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第一章 幼少期
第三十四話 クッキー
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僕がいつもの土人形がある場所に向かおうとしている途中、こちらに歩いてくるセリアが見えた。いつもの場所は通り過ぎてるけど……どうしてこっちまで来てるんだろう。
「おーい。セリアーー!」
僕は大きく手を振りながらセリアを呼ぶ。セリアはその声で僕のことに気づいたみたいで、小走りでこっちに向かってくる。僕もセリアの方に走っていく。
「どうしたの? いつもの場所にいると思ってたんだけど……」
僕はセリアの息が整うのを待ってセリアに聞いてみる。
「ソーマ……心配……」
「うーん? 僕の体調を心配してくれてたの?。もしかしたら今日は来ないかもしれないから、直接家に行ってみようってこと?」
「ん……」
僕、一日半寝続けて昨日やっと起きたところだったしね。それにその後は泣き出して眠っちゃったし……ってかなり恥ずかしいところをセリアに見られたんじゃ!?
「よしよし……」
そんな僕の心境を知ってか知らずか、セリアは僕の頭を優しくなでる。セリアの最後に見た僕の姿は泣いている姿だったから、慰めてくれているのかもしれない。
でもなぁ……中身は既に大人な僕からしたら、五歳の女の子に頭を撫でられて慰められるのは情けないというか、なんというか……。セリアの気持ちは嬉しいんだけどね。
「ありがと。もう大丈夫だよ」
そんなことをセリアに言うわけにはいかないので、お礼を言う。感謝してるのは本当だしね。
「そうだ。セリアが僕の看病をしてくれたお礼にって母さんがクッキーを作ってくれたんだ」
「クッキー……」
セリアは無表情だけど、心なしか目が輝いているような気がする。これは多分今すぐ食べたいって言うだろうな。セリアは美味しいものが本当に好きだね。
「いつもの場所ならソルが作ってくれた椅子もあるし、食べるならそこがいいよね」
僕はセリアの手をとって歩き出す。しばらく歩くとソルが作った土人形と椅子が見えてきた。歩いている間、セリアの早く食べたいって言う無言の圧力がすごくて大変だった。
僕達は椅子に腰掛ける。
「早く……」
「はいはい」
セリアの催促に応えるべく僕は母さんが持たせてくれた、クッキーが入ったバスケットを膝に乗せ、中からクッキーを包みごと取り出しセリアに渡す。
セリアは待ちきれないという様子で、手早く包みをほどく。
中身のクッキーは様々な動物の形になっていて、しかも色んな味があるみたいだった。ジャムが入っているものや、粉砂糖をまぶしたものなど様々な種類があった。
このクッキーの材料はどうやって手に入れたんだろう。卵とか牛乳を新鮮なまま運ぶのってこの世界じゃ難しいんじゃ……あ、近くに鶏や牛を飼っている人がいるから、その人から貰ったのかな。
「猫さん……」
セリアは猫の形のクッキーをつまみあげ、しげしげと眺める。セリアは猫が好きなのかな。というかこの世界にも猫はいるんだね。ほかの動物もいるみたいだし動物は前世とだいたい同じなのかもしれないな。
セリアはそのクッキーを惜しそうに食べる。可愛いから食べれないとかそういうことは言わないんだね。
「おいしい……」
「それはよかった。母さんもきっと喜ぶよ」
セリアは僕の方にクッキーを一枚差し出してきた。
「くれるの?」
セリアは首をこくんと縦に振る。
「一緒に……」
「一緒に食べようってこと?」
再びその小さな頭が縦に振られる。本当なら独り占めしたいだろうに、わけてくれるなんてセリアは優しいな。
「ありがとう。実は、とっても美味しそうだから食べたかったんだよ」
僕はセリアが差し出してくれたクッキーを受け取り、口の中に放り込む。上品な甘さが口の中に広がり、酸味のある柑橘系のジャムがいいアクセントになっている。
「おいしいね」
「ん……とっても……」
セリアは次のクッキーをかじり、包みを僕の方に向ける。もっと食べていいってことだろう。まぁ、いくらセリアが食べていいって言ってくれてもセリアへのお礼の品なんだから食べすぎるつもりは無い。
「ありがと」
その後、僕らはのんびりとクッキーを堪能した。セリアはクッキーをたくさん食べられて満足そうだった。
「おーい。セリアーー!」
僕は大きく手を振りながらセリアを呼ぶ。セリアはその声で僕のことに気づいたみたいで、小走りでこっちに向かってくる。僕もセリアの方に走っていく。
「どうしたの? いつもの場所にいると思ってたんだけど……」
僕はセリアの息が整うのを待ってセリアに聞いてみる。
「ソーマ……心配……」
「うーん? 僕の体調を心配してくれてたの?。もしかしたら今日は来ないかもしれないから、直接家に行ってみようってこと?」
「ん……」
僕、一日半寝続けて昨日やっと起きたところだったしね。それにその後は泣き出して眠っちゃったし……ってかなり恥ずかしいところをセリアに見られたんじゃ!?
「よしよし……」
そんな僕の心境を知ってか知らずか、セリアは僕の頭を優しくなでる。セリアの最後に見た僕の姿は泣いている姿だったから、慰めてくれているのかもしれない。
でもなぁ……中身は既に大人な僕からしたら、五歳の女の子に頭を撫でられて慰められるのは情けないというか、なんというか……。セリアの気持ちは嬉しいんだけどね。
「ありがと。もう大丈夫だよ」
そんなことをセリアに言うわけにはいかないので、お礼を言う。感謝してるのは本当だしね。
「そうだ。セリアが僕の看病をしてくれたお礼にって母さんがクッキーを作ってくれたんだ」
「クッキー……」
セリアは無表情だけど、心なしか目が輝いているような気がする。これは多分今すぐ食べたいって言うだろうな。セリアは美味しいものが本当に好きだね。
「いつもの場所ならソルが作ってくれた椅子もあるし、食べるならそこがいいよね」
僕はセリアの手をとって歩き出す。しばらく歩くとソルが作った土人形と椅子が見えてきた。歩いている間、セリアの早く食べたいって言う無言の圧力がすごくて大変だった。
僕達は椅子に腰掛ける。
「早く……」
「はいはい」
セリアの催促に応えるべく僕は母さんが持たせてくれた、クッキーが入ったバスケットを膝に乗せ、中からクッキーを包みごと取り出しセリアに渡す。
セリアは待ちきれないという様子で、手早く包みをほどく。
中身のクッキーは様々な動物の形になっていて、しかも色んな味があるみたいだった。ジャムが入っているものや、粉砂糖をまぶしたものなど様々な種類があった。
このクッキーの材料はどうやって手に入れたんだろう。卵とか牛乳を新鮮なまま運ぶのってこの世界じゃ難しいんじゃ……あ、近くに鶏や牛を飼っている人がいるから、その人から貰ったのかな。
「猫さん……」
セリアは猫の形のクッキーをつまみあげ、しげしげと眺める。セリアは猫が好きなのかな。というかこの世界にも猫はいるんだね。ほかの動物もいるみたいだし動物は前世とだいたい同じなのかもしれないな。
セリアはそのクッキーを惜しそうに食べる。可愛いから食べれないとかそういうことは言わないんだね。
「おいしい……」
「それはよかった。母さんもきっと喜ぶよ」
セリアは僕の方にクッキーを一枚差し出してきた。
「くれるの?」
セリアは首をこくんと縦に振る。
「一緒に……」
「一緒に食べようってこと?」
再びその小さな頭が縦に振られる。本当なら独り占めしたいだろうに、わけてくれるなんてセリアは優しいな。
「ありがとう。実は、とっても美味しそうだから食べたかったんだよ」
僕はセリアが差し出してくれたクッキーを受け取り、口の中に放り込む。上品な甘さが口の中に広がり、酸味のある柑橘系のジャムがいいアクセントになっている。
「おいしいね」
「ん……とっても……」
セリアは次のクッキーをかじり、包みを僕の方に向ける。もっと食べていいってことだろう。まぁ、いくらセリアが食べていいって言ってくれてもセリアへのお礼の品なんだから食べすぎるつもりは無い。
「ありがと」
その後、僕らはのんびりとクッキーを堪能した。セリアはクッキーをたくさん食べられて満足そうだった。
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