35 / 47
29
しおりを挟む
さっそく宇治の組紐のお店にいき、予約をしていた手組み体験で組紐の組み方を教えてもらったあと、道具一式を購入した。
組紐用の紐はたくさんの色があり、青王様の着物や帯の色を思い出しながらどの色にするかあれでもないこれでもないと迷っていると、あっという間に一時間以上が経っていた。
「ちょっと買いすぎたかな...」
どうしても選びきれなかったのと、おそろいの色で自分用の帯締めも作りたいと思ってしまったことで、たくさんの荷物を抱えて歩くことになった。
「せっかく来たんだからお参りして帰ろう」
のんびりお散歩をしながら宇治神社と宇治上神社をまわり、しっかりとお参りをした。
「組紐が上手に作れますように...青王様に気に入ってもらえるといいな」
「瑠璃、ちょっと穂香のところへいってくる」
「あ、穂香さんは今日お買い物にいくって言ってましたよ」
「そうか...」
「でも、夜には来ると思いますから、その時には会えますよ」
青王は残念そうにうつむきながら自室へ戻っていった。
「きっと穂香はもうすぐ帰ってくる」そう思った瑠璃は Lupinus の厨房で待っていることにした。
「あれ?明かりがついてる」
「穂香さん、おかえりなさい」
「あっ、瑠璃ちゃん、どうしたの?」
「さっき青王様がここに来ようとしていたんですけど、穂香さんはお買い物にいってるって伝えたら、なんだかしょんぼりしちゃって」
青王様が来ようとした理由はたぶん...と瑠璃が話してくれた。
「それならあとで持っていきましょう。瑠璃ちゃん、ちょっとお手伝いしてくれる?」
「もちろん!」
「青王様、明日からの視察のお供に持っていってください」
私はいろいろな味のボンボンショコラを作り、瑠璃に個包装にしてもらったものを青王様に渡した。
「ありがとう。じつは先ほど穂香のところへいこうとしたら、今日は買い物にいっていると瑠璃から聞いてね。明日持って行くためにチョコレートが欲しかったけれど諦めていたんだ」
青王様は視察にチョコレートを持っていきたいんだと思う、と瑠璃から聞いたので、ボンボンショコラを作り食べやすいように個包装にしたのだ。
「それならよかったです。気をつけていってきてくださいね」
私と瑠璃は仕込みがあるからと王城を出て、泉に寄ってから Lupinus に戻った。茜様から泉の水のことを聞いてからは、一日一回は必ずこちらへ来て水を口にするようにしている。
仕込みを終え瑠璃が王城へ戻ったあと組紐を作ることにした。少しだけと思っていたけれど、同じ動作の繰り返しで思っていた以上に無心になりかなり没頭していたらしく、気がつくと結構な時間が経っていた。仕事に影響が出ないようにしないといけないけれど、青王様が視察から戻って来るまでに仕上げたいと思う。
それからも私は毎晩王城や泉に通っていたけれど、例の男の子の姿をした鬼に出くわすことはなかった。出没するのは営業中の藤の周辺だけで、カカオの森でも見かけたという情報はない。
青王様が視察に出かけてから四日後、誉と一緒に閉店後の片付けをしているところへ瑠璃がやってきた。
「穂香さん、今夜青王様が帰ってきますから、王城でカレーを作って待ってましょうよ」
「そうね。せっかくだからデザートにチョコレートケーキを作ってもらえる?」
「いいですね!ケーキ用のチョコレートは少しビターにしてください。あと、かわいいデコレーションもしたいので、チョコペンも作ってください」
私は瑠璃からリクエストされた通り、ビターチョコと七色のチョコペンを作り王城へ向かった。
「穂香ちゃん、いらっしゃい!はい、これ。トマトもナスもいっぱい収穫しておいたからね~!早く作りましょう!」
王城の厨房では、籠いっぱいの野菜とともにやる気満々の茜様が待っていた。
いつものようにトマトのカレーとフルーツのサラダを作り、準備が整ったところへタイミングよく青王様が帰ってきた。
「ただいま。穂香、なにか変わったことはなかったかい?怖い思いや怪我なんかもしてないか?」
「ちょっ...青王様!とりあえず離してもらえませんか」
「いやだ。ぜったいに離さない!」
青王様は帰って来るなり私をギュッと抱きしめ頭をなでてきた。みんなが見ているのに恥ずかしすぎる!
私の困惑した顔を見た茜様が「青王、穂香ちゃんが困っているわよ。そろそろ離してあげなさい」と助け船を出してくれた。
「あ...すまない。何日も会えなくて心配だったから、つい」
「変わったことも怖いこともありませんでしたよ。ほら、みんな待ってますから夕食にしましょう」
「今夜はカレーか。帰って来たときからいい香りがしている」
「食後にデザートもあるので、あまり満腹にしないでくださいね」
「うわぁ!かわいい!」
「食べちゃうの、もったいないわぁ」
瑠璃が作ったチョコレートケーキは本当に手が込んでいてかわいらしく、寿と茜様はお皿を持ち上げいろいろな角度から眺めている。
「スポンジがふわもちでおいしい!瑠璃ちゃんはどんどん腕を磨いているわね」
「穂香さんのお店に来るお客様に、笑顔になってほしいんです。そのためにパティシエールとしても座敷童子としても、もっとがんばりますよ~」
「ありがとう。私も負けられないわね」
みんなおなかいっぱいになり幸せな笑顔で「ごちそうさま」をすると、瑠璃が片付けを引き受けてくれたので、私は青王様に山形視察のお話を聞くことにした。
将棋の駒の形をしたとても大きなオブジェがある広場にいったとか、普通のもりそばを注文したのに山盛りのそばが運ばれてきて、これが普通盛りだと言われて驚いたとか...
いままで見たこともないものをいろいろ口にしたけれど、その中でも一番気に入ったものがあるそうだ。
「芋煮というものがおいしかったんだ。店ごとに少しずつ味が違うんだが、基本的には甘辛い醤油味だった」
「芋煮って、ニュースで見たことがあります。家族や友達同士で、河原で作って食べるんです。あれはおいしそうだなって思ってました」
「それなら今度一緒に山形を旅行しよう!芋煮以外にもおいしいものがたくさんあったし、温泉もあるし...その...」
青王様の耳がどんどん赤くなっていく。
「り、旅行はそのうちに...私、芋煮の作り方を調べておくので、明日の夕食に作りましょう。お手伝いしてくださいね」
「それは楽しみだ。いくらでも手伝うよ!」
旅行の話から青王様の気をそらすことに成功した私は「少しやることがあるので、今日はもう帰りますね」と家に戻ってきた。
結局組紐は青王様が戻ってくるまでには仕上げられなかった。でもせっかく作るのだから青王様に喜んでほしくて、歪んだりしないよう焦らず丁寧に組んでいった。
それでももう少しでできあがる。明日には渡せるように深夜までかかって仕上げをした。
「できた!」
初めてにしては綺麗に仕上がったと思う。早く渡したいという気持ちを抑えて、約束の芋煮の作り方を調べ、うっすら明るくなってきた空を見ながら少しだけ仮眠することにした。
組紐用の紐はたくさんの色があり、青王様の着物や帯の色を思い出しながらどの色にするかあれでもないこれでもないと迷っていると、あっという間に一時間以上が経っていた。
「ちょっと買いすぎたかな...」
どうしても選びきれなかったのと、おそろいの色で自分用の帯締めも作りたいと思ってしまったことで、たくさんの荷物を抱えて歩くことになった。
「せっかく来たんだからお参りして帰ろう」
のんびりお散歩をしながら宇治神社と宇治上神社をまわり、しっかりとお参りをした。
「組紐が上手に作れますように...青王様に気に入ってもらえるといいな」
「瑠璃、ちょっと穂香のところへいってくる」
「あ、穂香さんは今日お買い物にいくって言ってましたよ」
「そうか...」
「でも、夜には来ると思いますから、その時には会えますよ」
青王は残念そうにうつむきながら自室へ戻っていった。
「きっと穂香はもうすぐ帰ってくる」そう思った瑠璃は Lupinus の厨房で待っていることにした。
「あれ?明かりがついてる」
「穂香さん、おかえりなさい」
「あっ、瑠璃ちゃん、どうしたの?」
「さっき青王様がここに来ようとしていたんですけど、穂香さんはお買い物にいってるって伝えたら、なんだかしょんぼりしちゃって」
青王様が来ようとした理由はたぶん...と瑠璃が話してくれた。
「それならあとで持っていきましょう。瑠璃ちゃん、ちょっとお手伝いしてくれる?」
「もちろん!」
「青王様、明日からの視察のお供に持っていってください」
私はいろいろな味のボンボンショコラを作り、瑠璃に個包装にしてもらったものを青王様に渡した。
「ありがとう。じつは先ほど穂香のところへいこうとしたら、今日は買い物にいっていると瑠璃から聞いてね。明日持って行くためにチョコレートが欲しかったけれど諦めていたんだ」
青王様は視察にチョコレートを持っていきたいんだと思う、と瑠璃から聞いたので、ボンボンショコラを作り食べやすいように個包装にしたのだ。
「それならよかったです。気をつけていってきてくださいね」
私と瑠璃は仕込みがあるからと王城を出て、泉に寄ってから Lupinus に戻った。茜様から泉の水のことを聞いてからは、一日一回は必ずこちらへ来て水を口にするようにしている。
仕込みを終え瑠璃が王城へ戻ったあと組紐を作ることにした。少しだけと思っていたけれど、同じ動作の繰り返しで思っていた以上に無心になりかなり没頭していたらしく、気がつくと結構な時間が経っていた。仕事に影響が出ないようにしないといけないけれど、青王様が視察から戻って来るまでに仕上げたいと思う。
それからも私は毎晩王城や泉に通っていたけれど、例の男の子の姿をした鬼に出くわすことはなかった。出没するのは営業中の藤の周辺だけで、カカオの森でも見かけたという情報はない。
青王様が視察に出かけてから四日後、誉と一緒に閉店後の片付けをしているところへ瑠璃がやってきた。
「穂香さん、今夜青王様が帰ってきますから、王城でカレーを作って待ってましょうよ」
「そうね。せっかくだからデザートにチョコレートケーキを作ってもらえる?」
「いいですね!ケーキ用のチョコレートは少しビターにしてください。あと、かわいいデコレーションもしたいので、チョコペンも作ってください」
私は瑠璃からリクエストされた通り、ビターチョコと七色のチョコペンを作り王城へ向かった。
「穂香ちゃん、いらっしゃい!はい、これ。トマトもナスもいっぱい収穫しておいたからね~!早く作りましょう!」
王城の厨房では、籠いっぱいの野菜とともにやる気満々の茜様が待っていた。
いつものようにトマトのカレーとフルーツのサラダを作り、準備が整ったところへタイミングよく青王様が帰ってきた。
「ただいま。穂香、なにか変わったことはなかったかい?怖い思いや怪我なんかもしてないか?」
「ちょっ...青王様!とりあえず離してもらえませんか」
「いやだ。ぜったいに離さない!」
青王様は帰って来るなり私をギュッと抱きしめ頭をなでてきた。みんなが見ているのに恥ずかしすぎる!
私の困惑した顔を見た茜様が「青王、穂香ちゃんが困っているわよ。そろそろ離してあげなさい」と助け船を出してくれた。
「あ...すまない。何日も会えなくて心配だったから、つい」
「変わったことも怖いこともありませんでしたよ。ほら、みんな待ってますから夕食にしましょう」
「今夜はカレーか。帰って来たときからいい香りがしている」
「食後にデザートもあるので、あまり満腹にしないでくださいね」
「うわぁ!かわいい!」
「食べちゃうの、もったいないわぁ」
瑠璃が作ったチョコレートケーキは本当に手が込んでいてかわいらしく、寿と茜様はお皿を持ち上げいろいろな角度から眺めている。
「スポンジがふわもちでおいしい!瑠璃ちゃんはどんどん腕を磨いているわね」
「穂香さんのお店に来るお客様に、笑顔になってほしいんです。そのためにパティシエールとしても座敷童子としても、もっとがんばりますよ~」
「ありがとう。私も負けられないわね」
みんなおなかいっぱいになり幸せな笑顔で「ごちそうさま」をすると、瑠璃が片付けを引き受けてくれたので、私は青王様に山形視察のお話を聞くことにした。
将棋の駒の形をしたとても大きなオブジェがある広場にいったとか、普通のもりそばを注文したのに山盛りのそばが運ばれてきて、これが普通盛りだと言われて驚いたとか...
いままで見たこともないものをいろいろ口にしたけれど、その中でも一番気に入ったものがあるそうだ。
「芋煮というものがおいしかったんだ。店ごとに少しずつ味が違うんだが、基本的には甘辛い醤油味だった」
「芋煮って、ニュースで見たことがあります。家族や友達同士で、河原で作って食べるんです。あれはおいしそうだなって思ってました」
「それなら今度一緒に山形を旅行しよう!芋煮以外にもおいしいものがたくさんあったし、温泉もあるし...その...」
青王様の耳がどんどん赤くなっていく。
「り、旅行はそのうちに...私、芋煮の作り方を調べておくので、明日の夕食に作りましょう。お手伝いしてくださいね」
「それは楽しみだ。いくらでも手伝うよ!」
旅行の話から青王様の気をそらすことに成功した私は「少しやることがあるので、今日はもう帰りますね」と家に戻ってきた。
結局組紐は青王様が戻ってくるまでには仕上げられなかった。でもせっかく作るのだから青王様に喜んでほしくて、歪んだりしないよう焦らず丁寧に組んでいった。
それでももう少しでできあがる。明日には渡せるように深夜までかかって仕上げをした。
「できた!」
初めてにしては綺麗に仕上がったと思う。早く渡したいという気持ちを抑えて、約束の芋煮の作り方を調べ、うっすら明るくなってきた空を見ながら少しだけ仮眠することにした。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
諦めて溺愛されてください~皇帝陛下の湯たんぽ係やってます~
七瀬京
キャラ文芸
庶民中の庶民、王宮の洗濯係のリリアは、ある日皇帝陛下の『湯たんぽ』係に任命される。
冷酷無比極まりないと評判の皇帝陛下と毎晩同衾するだけの簡単なお仕事だが、皇帝陛下は妙にリリアを気に入ってしまい……??
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
カクヨムとノベプラにも掲載しています。
【完結】出戻り妃は紅を刷く
瀬里
キャラ文芸
一年前、変わり種の妃として後宮に入った気の弱い宇春(ユーチェン)は、皇帝の関心を引くことができず、実家に帰された。
しかし、後宮のイベントである「詩吟の会」のため、再び女官として後宮に赴くことになる。妃としては落第点だった宇春だが、女官たちからは、頼りにされていたのだ。というのも、宇春は、紅を引くと、別人のような能力を発揮するからだ。
そして、気の弱い宇春が勇気を出して後宮に戻ったのには、実はもう一つ理由があった。それは、心を寄せていた、近衛武官の劉(リュウ)に告白し、きちんと振られることだった──。
これは、出戻り妃の宇春(ユーチェン)が、再び後宮に戻り、女官としての恋とお仕事に翻弄される物語。
全十一話の短編です。
表紙は「桜ゆゆの。」ちゃんです。
龍神様の婚約者、幽世のデパ地下で洋菓子店はじめました
卯月みか
キャラ文芸
両親を交通事故で亡くした月ヶ瀬美桜は、叔父と叔母に引き取られ、召使いのようにこき使われていた。ある日、お金を盗んだという濡れ衣を着せられ、従姉妹と言い争いになり、家を飛び出してしまう。
そんな美桜を救ったのは、幽世からやって来た龍神の翡翠だった。異界へ行ける人間は、人ではない者に嫁ぐ者だけだという翡翠に、美桜はついて行く決心をする。
お菓子作りの腕を見込まれた美桜は、翡翠の元で生活をする代わりに、翡翠が営む万屋で、洋菓子店を開くことになるのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる