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番外編ストーリー要素強めなR-18
7【ポチ視点】お、お前なんかが!?
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慌てて戻っていくクリス様を見て一息つく。あんな事後ですと主張する身体で出歩かれてしまったら私たちがお叱りを受けるところだった。
あの痛々しい首元を見て、夜は激しいのだなと再認識した。夜間警備の人間が「めっちゃテクニシャンだったようだ」という感想を私に述べていたので、アホかこいつと思っていたが、確かにあれでは言いふらしたくなるほどよかったのだろう。
羨ましがってはダメだ。私は殿下と腹違いとはいえ血は繋がっているし、なんならただのベータだ。魔法も使えなければ特別地位も高いわけではない。
クリス様は私にはもちろん、城にいる者みんなに優しく接してくださり、憎みたくても憎めなかった。むしろクリス様のことは人として大好きなのだ。いっそのこと性格が悪かったらいいものを。
殿下が、翼を出してしまわれたようなのでヤンを探しに行こうとしていると言っていたな。
クリス様の言葉を思い出し、少し早足で進む。見つかってはまずいので。
ヤンは基本与えられた部屋で過ごしていることが多かった。しかしノックをして開けると部屋は荷物が前見た時より少なくなっており、なにより本人が不在だった。
次にいる場所と言えば、資料館だ。色々な本が置かれている所で最近浸っているらしい。これは部下から聞いている。
鍵を使用してそこを開ければ、机の上でうつ伏せになりながら眠っている例の人物がいた。
「おい、ここで寝るな。」
「むにゃ………?アレ?」
「……最近ここにいると聞いていたが何してるんだ。部屋も荷物が少なかっただろう。」
「アッ!部屋を勝手に見ないでくだサイ!!ヘンタイ!!」
「なっ、私はクリス様が呼んでいたので仕方がなくだな!!!」
彼はムカつくくらいに大きなため息をついて、「アナタと話していたら時間のムダだって最近気がついたんデス。」と首を振りながら本を片付けて始めた。
「オレここから出ていくんデス。」
「母国に帰るのか?」
「マサカ!まだレオナルド様にお話してないんデスケド、養子の話が飛んできましテ。」
ああ、それで荷物が少なかったことに納得する。
「ちなみにどこの養子になるんだ?」
「名前忘れましたケド、宰相のとこデス。」
「ふーん……はあ!?」
冗談を言っている風には聞こえなかったが、冗談にしか捉えられなかった。聞こえ間違えでなければ宰相って……王を補佐する役職のあの!カルデア家のところか?
確か地位を受け継ぐ子供がいなかったことを思い出す。養子と言えどそれはほとんど、こいつが受け継ぐようなもので……。
「…国が滅びる………。」
「失礼デスネ!」
ついうっかりこぼしてしまったのをしっかりヤンは聞き取っていたようでぐあー!と襲いかかってきた。
元々ヤンは性格も性質も非常に残念だけど、真面目に勉学に励んだことはないのに武術も座学も優秀だという天才肌だ。さらには魔族の力を持てば魔法だって使えてしまうらしい。
それを見抜いてのことだろうけど、私は普段がああなので素直に祝ってやることはできなかった。
「精々迷惑をかけないことだな。」
「……。」
と言えばヤンは何か言い返そうとしていたが、堪えるかのように変な顔をして珍しくも黙っている。
「とにかく話が長くなってしまった。クリス様がおよびだからついてきてくれないか。」
「ハーイ。」
「もちろん殿下絡みだ。」と付け足せばヤル気のない足取りは一瞬で元気になってスキップするかのように歩み出した。
全く……クリス様のことは好きなのか、命令なら一応ヤンは動くが、レオナルド様のこととなるとIQが一気に急低下し、従順になる。なんとも扱いやすいことか。
あの痛々しい首元を見て、夜は激しいのだなと再認識した。夜間警備の人間が「めっちゃテクニシャンだったようだ」という感想を私に述べていたので、アホかこいつと思っていたが、確かにあれでは言いふらしたくなるほどよかったのだろう。
羨ましがってはダメだ。私は殿下と腹違いとはいえ血は繋がっているし、なんならただのベータだ。魔法も使えなければ特別地位も高いわけではない。
クリス様は私にはもちろん、城にいる者みんなに優しく接してくださり、憎みたくても憎めなかった。むしろクリス様のことは人として大好きなのだ。いっそのこと性格が悪かったらいいものを。
殿下が、翼を出してしまわれたようなのでヤンを探しに行こうとしていると言っていたな。
クリス様の言葉を思い出し、少し早足で進む。見つかってはまずいので。
ヤンは基本与えられた部屋で過ごしていることが多かった。しかしノックをして開けると部屋は荷物が前見た時より少なくなっており、なにより本人が不在だった。
次にいる場所と言えば、資料館だ。色々な本が置かれている所で最近浸っているらしい。これは部下から聞いている。
鍵を使用してそこを開ければ、机の上でうつ伏せになりながら眠っている例の人物がいた。
「おい、ここで寝るな。」
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「……最近ここにいると聞いていたが何してるんだ。部屋も荷物が少なかっただろう。」
「アッ!部屋を勝手に見ないでくだサイ!!ヘンタイ!!」
「なっ、私はクリス様が呼んでいたので仕方がなくだな!!!」
彼はムカつくくらいに大きなため息をついて、「アナタと話していたら時間のムダだって最近気がついたんデス。」と首を振りながら本を片付けて始めた。
「オレここから出ていくんデス。」
「母国に帰るのか?」
「マサカ!まだレオナルド様にお話してないんデスケド、養子の話が飛んできましテ。」
ああ、それで荷物が少なかったことに納得する。
「ちなみにどこの養子になるんだ?」
「名前忘れましたケド、宰相のとこデス。」
「ふーん……はあ!?」
冗談を言っている風には聞こえなかったが、冗談にしか捉えられなかった。聞こえ間違えでなければ宰相って……王を補佐する役職のあの!カルデア家のところか?
確か地位を受け継ぐ子供がいなかったことを思い出す。養子と言えどそれはほとんど、こいつが受け継ぐようなもので……。
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「失礼デスネ!」
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「……。」
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「もちろん殿下絡みだ。」と付け足せばヤル気のない足取りは一瞬で元気になってスキップするかのように歩み出した。
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