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第5話 創成川イースト
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札幌中心部を南北に切り裂く創成川を渡り、信号に付けられた案内表示が東〇丁目に入れ替わる。札幌も外国人観光客が増え、宿泊費が高騰したため会社支給の宿泊費では中心部のビジネスホテルに連泊は厳しいのだ。
泊っているホテルも、創成川イーストと呼ばれる中心部からは若干外れた地域で、昔ながらの学生のスポーツ遠征などでよく使われる様な宿泊施設だ。宿泊費もリーズナブル、大浴場付きで朝からカレーが380円で食べられるので意外と気に入っている。
とりあえず大浴場とサウナを堪能した後に、担当の彼に報告メールを書く。ルイさんに勧誘された事と魔法使いを勧められた事、ススキノエリアへの橋頭保作戦についてだ。
向こうも終業時間だからまた明日かなと油断していたら速攻リプライが返ってくる。暇なんだろうか。
ルイさんが主をしていた界はここ創成川イースト地域でチーム名は「札幌イースト」だそうな。
魔法使いとして「札幌イースト」と協力し、創成川イーストエリアを落とし橋頭保とするのは大賛成との事で、近くの協力店での情報収集を勧められた。ホテル暮らしは会社規定で2週間だけなので、その後の住居の場所も相談していきましょうとの事。そこまでゲームに依存した生活をせねばならぬのか……。
これからチームと狩りに行くから返信が遅くなるそうだ。心配せずともメールなどしない。お互い働き方を改革した方がいいんじゃないだろうか。終業時間前にサウナを堪能していた俺が言えた事ではないかも知れないが。
徒歩一分の協力店は「バーニング餃子」という餃子バー。その協力店で指定メニューを頼むと24時間エーテル取得率200%のバフが付与されるらしい。24時間200%付与は札幌でトップレベルの付与率だ。他のバフを提供している協力店もある様だが育成にはエーテル取得率UPが最適だ。さぞかしプレイヤーが集まっているに違いない。
晩飯がてら出掛けてみることにした。
ホテルの裏から出ると徒歩一分どころか30秒くらいのそこは、観光客向け市場の向かいにあり、古い建物か何かを改装して小さな店舗が集まった商業施設だ。実は、一昨日の夜に一人で燻製と日本酒の店には行っていた。餃子バーはその隣の建物の2階にある。
階段を上り、店の前に着くとClosedの文字。19時から営業だったらしい。まだ18時半くらいだ。
「まだやってないけど、どうぞ」
サラリーマン風のスーツ姿のマスターが声を掛けてくれた。年上なのは分かるが年齢不詳な風貌だ。
店内はL字のカウンターに椅子が5脚。合板のカウンターがチープな感じだ。想像以上に狭く、プレイヤーが集まれる場所には見えないが、逆に一人で来やすそうだ。
「腹は減ってるのかい? 飲み物は?」
「あ、はい。ビールで」
「餃子と……ライスも食べるかい?」
「あ、はい。頂きます」
壁掛けのホワイトボードにメニューも書いてあるが、大体500円とだけ書いてあり詳細な値段が判断付かない。まぁぼられてもたかが知れているだろう。
流れ始めたジャズ風の音楽には聞き覚えがある。これは……。
「カウボーイビバップですね」
「分かってるね。兄さん」
口角が上がるマスターに、こちらもにやりと返す。アニソン好きに悪い人はいない。多分。
泊っているホテルも、創成川イーストと呼ばれる中心部からは若干外れた地域で、昔ながらの学生のスポーツ遠征などでよく使われる様な宿泊施設だ。宿泊費もリーズナブル、大浴場付きで朝からカレーが380円で食べられるので意外と気に入っている。
とりあえず大浴場とサウナを堪能した後に、担当の彼に報告メールを書く。ルイさんに勧誘された事と魔法使いを勧められた事、ススキノエリアへの橋頭保作戦についてだ。
向こうも終業時間だからまた明日かなと油断していたら速攻リプライが返ってくる。暇なんだろうか。
ルイさんが主をしていた界はここ創成川イースト地域でチーム名は「札幌イースト」だそうな。
魔法使いとして「札幌イースト」と協力し、創成川イーストエリアを落とし橋頭保とするのは大賛成との事で、近くの協力店での情報収集を勧められた。ホテル暮らしは会社規定で2週間だけなので、その後の住居の場所も相談していきましょうとの事。そこまでゲームに依存した生活をせねばならぬのか……。
これからチームと狩りに行くから返信が遅くなるそうだ。心配せずともメールなどしない。お互い働き方を改革した方がいいんじゃないだろうか。終業時間前にサウナを堪能していた俺が言えた事ではないかも知れないが。
徒歩一分の協力店は「バーニング餃子」という餃子バー。その協力店で指定メニューを頼むと24時間エーテル取得率200%のバフが付与されるらしい。24時間200%付与は札幌でトップレベルの付与率だ。他のバフを提供している協力店もある様だが育成にはエーテル取得率UPが最適だ。さぞかしプレイヤーが集まっているに違いない。
晩飯がてら出掛けてみることにした。
ホテルの裏から出ると徒歩一分どころか30秒くらいのそこは、観光客向け市場の向かいにあり、古い建物か何かを改装して小さな店舗が集まった商業施設だ。実は、一昨日の夜に一人で燻製と日本酒の店には行っていた。餃子バーはその隣の建物の2階にある。
階段を上り、店の前に着くとClosedの文字。19時から営業だったらしい。まだ18時半くらいだ。
「まだやってないけど、どうぞ」
サラリーマン風のスーツ姿のマスターが声を掛けてくれた。年上なのは分かるが年齢不詳な風貌だ。
店内はL字のカウンターに椅子が5脚。合板のカウンターがチープな感じだ。想像以上に狭く、プレイヤーが集まれる場所には見えないが、逆に一人で来やすそうだ。
「腹は減ってるのかい? 飲み物は?」
「あ、はい。ビールで」
「餃子と……ライスも食べるかい?」
「あ、はい。頂きます」
壁掛けのホワイトボードにメニューも書いてあるが、大体500円とだけ書いてあり詳細な値段が判断付かない。まぁぼられてもたかが知れているだろう。
流れ始めたジャズ風の音楽には聞き覚えがある。これは……。
「カウボーイビバップですね」
「分かってるね。兄さん」
口角が上がるマスターに、こちらもにやりと返す。アニソン好きに悪い人はいない。多分。
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