俺の幸せの為に

夢線香

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本編

29. 十四歳から始まる……

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 十四歳になった。

 俺とシュザークの背丈は、ちびりちびりと伸びている。シュザークは、十六歳にして百八十五センチを超えた。伸びの間隔が遅くなっているので、そろそろ頭打ちかも。俺も百八十は超えている。


 娼館の件で俺とシュザークは疲弊した。

 もう……暫くは、誰も抱きたくない……

 経験人数が、クズ男並みに酷いことになった。

 ヤリチンと言われても……何も言い返せない。

 ――天使のハニエルは一体、何処へ……?

 そのせいで、キディリガン家に人が増えた。



 アスローク。ヌーケハマー元侯爵。三十四歳。
 
 緩く波打った、腰までの胡桃色の茶髪。金の混じった紅茶色の眼。顔は、半眼のちょっと眠そうな美人。

 政略結婚で質の悪い侯爵令嬢と結婚して、毎日のように罵詈雑言を浴びせられていた。ヒステリックに物に当たり、金遣いも荒く、ついでに男癖も悪い奥さんと離縁して息子と一緒に我が家に来た。

 俺を金貨二十枚で買った人。

 娼館でアスロークを鑑定して、家に引き入れることにした。――何故って?

 魔王の側近候補だったからだ。

 これはもう、シュザークの側近になって貰うしかないでしょ。



 カイヒル。アスロークの一人息子。十五歳。

 父親のアスロークと同じ、波打った胡桃色の茶髪。宝石のエメラルドみたいな、くりっとした緑の眼。可愛い感じの少年。

 母親と種違いの弟に疎んじられていた。暴力はあまりなかったが罵詈雑言が酷く、父親がいない時は食事も偶に抜かれていたそう。父親が耐えていたから、アスロークの負担にならないように黙って耐えていた。



 ホワトム・ケシリーノ。沒落貴族の平民。二十八歳。

 蒼み懸かった真っ直ぐな白髪。濃い透明感のある碧眼。ちょっと垂れ目の優男。

 親が元貴族。両親は最後まで平民の暮らしに馴染むことはなく、借金だけを残して亡くなったそう。ホワトムは商人になって借金を返済。その後は順調に資産を増やしていたが、ずっと一緒にやって来た片腕とも呼べる相手に騙されて無一文に。その後、騙された相手を騙し返して大金を巻き上げ、灼けになって例の娼館に。

 シュザークを金貨二十枚で買った人。

 鑑定したら商人王候補だったので、シュザークが手元に置くと言って連れて来た。

 アスロークと気が合うらしく、仲が良い。――色んな意味で。



 ヴァークリス・セシリテリー。セシリテリー国の元第三王子。十八歳。

 真っ赤で真っ直ぐな腰までの髪に、白金の眼。切れ長の鋭い眼に、キリッとした男らしい端正な顔立ち。

 もう一人の魔王候補。

 国王になる気は全くなかったが、この見た目のせいで目立つことが多く、王位継承争いの標的にされた。第一王子に嵌められて娼館に売り飛ばされたそう。抱かれることに嫌悪感があり不感症。娼館では魔王の怒気を放ち、仕込み師も客も抱いていたそうだ。生粋の攻め。

 俺とシュザークが身請けして、一緒にダンジョンに潜っている。



 セララー。 平民。十五歳。

 桜の花の様な薄紅色の真っ直ぐな髪。尻を隠す長さ。髪と同じく薄紅色の眼。娼館ではみっともなく見えるように髪をボサボサにして、眼も隠していた。優しそうな美人。

 両親の借金の形に、両親に妹と二人娼館に売られた。良い両親ではなかったらしく、妹と二人扱き使われていたらしい。娼館では、シュザークが初めての客になるはずだった。

 聖女候補。

 俺とシュザークが身請けした。ダンジョンで聖女の力を磨いてもらっている。



 セリリー。 平民。十一歳。

 髪と眼はセララーと似たような色合いだが、セリリーの方が若干色が濃い。淡い桃色と言うべきか? 髪もふわふわと緩く波打っている。

 聖女候補。

 お姉ちゃんっ子。いつも自分を庇ってくれるセララーを彼女なりに守ろうとしている。娼館では幼かった為、下働きをしていたらしい。

 姉共々、身請けした。セララーと一緒にダンジョンで頑張って貰っている。



 ヴァークリス、セララー、セリリーを身請けした時は、三人とも絶望を顔に浮かべていたっけ。


 以上六名が、キディリガン一家に新たに加わった。




 また、王太子殿下のお茶会に参加した。

 王太子殿下に挨拶した後は、いつも通り席に座ってシュザークと二人お茶を飲む。

 本来ならカイヒルも来ただろうけど、侯爵から平民になったので来ることは出来ない。

 ただ、カイヒルの種違いの弟はいる。

 王太子殿下の周りを仕切りに彷徨いているが、まったく歯牙にも掛けられていない。母親と似て短気だと聞いているが……成る程。相手にされなくて、かなり苛ついて居るようだ。

「殿下も、今年から学園に通うんですね」

 王太子殿下なんて間違いなく攻略対象だろう。
 
 今、学園にいる主人公枠達は、そこまで大きな問題を起こしていない。

 対象を一人に絞って、仲睦まじくしている者もいる。

 ただ、王太子殿下というメインキャラが入学すれば、どうなるか分からない。

「そうだね。勉学と云うよりは交流がメインだろうね。殿下が学んでいるのは帝王学だろうし」

 ぽっちゃりシュザークがお茶を飲みながら答える。

「今年は、学園が更に荒れる予感がします……兄上、本当に気を付けて下さいね」

 この目茶苦茶な世界では、どんな輩がいるか分からない。

 ――俺の他にも神がいる可能性だって、充分に有り得るのだから。

「ああ、お前から離れないよ」

 シュザークが微笑んだ。

「そうですね。これまで通り一緒に行動しましょう」

「ハーシャといると退屈しなくて良いね」

 ぽっちゃり顔の二人で微笑み合っていると、会場がざわめいた。視線を走らせ騒ぎの元を捜す。

 どうやら、王太子殿下から少し離れた辺りが騒ぎの中心だ。殿下の傍には護衛の騎士が付いている。

「何の騒ぎでしょう……?」

「ここで座ったままと言う訳にはいかないね。少し近付こうか……」

 王太子殿下に危険が及ぶかもしれない時に、座ってのんびり見物していたら、顰蹙を買う。

 殿下よりも、少し離れた場所に移動する。

 俺達は背が高いしぽっちゃりしているので、あまり前に出ると目立ちすぎる。

 騒ぎの中心に居たのは、カイヒルの種違いの弟だった。

 誰かと揉めて居るようだ。相手は、ヘリオレン侯爵家の子息だ。

 遠すぎて、声が聞こえない。

「何を怒鳴っているのか聞こえませんね……」

「そうだね……もう少し近寄るかい?」

 ヘリオレン侯爵子息が平然と話しているのに対し、カイヒルの弟は唾を飛ばさんばかりに怒鳴り散らしている。

 少しずつ近付いていると、王太子殿下が動いた。

「――何の騒ぎだ」

 殿下に気付いたヘリオレン侯爵子息が礼を執る。カイヒルの弟は、殿下の御前だと云うのに礼も執らず、ヘリオレン侯爵子息にまだ何か言っている。同じ侯爵子息なのに差が歴然だ。

「ヌーケハマー侯爵子息、少し黙れ」

 殿下の冷やかな声が響く。

「っ……ですがっ……殿下! こいつがっ……!」

「聞こえなかったのか? 私は、黙れと言ったのだ」

 喰い下がるヌーケハマー侯爵子息に、殿下の声がまた低くなる。

「っ!」

 ヌーケハマー侯爵子息は、不貞腐れたようにそっぽを向いた。――いやいや、殿下の前でそれは駄目だろう。

「ヘリオレン侯爵子息、説明を」

「はっ、ヌーケハマー侯爵子息が他の子息令嬢を突き飛ばしながら殿下のお傍を彷徨くので、注意したところ、この様に怒り出してしまい手が付けられません……」

「うるさいっ! なんで、お前にそんなことを言われなきゃならないんだっ!」

 殿下に黙れと言われているのに、ヘリオレン侯爵子息に罵声を浴びせる。

「黙れ。ヌーケハマー侯爵子息――これで、三度目だ」

 殿下がまた警告した。だが。

「うるさいっ! うるさいっ!!」

 ヌーケハマー侯爵子息はあろうことか、自身の耳を両手で押さえて、その場で地団駄を踏んだ。

「――ヌーケハマー侯爵子息。お前の王宮への出入りを禁ずる。今日は、もう下がれ」

 殿下は、そう言い渡すと立ち去った。

 残されたヌーケハマー侯爵子息は、立ち去る殿下に掴み掛かろうとして殿下の護衛に押さえつけられた。

「なんでっ……!? 酷いじゃないですかっ! 僕は悪くないのにっ……!」

 押さえつけられてもまだ喚くヌーケハマー侯爵子息は、別の護衛に引き渡されて連れて行かれた。

「全く、話の通じない子だったね……マナーもなってないし……本当に、貴族なのかい……?」

 席に戻るなり、シュザークが呆れたように言う。

「兄上。今年の学園は、もしかしたらあんなのがたくさんいるかも知れませんよ?」

「冗談だよね……?」

「冗談ではないですが、もしかしたらの話です」

 シュザークは、何とも言えない顔で俺を見た。

 そんなことはないと思いたいが……

「あのダンジョンさえなければ、さっさと卒業するんですがね……」

 だって、学園のダンジョンからは、元の世界のお菓子がいっぱいドロップするんだよ。大福や団子もそうだけど、アイスとか、ソフトクリームとか、コーラまでドロップしたんだぞ? あと、しょっぱい系の袋菓子とか。中華まんとかさぁ。もうちょっと、ストックが欲しいんだよね。

 まあ、最悪の場合は、直ぐに卒業すればいいか。

「ハーシャは時々、ドロップしたものに並々ならぬ執着と情熱を持つからね……」

 シュザークは俺を呆れたような目で見ながら溜息を吐いた。

 そうして今年のお茶会も終了した。




 ワナミリアのダンジョンも完全攻略した。今は、ダンジョンに溜まった魔力を減らす為に潜っている。

 キディリガンのダンジョンとワナミリアのダンジョンを攻略したことにより、初期メンバーの皆と俺達は、冒険者ランクがSになった。

 ワナミリアのダンジョンは、魔物が溢れる危険魔力値を下げて、今は中間と危険値の真ん中あたりだとギルマスが教えてくれた。

 当初、ダンジョンをなくす方向で考えていたワナミリア領主は考えを変えつつある。精神耐性のある装備品は、需要が高いからだ。あと単純に酒とツマミが気に入ったのだと思う。

 俺達が攻略の仕方や情報を出したことで、攻略しやすくなったのもある。

 とはいえ、このダンジョンは特級だから魔物はそれなりに強いし油断は出来ない。

 それと、黒ビールを呑んでから入れば精神的にキツくはなくなることも分かった。

 俺的には、このダンジョンは好きなのでなくさないで欲しいけどな。ラーメンの他に炒飯やカツ丼や天丼、丼もの各種、うな重に、お茶漬け等など、米のご飯が出るのが嬉しい。

 勿論、初めてドロップした時は、その場で掻っ込んだとも。最初はドン引きしていた皆も、結界を張って一緒に食べるようになった。

 ちゃんと、武器なんかも出るよ? だけど、自分達で創った魔法の武器の方が使い勝手が良いんだよ。それに初期メンバーの魔力量、かなりやばいことになってるし……

 そんな感じで、ダンジョン攻略は順調だ。




 それと、妹が産まれた。

 赤金髪のシルバーの眼をした可愛い子です。

 初めて抱っこした時は、手が震えた……

 無事に……産まれて良かった……

 妹はシェティーナ。シェティーナ・キディリガン。  

 可愛い、可愛い、俺の妹。今度は幸せにしてみせるからな……




 ――そして、王太子殿下が入学して来る日。朝早くから、皆で学園の正門がよく見える場所に陣取り隠蔽と遮音の魔法を張った。

 学園なので、皆、冴えない姿だ。

「ハーシャ。こんなに早くからこんな所で、何をするんだい?」

 シュザークに首を傾げられる。

「今日、ここで観ていれば、注意するべき人物が分かるはずです」

 何のゲームだか、物語だかの世界か分からないけれど、王太子殿下が入学する日は出会い系イベントがあるのが相場だと踏んだ。王太子殿下に寄って来る主人公枠がいるに違いない。

「出来れば今日は、王太子殿下を遠くから監視したいんですよ」

 もし、ゲームや物語的な展開ならイベントは正門前だけとは限らないからな。

「そこまでするのかい?」

 シュザークは困惑顔だ。

「それは、これからの状況で決めます」

 皆は、顔を見合わせて戸惑っていた。

 俺の考え過ぎかどうかは、これから分かると思う。考え過ぎであれば良いのだけれど……

 正門前、と言っても門があるわけではない。大きな石造りのガゼボのようなものが五つ立ち並び、その場所に転移してくるのだ。

 貴族達は、自分の屋敷から直接転移して来る。外から通う平民は教会から学園に転移して来る。

 ただ、かなり安くはされているがお金が掛かる。それが払えない場合は、徒歩で通って来る。専用の門があり部外者の侵入を防ぐ為に門番が配置され、門自体も警備し易いように小さめに作られている。

「こうして見ると、何だか人の流れが悪いね……? 待ち合わせでもしているのかな?」

 シュザークが首を傾げる。

 そう、先程から同じ場所にいて動かない者が何人も居るのだ。しかも、ピンクが多い……

 そして、王太子殿下が二人の護衛騎士を連れてガゼボから現れた。

 場が一気にざわめいた。

 一番近くに居たピンクの少女が、殿下の方に駆け寄って……打つかりに行った。

 護衛騎士が直ぐに気が付き、殿下を背中に庇う。ピンクの少女は目標を護衛の騎士に変え、突進するが騎士にひらりと躱された。

「何だ? 殿下に……態と打つかりに行ったのか……?」

 ユリセスが呟いた。

 俺は、その少女を鑑定した。顔絵付きで紙に内容を転写して、シュザークに渡す。

「ヒロイン候補?――ヒロインって何だい?」

「本の主人公みたいなものですよ――あ、また来た……」

 さっきとは違うピンクの少女が殿下の前で転んだ。前と言っても三メートルは離れているが……殿下と護衛騎士は、避けて通り過ぎた。

 鑑定して、紙に転写してからシュザークへ。

「態と転んでいたようだけど……何がしたかったのかしら……?」

 シリアが首を傾げる。

「殿下に助け起こして貰うのを期待したんだよ。――ほら、次が来た……」

 今度は、ピンクの男が自分で転んだ。殿下達はスルー。

 転写した紙をシュザークへ渡す。

「彼等の目的は、何なんだい?」

 シュザークが眉間に皺を寄せる。

「見目の良い人達との恋愛かな……――あ、あいつ、鞄を投げた……」

 今度は茶髪の平凡な男が殿下の前方によろけた振りをして、鞄を放った。護衛騎士に睨まれている。

「あれは……まさか、殿下に拾って貰う気なのかな……?」

 ソーンが信じられないと言わんばかりに眼を見開く。

 紙をシュザークに渡しながら頷く。

「お近付きの切っ掛けが欲しいんだよ」

「逆効果じゃないか?」

 ガルドが呆れて言う。

「多分、話しさえすれば好意を持たれると思い込んでいるんだよ。お、正面から声を掛けたぞ」

 赤味を帯びたオレンジ髪の男が殿下に声を掛けた。殿下達は一瞥して通り過ぎる。

 シュザークに紙を渡す。

「――勇者候補……それにしても殿下にあんな無礼を働いて……連中は正気なのかな?」

「きっと学園の掲げる平等を勘違いしているんです」

「勘違い?」

 今、殿下の前で鞄の中身をぶち撒けた少女の鑑定紙を手渡しながら頷く。

「学園が掲げる平等は、貴賤に関わらず、平等に学べるという意味ですが、恐らく彼等は、学園では平等な身分だと思っています」

「馬鹿な……仮に学園だけで平等な身分なら、卒業した後に苦労するじゃないか。無礼討ちにされるだろう? 殿下相手なら殺されても文句は言えないよ?」

 そうですねぇ、と頷きながら殿下の前にハンカチを落とした平凡な少女の鑑定紙を渡す。

「大体は、権力のある人を狙っていますので、上手く行けば卒業後は本人も権力者ですね。――ほら、見て下さい。公爵子息に近寄っている者がいますよ」

 皆が眼を向けると、公爵子息に助け起こして貰っている少女がいた。

「あの子……さっき殿下に絡んでいませんでした?」

 メルが嫌そうに顔を顰めた。

「と云うか、よくあんな怪しい奴を助けたな……?」

 ユリセスが呆れ果てている。

「これはハーシャの言う通り、今日一日は殿下を監視した方が良さそうだね……」

 シュザークが溜息を吐いた。

「まあ、おやつならたくさんありますし、下手な芝居を観ると思ってのんびり見物しましょう」

 俺は、袋菓子を開けて皆にコーラを配った。




 その一日で、三十六人の主人公もどきを鑑定紙に写した。


 本当に、どんだけ居るんだよっ……!?



 三十六人の主人公もどきを鑑定した俺達がその後、どうしたかと云うと、魅了魔法を持った二十八名の鑑定紙をダリダラント公爵であるイグディス伯父様に渡した。勿論、ヒロイン候補とか勇者候補とか書かれた部分は消して。

 伯父様に渡したのは、キディリガン家の功績にしたくなかったからだ。報奨は手に入るかも知れないが、王宮に出仕しろなんて言われたら嫌だし面倒だ。

 魅了魔法は、とても危険なものだ。国を簡単に滅ぼしてしまう危険があるので、禁忌魔法に指定されている。

 俺も使おうと思えば多分使えるけど、使う気はない。シュザークとヴァークリスも魅了を持っていたが、俺が消したい、消したい、と思って鑑定画面を見ていたら魔法欄から消えた。多分、新たに習得しない限りは使えないと思う。

 誰かに鑑定されて、うっかり見られでもしたら酷い扱いを受けそうだし。二人は、自分が使えるとは知らないはずだ。普通に鑑定しただけでは観えないものだったし、シュザークが鑑定の精度を上げる前だったから、彼は気付いていない。

 魅了魔法を隠していると大変なことになるけど、ちゃんと国に申告すれば、迫害されることはない。

 申告すれば、国王、大司教、ギルド会長の三人総ての許可がなければ、魅了魔法を使ってはならないという契約魔法を結ばされる。後は、普通に暮らせる。

 逆に、この申告を怠って悪い人間に捕まると、奴隷に落とされ悪用される。国の暗部として飼っている場合もあるとかないとか……申告して魔法契約を結んでおけば、奴隷に落とされても魅了魔法を使うことは出来ないので狙われる心配がなくなる。

 申告することは、自分の安全の為でもあるのだ。

 そして、申告しないで自ら魅了魔法を使った場合は、問答無用で死刑になる。黙っていた親兄弟も同罪。知らなかったでは済まされない。

 それだけ魅了魔法の引き起こす事件は広範囲に渡り被害を及ぼし、掛けられ続けた人は最悪、廃人になる。

 そんな、危険な魔法を持った者が二十八人も学園にいるのだ。恐怖しかない。

 俺達がどうしようか悩んでいると、イグディスから呼び出された。

 王太子殿下が入学した日、殿下の魅了魔法を無効にする指輪が何度も反応をしたそうだ。

 そこで、秘密裏に調査して欲しいと陛下の側近であるイグディスに依頼があった。俺達が学園に通って居るので、話しを聞きたくて呼ばれたらしい。

 渡りに舟とばかりに鑑定した者のリストをイグディスに渡した。

 俺達のことは言わない約束で、イグディスの手柄にしてもらった。

 イグディスは、直ぐ様それを持って王宮へ向かった。

 国王の動きは迅速で、その日の内に全員の身柄を拘束し、魔力を封じた。

 そこから、聴き取り調査をして被害者の有無を確認。学園内にいる者全員に鑑定魔法が掛けられた。そして、新たに何人かの魅了魔法の持ち主を見つけて拘束。

 魅了に掛かっていた者も、直ぐ様保護されて解呪された。

 それは、魅了魔法を持った者の近親者にも及び、世間を騒がせる大きな事件となった。










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