36 / 59
第36話 防具購入
しおりを挟む食べ過ぎたせいか久々に早寝早起きしてしまった。やはり柔らかい朝日で目覚めるのは良い。
スマホにはアユミさんから「本日の売上は1万円でした」とメッセージ。すっかり出動しなくても回っている。顧客を増やすか?でもそんな時間があるなら迷宮に潜りたいのも実情だ。何かあってからレベルを上げておけばと後悔するのは絶対に嫌だ。
そしてきっと何か起きるだろう。あんな垢にもそばかすにも塗れておらず、サラサラと脂ぎった髪ではなく、高性能下着に裏打ちされたプロポーションを持つ女性達を連れているのだ。確実に異世界の権力者なり強盗なりに絡まれる。現地基準からかけ離れて過ぎているのだ。
「変装方法も考えないとな……」
フードにマスクでもちょっと厳しいと思う。4人も連れていると余計目を引くだろう。目だけでもある程度の美貌が想像できてしまう上に、返って想像力をかき立てる気がする。だからと言ってサングラスするのもまた目立つ。
コンビニで唐揚げを買い、昨日の残りのカレーを解凍して唐揚げを載せる。至福。
もう少し現地の事情とか権力構造とか知りたいところだが、焦ったところで言葉が分かるようになるわけでもない。
「本でも売っていればなぁ」
向こうの字を理解する方が早そうかもと、本が売ってないかそれとなく市場を見ていたがまだ目撃できていない。字が記載されているのは換金所の巻物マップくらいだったので字を理解したところで現地人の識字率低すぎて読めない可能性の方が高そうなのだ。
とりあえずノアさん分の革の服を仕入れるかと昨日収集した魔石の入ったリュックを背負い迷宮街へと向かった。
こちらも天気が良く、空の青と雲の白のコントラストが眩しかった。やはり時間は向こうとリンクしている。
魔石を換金がてら8層の下の地図がないか身振り手振りで聞いてみたが首を振られた。やはりここまでのようだ。
貫頭衣型の革の服を3着購入する。丸めてリュックに詰め込めるとはいえ、これだけで結構な荷物だ。そして乱雑に商品が積まれている防具屋で目についたのは革の兜だ。軽く被る帽子のようなものから目だけにスリットが入ったアーメットヘルムのようなものもある。革製で厚みもありそれなりに重い。しかしこれならサングラスマスクフードより現地に馴染みやすい気がする。自分は着けたくないが。
内部があちこち紐でしめて装着するものならサイズの違いはある程度なんとかなるだろう。そもそも同じものが売っていないのでバラバラと4つかき集め、生首を4つ抱えるように店主に全部でいくらかジェスチャーで聞いてみる。
「ソフ」
「ソフ!?」
「ラーイ」
確か銀貨50枚。防具高い。なんとなくジェスチャーで革の服も買ったので安くしてやった感を出してきたので吹っ掛けてきたわけではないのだろう。仕方なく銀貨50枚を支払い、紐で繋げてもらった兜たちを担いで自宅へと向かった。こんな大荷物でうろうろしたくはなかったのだ。
防具ばかり担いで迷宮に潜る姿を奇異の目で見られてしまったのは致し方ないだろう。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる