした事を知っている。
クエストの失敗や、犯罪に手を染めたりと死因は異なる。
ノートには生死までの記載は無い。
孤児部屋を出た後の孤児がどうなろうが、ギルドか関与すべき事ではないからだ。
クリスティーナは、このノートの名前を見ながら孤児達の顔を思い出していた。
しかし、思い出す顔は全て笑顔で無かった。
(リゼさんも、笑顔を見せませんね……)
クリスティーナは孤児になった子は、置かれた状況から笑えないのでは無いかと考える。
リゼに対しては、自分の言動に問題があったという自覚が、クリスティーナには無かった。
リゼに、怪我が完治するまでの間、孤児部屋に滞在をしても良い事を伝える。
それを聞いたリゼは頭を下げて礼を言う。
「まずは怪我を治す事に専念して下さい。掃除をしようとしたりして、無理に体を動かす事も禁止です」
「はい、分かりました」
「何か質問はありますか?」
リゼはギルド会館内の作業で、受注出来るクエストの事を訊ねる。
クリスティーナは秘密にする事でも無いので、淡々と答えた。
クエスト内容は『魔物素材の仕分けや解体』になる。
しかし、内容により報酬は銀貨一枚から三枚と異なる。
成功報酬が銀貨一枚の『魔核の仕分け』
魔物によって、魔核と呼ばれる物を討伐した証として、ギルド会館に持ち帰ってくる。
汚れた魔核を綺麗に洗い、魔核毎や大きさ別にに仕分けする作業だ。
主に内臓器官が明確でない魔物に多い。
スライム系が、その部類に入る。
しかも、魔核の破壊が魔物討伐になる為、粉々になった魔核も有ったり、殆ど傷が無い魔核もある。
持ち込まれた魔核の状態を見れば、冒険者の腕も分かる。
このクエストのみ時間制の為、一日二回まで受注する事は可能だ。
しかし、汚れが綺麗に取れていなかったり、仕分けの数が少なすぎたりした場合は、報酬は減額される。
成功報酬が銀貨二枚の『魔物の解体(軽)』
小型から中型の魔物であれば、討伐した状態でギルド会館に持って来る。
それを、ギルド会館の裏で部位毎に解体する作業だ。
本来であれば、解体専門業者に卸す。
しかし魔物を解体する事で、魔物の体の仕組みを覚える事を目的とする為、ランクCに昇級した冒険者は必ず行うクエストだ。
解体の際は、解体業者から指導して貰える。
魔物の体の構造を知る事や、出来るだけ傷を付けずに討伐する箇所等を知る事が出来る。
魔物討伐クエストは、単純に討伐すれば良いという事では無い。
内容によっては、素材の持ち帰りが条件になっている事も多い。
当然、傷が少なければ査定の際の高評価となり、報酬も多くなる。
傷が多く使い物にならない場合は、報酬も減額される事になる。
勉強も兼ねて定期的に、このクエストを受注する冒険者も居る。
成功報酬が銀貨三枚の『魔物の解体(重)』
大型魔物の場合、討伐後に解体をしてギルド会館に持ち込む。
布に包んで持って来る者や、アイテムバッグに保管してくる者等、持ち込み方は様々だ。
鮮度が関係する素材もあるので、高報酬を貰おうとアイテムバッグを所持したい冒険者は多くいる。
持ち込まれた素材を更に解体して、素材毎に仕分けする。
一番重労働で、時間を要する。
魔物の体の仕組みは理解出来るが、持ち込まれる素材はランクB以上で難易度が高いクエストになる。
普通の冒険者であれば、一生討伐する事が無い魔物も居る為、このクエストは人気が無い。
『魔物の解体(軽)』で解体業者からのお墨付きが無ければ、このクエストは受注出来ない。
冒険者を引退しようとする者等は、第二の人生を解体業者で過ごそうと考える者達への職業訓練にもなっている。
いずれのクエストも解体業者へは、ギルドから報酬は支払われている。
説明を受けたリゼは、クリスティーナに質問をする。
例えば、『魔核の仕分け』を二回受注して、『魔物の解体(軽)』や『魔物の解体(重)』を受注する事が可能かだった。
クリスティーナは『魔物の解体(軽)』であれば可能だと答える。
但し、『魔物の解体(重)』は時間を要するクエストなので、出来たとしても『魔核の仕分け』は一回受注出来れば良い方だとも答えた。
そして、『魔物の解体(軽)』や『魔物の解体(重)』を受注した後に、時間を見ながら『魔核の仕分け』を受注した方が良いとも教えてくれた。
「ありがとうございます」
「仕事ですので」
礼を言うリゼに、クリスティーナは冷静に言葉を返す。
「どちらにしろ、動けるようになるまではクエストは受注させませんので、覚えておいて下さい」
「はい……」
普段通りに話すクリスティーナだったが、リセにとっては威圧的に感じた。
クリスティーナに嫌われていると思い込んでいるリゼにとって、今の会話で確信に変わろうとしていた。
孤児であると言う事。
そして、孤児部屋から出れない状況を作ってしまった自分に対して、クリスティーナが怒っているのだと思っていた。
「何か必要な物があれば、言って下さい」
「あっ! ……何でもありません」
「何ですか? 言いたい事があれば、気にせずに言って下さい」
リゼは言うべきか悩んだが、クリスティーナの言葉の圧に押されて言う事にした。
「あればで結構ですが、冒険に役立つ本等があればお借りしたいです。先程の解体等の今後、クエストに役立つ本等もあればで結構ですが……」
「分かりました。少し探してみます」
「御願いします」
「では、ゆっくり休んで下さい」
「はい」
クリスティーナはリゼを寝床に寝かせると、孤児部屋を出て行った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
受付に戻ると、クリスティーナは机に向かう。
(一時も無駄にしたくないのかしら?)
クリスティーナはリゼの事を考える。
体が動かせない間も、冒険者としての知識を広めようとしている。
冒険者になった喜びからと言うよりも、生き急いでいるような印象を受ける。
「受付長。今、宜しいですか?」
「はい、何ですか?」
レベッカがクリスティーナに話し掛けて、書類を見せる。
貼り出す前の新規クエストについての確認のようだ。
「これは難しいですね。情報が集まるまでは貼り出すのを保留にしましょう」
「分かりました」
王都から各領地に配られる共通クエスト。
決められているのは、成功報酬と期間のみ。
難易度等は、各領地のギルドに任されている。
曖昧な情報だけの場合もある為、難易度を低く設定してしまうと、冒険者達の危険度が増す事もある。
後日、追加情報が届く事もよくある。
共通クエストの場合、最終判断はギルドマスターになる。
各ギルドにより、仕組みは異なるがオーリスの場合、受付嬢が内容確認した後に受付長であるクリスティーナが確認する。
クリスティーナが問題無いと判断した後に、ギルドマスターに承認を貰うような仕組みになっていた。
「有難う御座いました」
「あぁ、レベッカ」
「はい、なんでしょうか?」
「クエストの張り出しが終わったら頼みたい事がありますので、アイリと来て貰えますか」
「分かりました」
レベッカは、軽く頭を下げて戻って行った。
レベッカ達受付嬢が忙しそうにしている姿は、この位置からでも見えている。
何日もこのような光景を見てきているし、受付長になる以前は同じようにクエストの仕分け等も行っていた。
クリスティーナは引き出しから、一冊の古びたノートを取り出す。
ノートには幾つかの名前と日付が書いてあった。
最後の行にはリゼの名前が記載してある。
クリスティーナは、リゼの空白になっている退去日を見ていた。
リゼの上に書かれている名前を指でなぞり、上へと移動していく。
(何人が今も生きているのでしょうか……)
このノートには、このギルド会館の孤児部屋に入居した孤児達が記録されていた。
クリスティーナが受付長になる前、受付をしていた時代から記録されている。
何十年も前から受け継がれているノートだ。
年季の入ったノートだが、書かれている頁は二頁しかない。
それだけ、孤児部屋に入居する孤児が少ないという事だ。
クリスティーナも、ここに書かれている孤児達の何人かが命を落とした事を知っている。
クエストの失敗や、犯罪に手を染めたりと死因は異なる。
ノートには生死までの記載は無い。
孤児部屋を出た後の孤児がどうなろうが、ギルドか関与すべき事ではないからだ。
クリスティーナは、このノートの名前を見ながら孤児達の顔を思い出していた。
しかし、思い出す顔は全て笑顔で無かった。
(リゼさんも、笑顔を見せませんね……)
クリスティーナは孤児になった子は、置かれた状況から笑えないのでは無いかと考える。
リゼに対しては、自分の言動に問題があったという自覚が、クリスティーナには無かった。
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