お山の狐は連れ添いたい

にっきょ

文字の大きさ
上 下
42 / 48

42 増える

しおりを挟む
 もうこの時点で怪しかったが、温泉から帰る道で、長羽織になった時はすでに三本だった……ような気がする。それ以上は正直「たくさん増えてきたな」としか思っていなかったのであまり気にもしていなかった。いや、餅つきの時に貞宗が「四本ある」と言っていたような記憶がうっすらある。五本になったのはもう分からない。

 恥ずかしそうに揺れる赫の尻尾を数える。今は六本になっているようだ。

「それでね……あのね、実は、人を食べなくてもね、化け狐ってのは強くなれるんだ」
「どうもそうらしいな」

 そうでないと説明がつかない。自分の近くに伸びた尻尾を撫でると、ぴくりと炎色の先端が震えた。

「食べてしまう方が手っ取り早いし、難しいから黎兄さんなんかはそうしてるんだと思うんだけど、本当は……人に撫でてもらったりとか、抱きしめてもらったりとか色々……こう、お互いが想いあって、心……とかが繋がったりとか……そういうのでもちょっとずつ精力ってのは分けてもらえてて、だから、そういうのでも少しずつ強くなれて……えっと、うん……そういうこと」
「いや、ごちゃごちゃ言われても意味わかんねえよ、つまりどういうことだよ」

 歯切れ悪くもそもそと尻尾の中に隠れようとする赫を引っ張り出す。ずっとお預けを食らっている屹立の主張が激しく、そんなに難しいことを考える頭の余裕は修造にはないのだ。
 うう、と下を向いた赫がすすり上げる音がして、修造は罪悪感に駆られた。とはいえ分からないものは分からない。

「だからね、修造との仲がもっと深まれば、ぼくはもっと強くなれるってこと! 黎兄さんがまた来ても、何かあっても、修造に怪我なんてさせないし、この村を乗っ取らせないくらい強くなりたかったんだよ! 悪いか!」
「わ、悪かねえよ……」

 怒ったようにまくしたて、ふうふうと全身で息をする赫の頭に修造は手を伸ばした。ようやく合点がいった。先ほど赫は、「身も心も深く繋がりたい」という意で「強くなりたい」と言っていたのだ。それを修造が勘違いしたものの恥ずかしさでうまく説明できず、「莫迦」となじってきたのだ。

「でも、それならそうと、早く教えてくれればよかっただろ」

 涙目の赫を撫で、修造は笑い出しそうになるのを必死にこらえた。たかがそれだけのことを説明するのに怒ったり泣いたり大変なことである。

「だ、だって恥ずかしいだろ、そんな……経験が増えると尻尾も増えていくなんて、言えるわけないだろ! 修造も気づけよ!」
「いや、気づくわけねえだろ」

 今ならあの時貞宗がなぜにやついていたのか、そしてなぜ修造にだけ教えてもらえなかったのかが分かる。
 ふ、と耐え切れずに吹き出した修造は、「泣き虫」と赫の目尻に浮かんだ涙を拭った。そのまま肩に触れ、背中をなでおろす。興奮のあまり早くも全身が汗ばんできているようだ。

「いいぜ、赫。お前のこと、強くしてやるよ」

 狐なのだから、多分この格好がいいだろう。布団の上に四つん這いになり、尻を赫に突き出した体勢になる。
 きゅうん、と赫が甘く鳴いた。

「ずっと待ってたんだからな」

 祝言を挙げると決めた日から――いや、はじめて赫の裸を見た時から、ずっと欲しくてたまらなかった。軽く腰を振ると、尻の肉を掴まれる。割れ目に沿って、つうっと赫の指先が修造を撫でていった。

「ん……」

 くすぐったいような快感に全身を襲われ、修造は小さく体を竦めた。割り広げられた部分に、温かいものが垂らされて塗り広げられていく。赫が自分の口でふやかしたふのりを垂らしてくれているのだろう。

「ぼくもね、待ってた」

 ぬめりを広げていく指先が、修造の穴に触れた。はしたない、と思いつつも期待にひくついてしまう窄まりを押し広げ、修造の中に入ってくる。

「入れるのは夫婦になってからにしたかったから、触るだけで我慢してたんだからね」
「そう、か……てっきり、オレ、赫が……おぼこいからなのかと……」

 中にまでぬめりを押し込むように、赫の指がしきりに穴を出入りする。そのたびに声を上ずらせながら修造は答えた。なんせ尻の穴である、入れるにしても入れられるにしても覚悟と相手への信頼が必要になるから、赫の心が決まるまで気長に待とうと思っていたのだ。

「な、なんだよそれっ」

 拗ねたような赫の声が聞こえて、修造の中に入った指先が少しだけ強く中をかき回した。その先端が、中にあるクルミのような部分に触れる。あっ、と修造が声を出すと、赫の尻尾が修造にまとわりついてきた。

「ここ、きもちいい?」
「ん、いい、すごく、いい……からっ、だめだっ、い、今は、やめてくれっ」

 華奢な指先にそこをつつかれ、それだけで達しそうになって修造は喘いだ。

「なんで? 気持ちよくなってよ」
「ちが、そう、あっ、あ、だめ、お願いだっ、や、やめ、やだっ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

会えないままな軍神夫からの約束された溺愛

待鳥園子
恋愛
ーーお前ごとこの国を、死に物狂いで守って来たーー 数年前に母が亡くなり、後妻と連れ子に虐げられていた伯爵令嬢ブランシュ。有名な将軍アーロン・キーブルグからの縁談を受け実家に売られるように結婚することになったが、会えないままに彼は出征してしまった! それからすぐに訃報が届きいきなり未亡人になったブランシュは、懸命に家を守ろうとするものの、夫の弟から再婚を迫られ妊娠中の夫の愛人を名乗る女に押しかけられ、喪明けすぐに家を出るため再婚しようと決意。 夫の喪が明け「今度こそ素敵な男性と再婚して幸せになるわ!」と、出会いを求め夜会に出れば、なんと一年前に亡くなったはずの夫が帰って来て?! 努力家なのに何をしても報われない薄幸未亡人が、死ぬ気で国ごと妻を守り切る頼れる軍神夫に溺愛されて幸せになる話。 ※完結まで毎日投稿です。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

【完結】「一人で何でもできる女って嫌い」と婚約破棄されましたが、部下に慕われていました。仲間と一緒に今日も妖から都を守ります。

蜜柑
ファンタジー
人を喰らう異形の存在――妖がはびこる和国。妖から人々を守るのが、代々妖と戦うための特殊能力【家紋】を持つ者で構成される「対妖防衛隊」 「俺、何でもひとりでできる女って嫌いなんだよね」 首都東都を守る東都本部・精鋭部隊である第参部隊長を務める「藤宮 綾子」は、ある日婚約者で同じく防衛隊員の「神宮司 修介」から、婚約破棄を告げられる。 「俺さ、今、すごくかわいい子と付き合っているんだ。お前と違って、俺がいないとだめな子なんだよ」 彼は別の女性と婚約するために、綾子との婚約は破棄する、というのだ。 「……お一人での参加でも結構ですけど」 婚約披露宴に招待された綾子は、ひとりで参加するか悩んでいた。 そこに声をかけたのは、部下の「鈴原 彰吾」だった。 「俺じゃダメですか?……お試しでいいですから!」 一方、東都では若い女性が妖により白髪の鬼にされる事件が相次いでいた。 その陰に見え隠れするのは、かつて綾子を鬼にしようとし、父母を失った原因の妖――九十九(つくも)。 九十九と綾子の因縁はまた廻る。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね?〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

明太子
BL
伯爵令息のエスメラルダは幼い頃から恋心を抱いていたレオンスタリア王国の国王であるキースと結婚し、王妃となった。 しかし、当のキースからは冷遇され、1人寂しく別居生活を送っている。 それでもキースへの想いを捨てきれないエスメラルダ。 だが、その思いも虚しく、エスメラルダはキースが別の令嬢を新しい妃を迎えようとしている場面に遭遇してしまう。 流石に心が折れてしまったエスメラルダは離婚を決意するが…? エスメラルダの一途な初恋はキースに届くのか? そして、キースの本当の気持ちは? 分かりづらい伏線とそこそこのどんでん返しありな喜怒哀楽激しめ王妃のシリアス?コメディ?こじらせ初恋BLです! ※R指定は保険です。

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

あなたたちのことなんて知らない

gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。

僕の兄は◯◯です。

山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。 兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。 「僕の弟を知らないか?」 「はい?」 これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。 文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。 ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。 ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです! ーーーーーーーー✂︎ この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。 今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。

処理中です...