59 / 108
第59話 魔法ブーム
しおりを挟む「バンボンボーボーチョーガード。耐火」
やってやった。
午前中の2時間カラオケで遂に火魔法の中級までを詠唱短縮コンプリート。もっと時間がかかるかと思ったが耐火も2日で詠唱短縮を獲得してしまった。
こういう1人作業は向いてるかも知れない。いや、知っていた。
達成感を噛締めつつ、向かった札幌イーストの間引きだが、雰囲気が若干おかしかった。
何故か皆、イヤホンマイク装備だ。
「さいとーさん。詠唱短縮の話ってほんと?」
マスクにイヤホンマイクの不審者度をアップさせたルイさんがにじり寄ってきた。みんなの視線もやや湿度が高い気がする。
「はい。でもマスクとマイクが擦れるだけで詠唱失敗しますよ」
「どうしよ。みんな消火できた方がいいよね?」
「それは理想的ではありますが⋯⋯MP少ないと詠唱回数こなすの大変ですよ」
「300回か⋯⋯」
腕を組んで思案に入ってしまうルイさんだが、寄せて上げてしまっているので気を付けた方がいいと思います。
「こちらは何とか耐火の短縮も間に合いました」
「えっ。火の中級全部?」
「はい。火の中級までは何とか。一人カラオケで詠唱回数をこなしました」
「なるほど。ホクダイかドーリの一人カラオケなら成功率を稼ぎやすいか」
マスターもさり気なくイヤホンマイク装備だ。魔法使いブームがやってきているらしい。
「あの漢字とか英語ってどうやって勉強するの? 普通じゃないよね?」
プログラミング的な英語は用語一覧を作ってみてもいいかも知れない。だが、厨二漢字は体感的に幅が広すぎてカバーしきれない。
普段からの絶え間ない努力が必要なのだ。しかし、ルイさんの「普通じゃない」は心に刺さる。
「英語はプログラミング用語が分かれば、後はローマ字読みだったりするんですが、漢字はちょっと前のラノベ読むとかですかね⋯⋯」
「ちょっと前って言われてもねぇ⋯⋯」
そう言われてもねぇ⋯⋯。
「皆さん、火魔法持っているんですか?」
「持ってないのガイくらいださー」
魔法使い予備軍は層が厚かった。マスターも詠唱の難易度の高さに諦めたクチか。
「細かい事は打ち上げでお話しますので、とりあえず普段通り間引きしましょうよ。また邪魔が入っても何ですし」
「そだねー」
イーストの様な中級難度の界では、火矢の詠唱短縮による連射速度と詠唱成功率の向上が、如実に成果に表れた。敵が単体なら飛行モンスターだろうが近寄る前に屠れる。
「さいとーさん。す、凄いですっ!」
「出番ない」
⋯⋯調子に乗り過ぎない様に気を付けよう。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる