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第十三話 おじゃま

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 そこで主婦の方々はゴミ捨て場にある、大量の酒のゴミを見つけた。顔が露骨に嫌そうに歪む。

「このゴミ、多分高橋さんの所のよね」
「そうね、高橋さん以外、お酒をこんなに飲む人いないし」
「高橋さんねぇ、奥さんを亡くしてから変わっちゃったわよねぇ」
「前までは奥さんと愛衣ちゃんと三人、仲良さそうな家族だったのに、今じゃ仕事も辞めて酒浸りだものねぇ」
「奥さん、交通事故でお亡くなりになったんですってね。だから、慰謝料とかで生活には困ってないみたいですけど、愛衣ちゃんが可哀想よねぇ」

 お、あの男、高橋って名字なのか。ふぅん、奥さんがねぇ。そりゃ確かに辛いんだろうが、酒に溺れて娘に当たるってぇのは看過できねぇ。でもまぁ、そうだな。誰か一人でも話を聞いて支えてくれるやつがいりゃあ、また何か違ったのかもなぁ。
 家族なり近所の人なり、誰か一人でもいりゃあ……はぁ、まったく、近頃は人との縁が薄くていけねぇ。

 事情はわかった。後は当人同士の気持ちを知らねぇとな。でないと拗れちまうかもしれねぇからな。俺はその辺よく分かってる猫なのさ。

 二〇三号室にやって来た。玄関横の小窓は鍵がかかっていなかった。ったく、不用心だなぁ。俺は小窓からシュタッと侵入。こういう時、猫っていいよな。見つかったって警察のお世話になることもねぇ。

 さてさて、まずはこの部屋に入ってみるか。おっと、ここは愛衣ちゃんの部屋か。いや、部屋の中の物から考えると、母親と愛衣ちゃん二人の部屋ってところか。
 愛衣ちゃんはダブルベッドの端っこに縮こまって寝ている。ったく、あの男は酒が入ってなくてもダメなやつだな。娘をこんなに寂しがらせるなんて。愛衣ちゃんはピーマンでも食っちまったような表情をしている。嫌な夢でも見てんのかねぇ。
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