お山の狐は連れ添いたい

にっきょ

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 もうこの時点で怪しかったが、温泉から帰る道で、長羽織になった時はすでに三本だった……ような気がする。それ以上は正直「たくさん増えてきたな」としか思っていなかったのであまり気にもしていなかった。いや、餅つきの時に貞宗が「四本ある」と言っていたような記憶がうっすらある。五本になったのはもう分からない。

 恥ずかしそうに揺れる赫の尻尾を数える。今は六本になっているようだ。

「それでね……あのね、実は、人を食べなくてもね、化け狐ってのは強くなれるんだ」
「どうもそうらしいな」

 そうでないと説明がつかない。自分の近くに伸びた尻尾を撫でると、ぴくりと炎色の先端が震えた。

「食べてしまう方が手っ取り早いし、難しいから黎兄さんなんかはそうしてるんだと思うんだけど、本当は……人に撫でてもらったりとか、抱きしめてもらったりとか色々……こう、お互いが想いあって、心……とかが繋がったりとか……そういうのでもちょっとずつ精力ってのは分けてもらえてて、だから、そういうのでも少しずつ強くなれて……えっと、うん……そういうこと」
「いや、ごちゃごちゃ言われても意味わかんねえよ、つまりどういうことだよ」

 歯切れ悪くもそもそと尻尾の中に隠れようとする赫を引っ張り出す。ずっとお預けを食らっている屹立の主張が激しく、そんなに難しいことを考える頭の余裕は修造にはないのだ。
 うう、と下を向いた赫がすすり上げる音がして、修造は罪悪感に駆られた。とはいえ分からないものは分からない。

「だからね、修造との仲がもっと深まれば、ぼくはもっと強くなれるってこと! 黎兄さんがまた来ても、何かあっても、修造に怪我なんてさせないし、この村を乗っ取らせないくらい強くなりたかったんだよ! 悪いか!」
「わ、悪かねえよ……」

 怒ったようにまくしたて、ふうふうと全身で息をする赫の頭に修造は手を伸ばした。ようやく合点がいった。先ほど赫は、「身も心も深く繋がりたい」という意で「強くなりたい」と言っていたのだ。それを修造が勘違いしたものの恥ずかしさでうまく説明できず、「莫迦」となじってきたのだ。

「でも、それならそうと、早く教えてくれればよかっただろ」

 涙目の赫を撫で、修造は笑い出しそうになるのを必死にこらえた。たかがそれだけのことを説明するのに怒ったり泣いたり大変なことである。

「だ、だって恥ずかしいだろ、そんな……経験が増えると尻尾も増えていくなんて、言えるわけないだろ! 修造も気づけよ!」
「いや、気づくわけねえだろ」

 今ならあの時貞宗がなぜにやついていたのか、そしてなぜ修造にだけ教えてもらえなかったのかが分かる。
 ふ、と耐え切れずに吹き出した修造は、「泣き虫」と赫の目尻に浮かんだ涙を拭った。そのまま肩に触れ、背中をなでおろす。興奮のあまり早くも全身が汗ばんできているようだ。

「いいぜ、赫。お前のこと、強くしてやるよ」

 狐なのだから、多分この格好がいいだろう。布団の上に四つん這いになり、尻を赫に突き出した体勢になる。
 きゅうん、と赫が甘く鳴いた。

「ずっと待ってたんだからな」

 祝言を挙げると決めた日から――いや、はじめて赫の裸を見た時から、ずっと欲しくてたまらなかった。軽く腰を振ると、尻の肉を掴まれる。割れ目に沿って、つうっと赫の指先が修造を撫でていった。

「ん……」

 くすぐったいような快感に全身を襲われ、修造は小さく体を竦めた。割り広げられた部分に、温かいものが垂らされて塗り広げられていく。赫が自分の口でふやかしたふのりを垂らしてくれているのだろう。

「ぼくもね、待ってた」

 ぬめりを広げていく指先が、修造の穴に触れた。はしたない、と思いつつも期待にひくついてしまう窄まりを押し広げ、修造の中に入ってくる。

「入れるのは夫婦になってからにしたかったから、触るだけで我慢してたんだからね」
「そう、か……てっきり、オレ、赫が……おぼこいからなのかと……」

 中にまでぬめりを押し込むように、赫の指がしきりに穴を出入りする。そのたびに声を上ずらせながら修造は答えた。なんせ尻の穴である、入れるにしても入れられるにしても覚悟と相手への信頼が必要になるから、赫の心が決まるまで気長に待とうと思っていたのだ。

「な、なんだよそれっ」

 拗ねたような赫の声が聞こえて、修造の中に入った指先が少しだけ強く中をかき回した。その先端が、中にあるクルミのような部分に触れる。あっ、と修造が声を出すと、赫の尻尾が修造にまとわりついてきた。

「ここ、きもちいい?」
「ん、いい、すごく、いい……からっ、だめだっ、い、今は、やめてくれっ」

 華奢な指先にそこをつつかれ、それだけで達しそうになって修造は喘いだ。

「なんで? 気持ちよくなってよ」
「ちが、そう、あっ、あ、だめ、お願いだっ、や、やめ、やだっ」
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