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第4話 不人気職をお勧めされる
しおりを挟む魔法使いはお金がかかる。
端的に言うとそういう事らしい。
魔法を覚えるための魔導書はNPC商人しか売っておらず、初級魔法でも一つ最低3千円。魔法使いとして活躍したいのであれば最低限複数属性の魔法を保持するのがセオリーとの事。
恐ろしいのが中級・上級魔法になると桁が一つずつ増えていくのだそうだ。ゲームの魔法一つに30万円とかアホか。
経費で……落ちる訳ないな。
「上級魔法を複数持っているのは金を持ってる人だけね」
ため息をつく様に言っているが、その魔法アタッカーになる事を期待してるっぽかったのだが。……そんな金はない。
「まぁ……そうですよね」
「使いこなせてる人は滅多にいないけどね」
「そうなんです?」
「詠唱内容は毎度変化するし、音声入力だからある程度の声量と滑舌の良さが必要かな」
「……音声……入力?」
「そう……割とガチ目な詠唱を、公衆の場で」
「難易度高ぇーな」
「高ぇーっしょ? でも、属性が嵌れば火力凄いんだよね……」
「物理アタッカーはどうなんです?」
「物理は……短距離と長距離走れて……尚且つ正確なスキル入力できる素振り練習が必要なんだけど、お兄さん体力に自信ある?」
視線がムリでしょ?って言っている。もちろん体力に自信などあるはずもない。
「見ての通り、ないですね」
「ですよねー。体力付けるか、それとも供給過多のタンクかポーターか、引く手あまたな魔法使いか」
「つくづくムリゲーな仕事だなぁ」
「仕事?」
「ススキノエリアを開放しろと」
「ああー電力会社の懸賞金か~」
「いえ、別口で」
「うーん? まぁいいか。ススキノ開放が目的なら魔法使いになってウチのチームに入りなよ!」
「魔法使い決定なんですかそれは?」
「どうしても魔法使いが必要なの。私の界を取り戻すために……」
彼女は暴走しているススキノエリアに隣接した界の主だったらしい。
界の主とは、プレイヤーも主となる事ができる界の管理者で、出現する敵を決めたり、課金アイテム売上から収入を得たりもできる様だ。
この辺は後で担当の彼にも確認した方がいいだろう。
「ススキノの前に橋頭保が必要でしょ?」
「よく分かってないですが……そんな気がします」
「隣接界を押さえて、間引きしていればススキノ界のエーテル暴走も少しは治まると思うし……育成手伝うからそうしよう!」
願ってもない協力者だが、このまま勢いで押されて決めるのも危険だ。
「相談して決めないといけない相手がいるので、決定するのは相談してからでもいいですか?」
「もちろん。私はルイ。フレンド登録してね」
「さいとーです。しかし何で自分なんかを?」
「……ちゃんと働いていて昼に動ける人は意外と貴重なの」
「そうっすか」
営業職にも見えないだろうし、どんな風に彼女の目に映っているのだろうか? ちゃんと働いていて収入がある=魔法使い適性なんだろうか。嫌な適性だな。
「ちなみに魔導書とかの課金はどこからするんですかね? いまいち画面見てても見当たらないんですけど」
「NPC商人に会いに行かないと買えないよ。他のゲームと違って」
「えっと……どこに?」
「今はこの辺にはいないね。ここも多分、週末夜には呼ぶんだろうけど」
「はぁ……」
フレンド登録を行い、また連絡しますと挨拶もそこそこにルイさんと別れ、ホテルに戻ることにした。
しかし、何でもかんでも面倒なゲームやなぁ……。
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