拾って下さい。

織月せつな

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合流

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 ダンディさんが、ロロさんお抱えの療術師?
 ということは、あの鎧さんを脱いだ姿をご存知ということなのですね。
 ……ちょっと待って下さい。私、ダンディさんのところに行っちゃってますけどっ。
 最初はドラクロワさんに運ばれただけなので、不可抗力というものですが、二回目は自分から行きました。……結局自力で辿り着いていませんから、これもノーカウントで宜しいでしょうか。

 ……?

 ドラクロワさんはダンディさんと仲良しさんのようでした。
 お兄さんが騎士団の方ですから、ドラクロワさんもそうだと思われます。ギルドに近付くのを避けておりましたから。だからロロさんのお抱えでもギルドの関係者ではないから大丈夫、ということでしょうか。
 うう。ちょっと頭が痛いです。
 そもそもお抱えだからといって、ダンディさんを独り占め、ということにはならないのかもしれないですよね。

 ……ロロさんがダンディさんを独り占め……。
 ……ドラクロワさん乱入……。
 ……二人でダンディさん争奪戦……。

「!」

 私は今、何を考えていたのでしょうか。何やら危険な場所に足を踏み入れそうになってしまった気がします。

「カナル。髪飾り、なくした?」
「えっ?」
「森の手前にいた時は着けてたと思ったけど」
「あ、それなら」

 と、ショートパンツのポケットに入れていた六花の髪飾りを取り出します。私が眠ってばかりだった時、盾さんの隣に置いてあったのですが、髪に差し込む部分が歪んでしまって装備出来なくなってしまったので、取り敢えずしまっておいたのです。

「それ、そんなんだっけ?」
「光の加減で色が変わるのです」
「そんな仕様だったっけ?」
「違いましたっけ?」

 お互いに見つめあって小首を傾げました。

「カナル、前線行くって?」

 話が変わりました。でも構いません。

「はい。よく分かりませんが、レベルがたくさん増えました。なので、皆さんのお役に立てるよう頑張ります」
「うん。頑張れ。カナルは出来る子」

 よしよしとフォーレさんが頭を撫でてくれました。
 胸の奥からじんわりとあたたかなものが広がっていきます。

「……カナル」
「はい」
「レベル幾つ?」
「32で――あうっ」

 今度は首を絞められてしまいました。勿論軽くです。

「まだ14あたしがお姉ちゃん。分かる?」
「はい」

 フォーレさんがお姉ちゃんであることは間違いありません。
 コクコク頷くと、フォーレさんは「よし」とまた頭を撫でてくれました。
 ちょっとワンちゃんになった気分です。

「カナル=オグラはいるか?」
「は、はいっ」

 すっかり気分がゆるみきってしまったところで、男の人の声が私を呼びました。
 私の返事に気付いて駆け寄って来たのは、三十歳前後と思われる方でした。かなり軽装で弓を背負っています。

「俺はオーバン=カステラだ。ギルマスに言われてあんたを連れに来た」
「!」

 カステラさん、ですか?
 食べたくなってしまいましたが、我慢です。

「わざわざありがとうございます。宜しくお願いします」
「挨拶はいい。準備して。すぐに出るから」
「あ……はい」

 フォーレさんを振り向くと、小さく手を振ってくれました。振り返しますと、何処かへと去ってしまいます。
 私は急いでユルトに戻り、盾さんたちを装備して、カステラさんの元に引き返しました。

「先に礼を言っておこう。ミソスープ、旨かった。この結界内を治癒の空間としてくれたことと合わせて、感謝する」
「いえ……」

 ミソスープはともかく、治癒の空間というのは謎なので、曖昧に受け入れてしまいました。
 もし、皆さんが言うように盾さんの力だとしたら、そのスキル範囲はどれだけのものなのでしょう。
 私が持っている勾玉で、力の足しになるでしょうか。

「じゃあ行くぞ。こっちだ」
「はいっ」

 そうして中継地点を離れる際、擦れ違った方たちから口々にお礼の言葉をいただき、少しでもお役に立てたことが嬉しくて、はしゃいだような気持ちになってしまいましたが、結界の外に出るとガラリと雰囲気が変わり、冷たく恐ろしいものを感じて身を震わせました。

「あんたはタンクらしいが、一応護衛役がついてる。俺は見ての通り近接戦には向かないからな」

 私が怯んだのを見て、カステラさんが安心させるように微笑んでくれました。
 少ししてからアタッカーらしき方が二人、来てくれたことで、森の奥へ向かい始めます。
 途中、アシッドベアが複数体現れましたが、何故か怖いと思いませんでした。
 森の中に満ちる濃密な気の方が、得体が知れなくて恐ろしいのです。

 同行している方々が強過ぎるのか、あっという間に倒してしまいます。
 そして、木々の隙間から遺跡と思われる建造物の一部が見え始めた頃、ちょうど魔物に最後の一撃を加えたロロさんの姿を見付けました。
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