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1歩の勇気
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勾玉を手に入れた私達は、次は岩山神社の鏡を手に入れる為の作戦会議をした。
岩山鉱山は、村からバスで1時間くらいかかる。
名前の通り、かなりの岩がある山道で鎖場もあるような、厳しい山らしい。
岩山神社までの詳しい地図がなく、遭難する危険もある。
「糸さ、山登りした事ある?」
光が私に向かって聞いてくる。今日も光の釣りスポットで作戦会議だ。
「ないよ。もちろん。」
私が即答すると、光は携帯を見て考えこむ。
「この岩山鉱山、標高も高いし、かなり難易度が高そうな山なんだよな。糸登れるのかな。」
珍しく、弱気な発言をする。
それ程危険な場所なのか。
「う~ん、いきなり登るのは危険だな!」
閃いたように光が言う。
「トレーニングが必要だ。」
なんだか私は嫌な予感がした。
「えー。トレーニングって体力作りって事?
ちょっと面倒くさい。」
「何言ってんだよ!途中で登れなくなったらどうすんだよ。とりあえずジョギングと筋トレだな!後ちょっと軽めの山で慣らすか!」
何故か楽しそうに1人でどんどん決めていく。
正直、短距離は得意だが、長距離はあまり得意ではない。
「なんかさ、私ばっかり危険、危険って言うけど、自分はどうなのよ!光は登れるの?」
見た感じ、運動神経は良さそうだけど、登山はまた別だと思う。
「俺は全然平気。へっちゃら。」
「光は何の部活入ってるの?」
「俺はそんなつまんないもんに入ってないの。
しいて言うなら、釣り部かな。」
偉そうに言っている。
私は九竜神社に行った時、あんなに梯子の前で来なければ良かったと後悔していたのに。
何故か、岩山神社にも行きたいと思っている。
絶対に大変だし、怖いはずなのに。
光にその話しをすると
「あの梯子で度胸がついたんじゃねーの?
でも実際行ってみたら怖くてまた泣きだすんじゃねーの?」
と笑っていた。
確かにそれはそうかもしれない。
自分が1番ビビりだって事はよく理解している。
それでも、岩山神社に行ってみたいと思うんだから不思議だ。
光と遊んだ帰り道、私は家の外から、裏山を眺める。
何故かあの裏山に導かれている気がする。
大きな力で引き寄せられるように。
なんでそんな事を思うのか、自分でも全くわからないのだがそう感じるのだ。
「糸ちゃん?」
そう家の前で呼びかけられ、後ろをみると玄さんがいた。
「玄さん、こんにちは。」
玄さんは大きなスイカを持っていた。
「糸ちゃん。見てごらん。うちでとれたスイカだよ。一緒に食べよう。」
玄さんは大きな丸々としたスイカを抱きかかえていた。
私は思わず「美味しそう!」と歓声をあげる。
国子さんは、玄さんのスイカを切って、1つは神様に供えた。
そして残りは、私と玄さんと国子さんで縁側で食べた。
「糸ちゃん、もうこの村に慣れたかい?」
玄さんがスイカを食べながら言ってくる。
「はい。やっと少し慣れてきました。
友達もできたし。」
光だけど。
玄さんは、ニコニコして「良かった、良かった。」と頷いている。
「糸ちゃん、来週には学校近くの土手で花火もあるからな。友達と見たら良い。」
玄さんが言う。
「へぇ~花火があがるんですか?行ってみたい!」
私が言うと、国子さんが麦茶を持ってきた。
「花火はな、玄さんが上げるんだよ。
凄いだろう。」
「玄さんが?玄さん花火師だったの?
凄い!絶対見に行きます!」
「今年で引退するんだよ。
もう、年だからな。最後だから特別大きな花火をどーんっと上げてやるんだ。」
そうなんだ。
でも、今年が最後なんて寂しいな。
国子さんも言う。
「玄さんの後の後継者がいないからな、何十年と続いた花火大会も今年が最後なんだよ。
寂しいな。玄さんの花火は特別だった。」
「特別な花火?」
私が聞くと、玄さんが答えてくれる。
「流星花火っていうんだがな、2本の筒の中に火薬を詰めてあげるんだ。
オレンジの光が放物線を描いて、とても綺麗なんだよ。」
「そうそう。あれは本当に流星群そのものだよ。
今は色々派手な花火があるが、私はあれが1番好きだ。あの花火を見る度に、夏の思い出が蘇ってくる。何しろ、私が子供の頃からあった花火大会だからな。」
国子さんがしみじみと言う。
そんなに長い間続いていた花火大会なのか。
そんな話しを聞いたら、どんどん興味が湧いてくる。
光を誘って、見に行こう!
でも、光は誰か一緒に行く相手がいるのだろうか?
私の為なのか、いつも私と遊んでくれているけど、彼女とかいるのだろうか、、、?
あまり気にした事はなかったけど。
光も顔だけ見たら不細工ではない。
彼女くらいいてもおかしくないと思った。
私が考えこんでいると、国子さんが私に言う。
「そうそう。紬も糸のお父さんと、玄さんの花火を見た事があったんだよ。」
「お母さんが?お父さんと?」
「紬は玄さんの花火が小さい頃から大好きでな。玄さんの花火を、どうしても好きな人と見たいと言って、東京からわざわざ花火を見にきたんだよ。」
そんな事があったなんて全然知らなかった。
母はとにかく、神坂村については何も話したことがなかったのだ。
「俺も覚えているよ。紬ちゃん、浴衣を着て嬉しそうに、花火を見にきてくれたな。
そうか、あの時一緒にいたのが、糸ちゃんのお父ちゃんなんだな。」
玄さんも感慨深い様に頷く。
わざわざ東京から来てまで見たかった、母の好きだった花火。
一体どんな花火なんだろう。
もし、光に断られても1人でも絶対に見に行こうと思った。
「私のお父さんって、神坂村へ来た事があったんだね。」
国子さんは麦茶を口にした後、私に言う。
「何回か来ていたよ。結婚してからも、神坂村が気にいったようで2人で帰ってきてた。
釣りが趣味だったみたいで、ここの川はよく釣れるって嬉しそうにしていたな。」
私が2歳の時に父は事故で亡くなってしまっていたから、私は父の記憶がないに等しい。
もちろん、母から父との話しは聞かせてもらっていたけど、神坂村へ行った事など聞いた事はなかった。
母は意図的に、私にこの村の話しをしなかったのかもしれない。
私に神坂村の存在を知ってほしくなかったのかと思えるくらいだ。
理由は全然検討もつかないが、、、。
「お母さんって、この村の事嫌いだったのかな?」
私が国子さんに尋ねる。
国子さんじゃなく、玄さんが代わりに話し出す。
「そんな、事はないよ。
紬ちゃん、この村が大好きだったと思うよ。
紬ちゃん、やんちゃでな、男の子達と一緒になって、川遊びしたり、山で泥んこになって遊んでたよな?国子さんもよく叱ってたなぁ。」
国子さんも笑い出す。
「そうそう、紬は本当に男みたいだったからなあ。なんでこんななっちまったんだろうって、私も悩んだくらいだ。
かけっこもいつも1番で、男の子より速くてな、運動会ではいつもリレーの選手だった。」
その話しを聞いて私も笑い出す。
母らしいエピソードだと思ったから。
「紬ちゃん、俺に言ったんだよ。
この村を出るちょっと前に、『いつか必ずこの神坂村へ戻ってきて、またここで生活したい、ここは私の大好きな場所だから。』って。」
玄さんの言葉を聞いて、私は少し驚いた。
母はそんなにこの村が好きだったんだ。
じゃあなんで、帰ってこようとしなかったのか。帰るタイミングなんて沢山あったはずなのに。
あんなに側にいた母の事、私はちっとも知らなかったんだと思った。
何故か子供の母がこの縁側で一緒にスイカを食べているような気がしてきた。
次の日、私は朝から光と岩山神社へ行くトレーニングをした。
村のあぜ道をひたすら2人でジョギングする。
私の家の前を出発して、学校の方へまっすぐ学校の方へ走っていく。
途中に小さい山まあるので、トレーニングには丁度良い。
というか、きつすぎる。
その日も朝から気温が高く、ひたすら暑かった。
「ほら、おいてくぞ!」
光が鬼の様に言ってくる。
私は息がきれているが、光は全然余裕そうだ。
本当に体力おばけだと思う。
小さい時から野山で走りまわっているから、
都会育ちの凡人とは体力が違う。
「光!ちょっと待った!一回休憩しよう!
熱中症になるって!」
私が叫ぶと
「しょうがねーな!」
と言って、木陰に腰かける。
私は、はぁーはぁー言いながら、家から持ってきた水筒を飲む。
私達が休んでいたのは、丁度中学校の校庭の裏だった。
今日は校庭で部活の大会をやっていた。
「おい!陸上部じゃねぇか?」
光が私に言う。
確かによく見ると、クラスメイトらしき子がいる。
そして末永蒼も、、、。
私は、蒼をみただけで「うぇ。」と思い、光に
「やっぱり行こうか?」
と言う。
私が立ち上がって行こうとすると、光が私の腕を掴む。
「おい。なんか変だぞ。1人怪我してるみたいだ。」
よく見ると、末永蒼が自分の足を抱えている。
次はリレーの様だが、末永蒼が怪我をして出られなさそうだった。
「人数足りなくて揉めてるな。
陸上部、人数ぎりぎりだからな。
俺もよく助っ人で出されてたんだよ。」
「そうなんだ。学校、人数少ないもんね。」
私がそう言うと、光が私の方を向いて言ってくる。
「糸、あいつの代わりに出てやれよ。
短距離自信あんだろ?」
私はびっくりして首を振る。
「何言ってんの無理無理!無理に決まってるでしょ?いきなり大会に出るとか絶対無理!」
光は私を睨みつけて言ってくる。
「アップは充分したろ?お前言ってたよな、都大会に出たとか、、、あれ嘘か?」
「嘘じゃないって!本当だけど、多分嫌がられるよ!私陸上部の子達に嫌われてるから。」
本当にそうだ。末永蒼の代わりに出るなんて言ったら、きっとみんな反対するに決まってる。
1番に蒼が納得しないはずだ。
走りたいという気持ちがないわけではないが、ここでは無理だ。
「陸上部入りたいんじゃねーのかよ。」
「入りたいけど、、、。反対されるよ。私が仲間になる事。」
私は自分の足を見つめる。
昔からかけっこは得意だった。
運動会ではいつも1位で、母は恥ずかしい程私を大声で応援した。
陸上部に入ってからも、母は必ず大会には仕事を休んで見に来てくれた。
「糸、良くやった!」
そう誉めてくれる事がずっと嬉しかった。
だから、私は頑張った。
もっと速く走れるように。
もっと母が喜んでくれるように。
でも、そんな母はもういない。
けれど私は今、走りたくてうずうずしている。
なんでだろう。
「くだらないな。お前。
周りがどう言おうと関係ねーよ。
お前がやりたいんだろ?ならやれよ。やりたいと思った事は絶対にやれ!
後悔するぞ。」
後悔する?私後悔するかな。
でも、勇気が出ない。
その時、光が私の背中を強く押した。
吹っ飛びそうな勢いで私を押して言った。
「糸ならできる!走れ!」
光が言って、私は何故だかわからないが走りだしていた。
校庭に入って行くと、蒼が棄権になって、選手が足りない事で揉めていた。
私の顔みて、クラスメイトの何人かが、驚いて声をあげる。
「上村さん。どうしたの?」
蒼もびっくりした顔をしている。
棄権になってくやしくて泣いていたのか、頬に涙の跡があった。
私は勇気を出して思い切って言う。
「私、前の中学で陸上部だったの。人数足りないなら、出してもらえませんか!」
私は深々と頭を下げる。
皆んなの反応が怖すぎて頭が上げれない。
絶対に拒否される。
私の手は汗でびっしょりになっている。
物凄く長い間、頭を下げている気がする。
その時。
私の頭の上で声がした。
「出てくれるの?」
私が顔を上げると、同じクラスの子だった。
「この大会、勝たないと次の大会に進めないの。出て欲しい!」
その子が周りの皆んなにも確認する。
「いいよね!ねぇ、蒼も良いよね!」
蒼は呆然としていたが、私の方をみて
「お願い、私の代わりに走って。」
と言った。
私は「うん!」と大きく頷いて、リレーに参加する事になった。
皆んな「良かった!棄権になる所だった!」
と口々に喜んでくれた。
私はそれを見て嬉しくて仕方なかった。
また走れる事。
皆んなに受け入れてもらえた事。
全てが嬉しくてたまらなかった。
私は光の方へ向かって、手で丸を作り合図をすると、笑って手を降ってくれた。
光のお陰だ。
私は、蒼がアンカーだったのでそのままアンカーで走る事になった。
いきなりアンカーで正直荷が重かったが、それ以上に頑張りたい気持ちと、自信があった。
私ならやれる。
自分に言い聞かせる。
大会の前に良く母に言われていた。
『なんでも、自分に暗示をかけちゃえば、意外となんでもやれるのよ。私はやれると思えば大抵の事はやれる。だから頑張れ。』
母はもういないけど、母からもらった言葉なら全部私に残っている。
この自信は母がくれた自信だから。
絶対に私はやれる。
心臓がどきどきしている。
久しぶりの緊張感。
でも嫌じゃなかった。
バトンは3着で渡された。
私はバトンを受け取り走りだす。
不思議な事に今まで感じた事がないくらい、身体が軽かった。
私は風を切る。どんどん速く走れる気がする。
カーブで1人、抜いた。
皆んなの歓声が聞こえる。
「凄い凄い!上村さん頑張れ!」
1位までの距離がまだまだある、抜けるかどうかギリギリだ。
でも、諦めたくない。
私は思わずバトンを強く握る。
その時光のバカでかい声がした。
「いけー!!!お前ならできるぞー!!」
その声を聞いて私は更に強く走る。
思いっきり地面を足で蹴り上げて走る。
そして、ほんの僅差で私がフィニッシュラインを先に超える。
その瞬間、陸上部の子達が一斉に私に駆け寄ってきた。
「上村さん!ありがとう!凄いよ凄いよ!」
「こんなに足速いなんて驚きだよ!」
「感動した!ありがとう!」
皆んなが口々に私にお礼を言ってくる。
私も嬉しくて皆んなに「ありがとう!」と言う。胸がいっぱいだった。
東京にいた頃も、1位になれた事はあったが、こんなに価値のある1位は初めてだった。
皆んなが少し落ち着いた時、蒼が私の所へやってきたがまだ足は痛そうに引きずっていた。
「上村さん、ありがとう。上村さんのおかげで次の大会にもいける。」
そう言って、私に頭を下げる。
「私だけのおかげじゃないし、お礼なんていいよ。私が走りたかっただけだから。」
私が言うと、蒼は私の隣に座って話しかけてくる。
「上村さん、めちゃくちゃ速いね。
何の種目だったの?」
「そんなんでもないよ。短距離だったんだ。
長距離は全然ダメで。」
蒼が笑って
「私と一緒。でも私も上村さんに負けないくらい速いからね。」
「なんかそんな感じ。負けず嫌いに見えるから。」
私も笑って言う。
「負けず嫌いは長所でもあるでしょ?
特にタイムの世界では。」
蒼が勝気そうに言う。
「そうかも。」
「上村さん。ごめんね。私、上村さんに少し意地悪だったかも。」
蒼が頭を下げる。私は少しびっくりした。
「私もかなりやな奴だったかも。ごめんね。」
私も頭を下げると、蒼が笑う。
「この村、殆ど新しい住人なんてこないでしょ?特に東京から引っ越してくる人なんていないからさ。慣れてないっていうか、東京から来たってだけで上から見られてる感じがしてさ。」
蒼の話しを聞いて光の言葉を思い出す。
『ただでさえ、こんな田舎の村で、都会の奴らに多かれ少なかれ、みんな劣等感もってるんだから。』
そうか、光の言う通りそんな事思ってたんだ。
「でも、私も実際そんな風に思ってた所あったかもしれない。別に東京に住んでたからって偉くもないし、何も凄い事なんてないんだけどね。むしろこっちにきて、知らない事ばっかりで、私は東京で何にも経験してなかったんだと思ったよ。」
「そうなの?まあ。でも、こっちは本当に何もないからね。やっぱり私は憧れるけど、東京。」
「そっか、でも私は逆にこの村が凄く好きになったけど。」
私がそう言うと蒼は嬉しそうに笑う。
「次の大会会場は、結構大きい会場なんだよね、そこで勝てば次は、東京の会場の大会なんだ。上村さんもちろんまた走るよね?陸上部、入るでしょ?」
蒼が私の目を見て言う。
「もちろん!」
私が言うと、蒼が「みんなー!」と言いかけて、私の方を振り返って言う。
「糸って呼んでいいよね?」
私が頷くと
「皆んなー!糸が陸上部はいるってー!!」
と叫ぶ。
そう言うとみんな「やったー!」
と喜んでくれた。
勇気を出して良かった。
本当はずっとこっちに来てから、友達が欲しかった。
強がっていたけど、1人でいるのは、嫌だったんだ。
その後私は、顧問の先生の所へ行って正式に入部させてもらう事になった。
大会も終わり、他の選手達も帰りの準備を始めている。私も帰ろうとしたら、蒼が
「糸!この後みんなで遊びに行くけどこない?」
と聞いてくる。
私は「行く!」と言って光の事を思い出した。
光はずっと校庭の裏で待っていてくれてたんだ。
「ちょっと待ってね!」
と言って光の所へ行く。
光は校庭の裏の芝生で座っていた。
「光!見てた?私勝ったよ!」
興奮して光に言うと、光は笑顔で
「見てたよ。頑張ったな!速かった!俺が言った通りだったろ?」
とにんまり笑いながら言った。
「全部光のお陰だよ。光のお陰で勇気が出せた!」
本当にそうだ。自分1人なら行けなかった。
「お前が頑張ったんだろ。凄いなお前。」
と珍しく誉めてくれる。
後ろから「糸ー!」と蒼に呼ばれる。
私は振り返って
「遊ぼうって言われたの、光私、、」
「はやく行けよ。良かったな。友達出来て。
1人ぼっちでベソかいてたのに。」
「かいてないって!」
「いいから行けって!またいじめられるぞ!」
そう言ってまた、背中を押す。
「ありがとうー!」
私が言うと、光は笑って手を振ってくれた。
ちゃんと話せばわかり会える事が出来た。
それは、本当にただの1歩だけど、私にとっては、私の世界を変える様な大きな1歩だった。
今日の日を境に私の神坂村での生活はガラリと変わる。
私は今日の日を絶対に忘れないと思った。
岩山鉱山は、村からバスで1時間くらいかかる。
名前の通り、かなりの岩がある山道で鎖場もあるような、厳しい山らしい。
岩山神社までの詳しい地図がなく、遭難する危険もある。
「糸さ、山登りした事ある?」
光が私に向かって聞いてくる。今日も光の釣りスポットで作戦会議だ。
「ないよ。もちろん。」
私が即答すると、光は携帯を見て考えこむ。
「この岩山鉱山、標高も高いし、かなり難易度が高そうな山なんだよな。糸登れるのかな。」
珍しく、弱気な発言をする。
それ程危険な場所なのか。
「う~ん、いきなり登るのは危険だな!」
閃いたように光が言う。
「トレーニングが必要だ。」
なんだか私は嫌な予感がした。
「えー。トレーニングって体力作りって事?
ちょっと面倒くさい。」
「何言ってんだよ!途中で登れなくなったらどうすんだよ。とりあえずジョギングと筋トレだな!後ちょっと軽めの山で慣らすか!」
何故か楽しそうに1人でどんどん決めていく。
正直、短距離は得意だが、長距離はあまり得意ではない。
「なんかさ、私ばっかり危険、危険って言うけど、自分はどうなのよ!光は登れるの?」
見た感じ、運動神経は良さそうだけど、登山はまた別だと思う。
「俺は全然平気。へっちゃら。」
「光は何の部活入ってるの?」
「俺はそんなつまんないもんに入ってないの。
しいて言うなら、釣り部かな。」
偉そうに言っている。
私は九竜神社に行った時、あんなに梯子の前で来なければ良かったと後悔していたのに。
何故か、岩山神社にも行きたいと思っている。
絶対に大変だし、怖いはずなのに。
光にその話しをすると
「あの梯子で度胸がついたんじゃねーの?
でも実際行ってみたら怖くてまた泣きだすんじゃねーの?」
と笑っていた。
確かにそれはそうかもしれない。
自分が1番ビビりだって事はよく理解している。
それでも、岩山神社に行ってみたいと思うんだから不思議だ。
光と遊んだ帰り道、私は家の外から、裏山を眺める。
何故かあの裏山に導かれている気がする。
大きな力で引き寄せられるように。
なんでそんな事を思うのか、自分でも全くわからないのだがそう感じるのだ。
「糸ちゃん?」
そう家の前で呼びかけられ、後ろをみると玄さんがいた。
「玄さん、こんにちは。」
玄さんは大きなスイカを持っていた。
「糸ちゃん。見てごらん。うちでとれたスイカだよ。一緒に食べよう。」
玄さんは大きな丸々としたスイカを抱きかかえていた。
私は思わず「美味しそう!」と歓声をあげる。
国子さんは、玄さんのスイカを切って、1つは神様に供えた。
そして残りは、私と玄さんと国子さんで縁側で食べた。
「糸ちゃん、もうこの村に慣れたかい?」
玄さんがスイカを食べながら言ってくる。
「はい。やっと少し慣れてきました。
友達もできたし。」
光だけど。
玄さんは、ニコニコして「良かった、良かった。」と頷いている。
「糸ちゃん、来週には学校近くの土手で花火もあるからな。友達と見たら良い。」
玄さんが言う。
「へぇ~花火があがるんですか?行ってみたい!」
私が言うと、国子さんが麦茶を持ってきた。
「花火はな、玄さんが上げるんだよ。
凄いだろう。」
「玄さんが?玄さん花火師だったの?
凄い!絶対見に行きます!」
「今年で引退するんだよ。
もう、年だからな。最後だから特別大きな花火をどーんっと上げてやるんだ。」
そうなんだ。
でも、今年が最後なんて寂しいな。
国子さんも言う。
「玄さんの後の後継者がいないからな、何十年と続いた花火大会も今年が最後なんだよ。
寂しいな。玄さんの花火は特別だった。」
「特別な花火?」
私が聞くと、玄さんが答えてくれる。
「流星花火っていうんだがな、2本の筒の中に火薬を詰めてあげるんだ。
オレンジの光が放物線を描いて、とても綺麗なんだよ。」
「そうそう。あれは本当に流星群そのものだよ。
今は色々派手な花火があるが、私はあれが1番好きだ。あの花火を見る度に、夏の思い出が蘇ってくる。何しろ、私が子供の頃からあった花火大会だからな。」
国子さんがしみじみと言う。
そんなに長い間続いていた花火大会なのか。
そんな話しを聞いたら、どんどん興味が湧いてくる。
光を誘って、見に行こう!
でも、光は誰か一緒に行く相手がいるのだろうか?
私の為なのか、いつも私と遊んでくれているけど、彼女とかいるのだろうか、、、?
あまり気にした事はなかったけど。
光も顔だけ見たら不細工ではない。
彼女くらいいてもおかしくないと思った。
私が考えこんでいると、国子さんが私に言う。
「そうそう。紬も糸のお父さんと、玄さんの花火を見た事があったんだよ。」
「お母さんが?お父さんと?」
「紬は玄さんの花火が小さい頃から大好きでな。玄さんの花火を、どうしても好きな人と見たいと言って、東京からわざわざ花火を見にきたんだよ。」
そんな事があったなんて全然知らなかった。
母はとにかく、神坂村については何も話したことがなかったのだ。
「俺も覚えているよ。紬ちゃん、浴衣を着て嬉しそうに、花火を見にきてくれたな。
そうか、あの時一緒にいたのが、糸ちゃんのお父ちゃんなんだな。」
玄さんも感慨深い様に頷く。
わざわざ東京から来てまで見たかった、母の好きだった花火。
一体どんな花火なんだろう。
もし、光に断られても1人でも絶対に見に行こうと思った。
「私のお父さんって、神坂村へ来た事があったんだね。」
国子さんは麦茶を口にした後、私に言う。
「何回か来ていたよ。結婚してからも、神坂村が気にいったようで2人で帰ってきてた。
釣りが趣味だったみたいで、ここの川はよく釣れるって嬉しそうにしていたな。」
私が2歳の時に父は事故で亡くなってしまっていたから、私は父の記憶がないに等しい。
もちろん、母から父との話しは聞かせてもらっていたけど、神坂村へ行った事など聞いた事はなかった。
母は意図的に、私にこの村の話しをしなかったのかもしれない。
私に神坂村の存在を知ってほしくなかったのかと思えるくらいだ。
理由は全然検討もつかないが、、、。
「お母さんって、この村の事嫌いだったのかな?」
私が国子さんに尋ねる。
国子さんじゃなく、玄さんが代わりに話し出す。
「そんな、事はないよ。
紬ちゃん、この村が大好きだったと思うよ。
紬ちゃん、やんちゃでな、男の子達と一緒になって、川遊びしたり、山で泥んこになって遊んでたよな?国子さんもよく叱ってたなぁ。」
国子さんも笑い出す。
「そうそう、紬は本当に男みたいだったからなあ。なんでこんななっちまったんだろうって、私も悩んだくらいだ。
かけっこもいつも1番で、男の子より速くてな、運動会ではいつもリレーの選手だった。」
その話しを聞いて私も笑い出す。
母らしいエピソードだと思ったから。
「紬ちゃん、俺に言ったんだよ。
この村を出るちょっと前に、『いつか必ずこの神坂村へ戻ってきて、またここで生活したい、ここは私の大好きな場所だから。』って。」
玄さんの言葉を聞いて、私は少し驚いた。
母はそんなにこの村が好きだったんだ。
じゃあなんで、帰ってこようとしなかったのか。帰るタイミングなんて沢山あったはずなのに。
あんなに側にいた母の事、私はちっとも知らなかったんだと思った。
何故か子供の母がこの縁側で一緒にスイカを食べているような気がしてきた。
次の日、私は朝から光と岩山神社へ行くトレーニングをした。
村のあぜ道をひたすら2人でジョギングする。
私の家の前を出発して、学校の方へまっすぐ学校の方へ走っていく。
途中に小さい山まあるので、トレーニングには丁度良い。
というか、きつすぎる。
その日も朝から気温が高く、ひたすら暑かった。
「ほら、おいてくぞ!」
光が鬼の様に言ってくる。
私は息がきれているが、光は全然余裕そうだ。
本当に体力おばけだと思う。
小さい時から野山で走りまわっているから、
都会育ちの凡人とは体力が違う。
「光!ちょっと待った!一回休憩しよう!
熱中症になるって!」
私が叫ぶと
「しょうがねーな!」
と言って、木陰に腰かける。
私は、はぁーはぁー言いながら、家から持ってきた水筒を飲む。
私達が休んでいたのは、丁度中学校の校庭の裏だった。
今日は校庭で部活の大会をやっていた。
「おい!陸上部じゃねぇか?」
光が私に言う。
確かによく見ると、クラスメイトらしき子がいる。
そして末永蒼も、、、。
私は、蒼をみただけで「うぇ。」と思い、光に
「やっぱり行こうか?」
と言う。
私が立ち上がって行こうとすると、光が私の腕を掴む。
「おい。なんか変だぞ。1人怪我してるみたいだ。」
よく見ると、末永蒼が自分の足を抱えている。
次はリレーの様だが、末永蒼が怪我をして出られなさそうだった。
「人数足りなくて揉めてるな。
陸上部、人数ぎりぎりだからな。
俺もよく助っ人で出されてたんだよ。」
「そうなんだ。学校、人数少ないもんね。」
私がそう言うと、光が私の方を向いて言ってくる。
「糸、あいつの代わりに出てやれよ。
短距離自信あんだろ?」
私はびっくりして首を振る。
「何言ってんの無理無理!無理に決まってるでしょ?いきなり大会に出るとか絶対無理!」
光は私を睨みつけて言ってくる。
「アップは充分したろ?お前言ってたよな、都大会に出たとか、、、あれ嘘か?」
「嘘じゃないって!本当だけど、多分嫌がられるよ!私陸上部の子達に嫌われてるから。」
本当にそうだ。末永蒼の代わりに出るなんて言ったら、きっとみんな反対するに決まってる。
1番に蒼が納得しないはずだ。
走りたいという気持ちがないわけではないが、ここでは無理だ。
「陸上部入りたいんじゃねーのかよ。」
「入りたいけど、、、。反対されるよ。私が仲間になる事。」
私は自分の足を見つめる。
昔からかけっこは得意だった。
運動会ではいつも1位で、母は恥ずかしい程私を大声で応援した。
陸上部に入ってからも、母は必ず大会には仕事を休んで見に来てくれた。
「糸、良くやった!」
そう誉めてくれる事がずっと嬉しかった。
だから、私は頑張った。
もっと速く走れるように。
もっと母が喜んでくれるように。
でも、そんな母はもういない。
けれど私は今、走りたくてうずうずしている。
なんでだろう。
「くだらないな。お前。
周りがどう言おうと関係ねーよ。
お前がやりたいんだろ?ならやれよ。やりたいと思った事は絶対にやれ!
後悔するぞ。」
後悔する?私後悔するかな。
でも、勇気が出ない。
その時、光が私の背中を強く押した。
吹っ飛びそうな勢いで私を押して言った。
「糸ならできる!走れ!」
光が言って、私は何故だかわからないが走りだしていた。
校庭に入って行くと、蒼が棄権になって、選手が足りない事で揉めていた。
私の顔みて、クラスメイトの何人かが、驚いて声をあげる。
「上村さん。どうしたの?」
蒼もびっくりした顔をしている。
棄権になってくやしくて泣いていたのか、頬に涙の跡があった。
私は勇気を出して思い切って言う。
「私、前の中学で陸上部だったの。人数足りないなら、出してもらえませんか!」
私は深々と頭を下げる。
皆んなの反応が怖すぎて頭が上げれない。
絶対に拒否される。
私の手は汗でびっしょりになっている。
物凄く長い間、頭を下げている気がする。
その時。
私の頭の上で声がした。
「出てくれるの?」
私が顔を上げると、同じクラスの子だった。
「この大会、勝たないと次の大会に進めないの。出て欲しい!」
その子が周りの皆んなにも確認する。
「いいよね!ねぇ、蒼も良いよね!」
蒼は呆然としていたが、私の方をみて
「お願い、私の代わりに走って。」
と言った。
私は「うん!」と大きく頷いて、リレーに参加する事になった。
皆んな「良かった!棄権になる所だった!」
と口々に喜んでくれた。
私はそれを見て嬉しくて仕方なかった。
また走れる事。
皆んなに受け入れてもらえた事。
全てが嬉しくてたまらなかった。
私は光の方へ向かって、手で丸を作り合図をすると、笑って手を降ってくれた。
光のお陰だ。
私は、蒼がアンカーだったのでそのままアンカーで走る事になった。
いきなりアンカーで正直荷が重かったが、それ以上に頑張りたい気持ちと、自信があった。
私ならやれる。
自分に言い聞かせる。
大会の前に良く母に言われていた。
『なんでも、自分に暗示をかけちゃえば、意外となんでもやれるのよ。私はやれると思えば大抵の事はやれる。だから頑張れ。』
母はもういないけど、母からもらった言葉なら全部私に残っている。
この自信は母がくれた自信だから。
絶対に私はやれる。
心臓がどきどきしている。
久しぶりの緊張感。
でも嫌じゃなかった。
バトンは3着で渡された。
私はバトンを受け取り走りだす。
不思議な事に今まで感じた事がないくらい、身体が軽かった。
私は風を切る。どんどん速く走れる気がする。
カーブで1人、抜いた。
皆んなの歓声が聞こえる。
「凄い凄い!上村さん頑張れ!」
1位までの距離がまだまだある、抜けるかどうかギリギリだ。
でも、諦めたくない。
私は思わずバトンを強く握る。
その時光のバカでかい声がした。
「いけー!!!お前ならできるぞー!!」
その声を聞いて私は更に強く走る。
思いっきり地面を足で蹴り上げて走る。
そして、ほんの僅差で私がフィニッシュラインを先に超える。
その瞬間、陸上部の子達が一斉に私に駆け寄ってきた。
「上村さん!ありがとう!凄いよ凄いよ!」
「こんなに足速いなんて驚きだよ!」
「感動した!ありがとう!」
皆んなが口々に私にお礼を言ってくる。
私も嬉しくて皆んなに「ありがとう!」と言う。胸がいっぱいだった。
東京にいた頃も、1位になれた事はあったが、こんなに価値のある1位は初めてだった。
皆んなが少し落ち着いた時、蒼が私の所へやってきたがまだ足は痛そうに引きずっていた。
「上村さん、ありがとう。上村さんのおかげで次の大会にもいける。」
そう言って、私に頭を下げる。
「私だけのおかげじゃないし、お礼なんていいよ。私が走りたかっただけだから。」
私が言うと、蒼は私の隣に座って話しかけてくる。
「上村さん、めちゃくちゃ速いね。
何の種目だったの?」
「そんなんでもないよ。短距離だったんだ。
長距離は全然ダメで。」
蒼が笑って
「私と一緒。でも私も上村さんに負けないくらい速いからね。」
「なんかそんな感じ。負けず嫌いに見えるから。」
私も笑って言う。
「負けず嫌いは長所でもあるでしょ?
特にタイムの世界では。」
蒼が勝気そうに言う。
「そうかも。」
「上村さん。ごめんね。私、上村さんに少し意地悪だったかも。」
蒼が頭を下げる。私は少しびっくりした。
「私もかなりやな奴だったかも。ごめんね。」
私も頭を下げると、蒼が笑う。
「この村、殆ど新しい住人なんてこないでしょ?特に東京から引っ越してくる人なんていないからさ。慣れてないっていうか、東京から来たってだけで上から見られてる感じがしてさ。」
蒼の話しを聞いて光の言葉を思い出す。
『ただでさえ、こんな田舎の村で、都会の奴らに多かれ少なかれ、みんな劣等感もってるんだから。』
そうか、光の言う通りそんな事思ってたんだ。
「でも、私も実際そんな風に思ってた所あったかもしれない。別に東京に住んでたからって偉くもないし、何も凄い事なんてないんだけどね。むしろこっちにきて、知らない事ばっかりで、私は東京で何にも経験してなかったんだと思ったよ。」
「そうなの?まあ。でも、こっちは本当に何もないからね。やっぱり私は憧れるけど、東京。」
「そっか、でも私は逆にこの村が凄く好きになったけど。」
私がそう言うと蒼は嬉しそうに笑う。
「次の大会会場は、結構大きい会場なんだよね、そこで勝てば次は、東京の会場の大会なんだ。上村さんもちろんまた走るよね?陸上部、入るでしょ?」
蒼が私の目を見て言う。
「もちろん!」
私が言うと、蒼が「みんなー!」と言いかけて、私の方を振り返って言う。
「糸って呼んでいいよね?」
私が頷くと
「皆んなー!糸が陸上部はいるってー!!」
と叫ぶ。
そう言うとみんな「やったー!」
と喜んでくれた。
勇気を出して良かった。
本当はずっとこっちに来てから、友達が欲しかった。
強がっていたけど、1人でいるのは、嫌だったんだ。
その後私は、顧問の先生の所へ行って正式に入部させてもらう事になった。
大会も終わり、他の選手達も帰りの準備を始めている。私も帰ろうとしたら、蒼が
「糸!この後みんなで遊びに行くけどこない?」
と聞いてくる。
私は「行く!」と言って光の事を思い出した。
光はずっと校庭の裏で待っていてくれてたんだ。
「ちょっと待ってね!」
と言って光の所へ行く。
光は校庭の裏の芝生で座っていた。
「光!見てた?私勝ったよ!」
興奮して光に言うと、光は笑顔で
「見てたよ。頑張ったな!速かった!俺が言った通りだったろ?」
とにんまり笑いながら言った。
「全部光のお陰だよ。光のお陰で勇気が出せた!」
本当にそうだ。自分1人なら行けなかった。
「お前が頑張ったんだろ。凄いなお前。」
と珍しく誉めてくれる。
後ろから「糸ー!」と蒼に呼ばれる。
私は振り返って
「遊ぼうって言われたの、光私、、」
「はやく行けよ。良かったな。友達出来て。
1人ぼっちでベソかいてたのに。」
「かいてないって!」
「いいから行けって!またいじめられるぞ!」
そう言ってまた、背中を押す。
「ありがとうー!」
私が言うと、光は笑って手を振ってくれた。
ちゃんと話せばわかり会える事が出来た。
それは、本当にただの1歩だけど、私にとっては、私の世界を変える様な大きな1歩だった。
今日の日を境に私の神坂村での生活はガラリと変わる。
私は今日の日を絶対に忘れないと思った。
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