お山の狐は連れ添いたい

にっきょ

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 うとうととしていた修造が目を開けた時、最初に見えたのは赤い三角形の耳だった。ぴくり、とその耳が震えるのを見て安心してもう一度目を閉じ、額を赫にくっつける。
 明らかに狐のものではないつるりとした感触がして、修造は飛び起きた。

「お、おおお……?」

 修造の隣には、裸の男が寝ていた。白いどんよりとした光に照らされた姿は修造よりいくぶんか若く、まだ二十ぐらいといったところだ。真っ赤な、炎のような色合いの腰までありそうな長い髪に、そこから突き出した大きな耳。てろりと畳の上に伸びている二本の太い尻尾も、おそらく男の尻から生えているのだろう。

「か、赫……だよ、なあ?」

 問いかけながら、そっと耳に触れてみる。赫の特徴である先まで赤い耳は、しっかりと男の頭から生えているようだ。そうっと布団をめくってみると、細い男の体には確かに引きちぎった羽織が巻かれていて、解けかけた布の間からぱらぱらと散弾の弾が落ちてきた。
 傷はどうなったのだろう、と布の間に手を差し入れる。血で張り付いてしまった羽織だったものを引っ張ると、「ううん」と男が呻いた。何となく後ろめたいことをしている気分になり慌てて手を離すと、パチリと紅色の目が開く。

「ん……修造?」
「おう」

 内心腰が引けつつも、平静を装って答える。

「気分はどうだ、赫? なんか……一眠りしたら、えらく……様変わりしたみてえだけど」
「え? ええ?」

 むくりと体を起こした青年――赫といって反応したのだからやはり赫なのだろう――は切れ長の目で瞬きをした。長く赤い睫毛が蝶のように羽ばたく。面長で涼しげな顔立ちには狐の面影があるようで、美しい中にどこか愛嬌と色気を併せ持っている。掛け布団が体の上から滑り落ち、赫のしなやかに引き締まった身体が顕になるのを修造は見つめていた。

「あれっ」

 不思議そうに自分の身体を見下ろした赫は小さく叫び、赤い爪のついた手でぺたぺたと毛のない皮膚を撫で回した。二本の尻尾が大きく膨らんで立ち上がり、確かに赫の尻から生えていることを主張する。
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