世界の終わりでキスをして

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父さんの気持ちを知って。
俺は今まで家族の事なんか何も考えてない、冷たい父親だと思っていた事を恥じた。

父は父のやり方で母を一生懸命に救おうとしていたんだ。

誰にも言わずに孤独の中でずっとやり遂げようと今も必死に戦っている。

俺がその晩、なかなか寝付けずに、キッチンに降りて行くと流華がいた。

流華は何故かリビングで、父と母と健一叔父さんの3人で写っている写真を見つめていた。

「流華?」

俺が声をかけると、流華は驚いた顔をして俺を見る。
「恭弥、、、。」
「どうしたの?こんな時間に。眠れないの?」
俺が聞くと流華は首を振る。
「この写真の3人、とても幸せそうよね。」

流華が写真を眺めながら言う。

「そうだね。3人の実際の関係性は正直わからないんだけどさ、俺、健一叔父さんはずっと母さんの事が好きだったような気がするんだよ。」

流華が少し驚いた顔をして俺を見る。
「母さんは、どんな思いだったか知らないけど、健一叔父さん、母さんが病気になった時も必死に母さんを励まして、父さんの代わりにずっと看病してた。健一叔父さん結構、モテると思うんだよ。あんなんだけど顔はいいし。」

「尚美さんが好きだから、健一叔父さんは結婚しなかったって事?」

「そう。今までちゃんと恋人がいた話しも聞かないし。まあ、若い頃は知らないけど。ずっと母さんの事が好きだから、今でも父さんの事許せないんじゃないのかな?」

(最悪なのは、叶わない恋愛をいつまでも辞められない事、、、。)

いつか、言っていた叔父さんの言葉を思い出す。
あれは、叔父さん自身の事だろう。

母が亡くなった後も母さんへの気持ちが消えずに小さな火種となって燃え続けている。

「その思いが、恭一さんへの恨みとなっているのかな。」
流華が言う。


えっ?

「恨みなんてそこまでじゃないと思うけど。いくら揉めているからって兄弟だし。」
俺がそう言うと、流華が俺に訴えかける。
「そうかしら。兄弟だからこそ、感情が複雑になるって事もあるわよね。長年の尚美さんへの想いは私達には計り知れないくらい重いはずよ。」

俺は流華が何を言いたいのかよくわからなかった。

流華が何故かとても焦っているように見えるのは気のせいか?

「流華、、、どうしたの?」

「恭弥。私はこれ以上、恭弥に嘘をつけないわ。」

俺は流華の話しを聞いてだんだん緊張してきた。

流華がこれから俺にどんな事を告げようとしているのか、想像すら出来なかった。

けど、それがとても重大な事だって、流華の様子を見ればなんとなくわかる。

「流華、話して。どんな話しでも俺は流華を信じるよ。」

もう、これで終わりになる気がした。
本音は流華の話しを聞きたくない。
けど、俺にしか、流華の声を聞けないんじゃないか?

流華が俺に助けを求めているみたいに感じた。

「恭弥気づいてたでしょ?全部嘘だって。私は恭弥と出会った6月の始め、あの日初めて私はここへ来たの。あなたに出会う為に、大学へ行ったの。」

どうゆう事だ?

俺は頭が真っ白になってきた。
なんで俺に出会う為にわざわざ。
俺はフラッシュバックするように、流華との出会いを思い出す。

あの日、満員の山手線で初めて流華を見かけた。

その後にたまたま、同じ大学の講義に流華が現れた。

あれは全部仕組まれた事だって事か?
じゃあ流華は何の為に、、、?

「流華は何者なの?」
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