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「青王様!これ食べてみてくださいっ!」
瑠璃は王城に戻るなり、チョコレートを差し出しながら青王様にかけ寄った。
「瑠璃、少し落ち着け」
「あっ、すみません...これ、穂香さんから預かってきました」
「ん?これは初めて見る形だね。いつもと味が違うのかな」
「食べればわかりますよ。すぐに紅茶を淹れてきますね」
長方形のチョコレートを半分ほどかじると、口の中にカカオの香りが広がる。
「いつもよりカカオの香りが強いかな。それにサクサクした歯ごたえが心地いい」
「カカオ豆を砕いたものを入れたそうです」
「カカオ豆はこんな形でも食べられるのか。ほかにも使い道があるのかな」
「青王様から穂香さんに聞いてみたらどうでしょう?あっ、そうだ。設備について穂香さんと話したんですが...」
カカオの森の設備について、穂香さんと話した内容を青王様にすべて伝えた。
「そうか。今のところ五カ所に設置しようと思っている。もし必要なら徐々に増やしていくというのではどうだろう」
「わたしはそれでいいと思いますが、明日穂香さんにも聞いてみますね」
「おはようございます。設備のこと、青王様にお話してきました」
瑠璃が青王様の考えを教えてくれた。
「ありがとう。私もそれでいいと思う。今夜、青王様に直接お話しに行くわ」
「はい、わかりました。あの、カカオニブってまだありますか?」
「もうあまり残ってないけれど、これ全部使っていいわよ」
ガラスの容器に入ったカカオニブを渡すと、うれしそうになにか作り始めた。
開店準備をしていると、瑠璃ができあがったお菓子を持って厨房から出てきた。
「ナッツとカカオのフロランタンです!試食してみてください」
「おいしそうね。いただきます」
ローストしたナッツの香ばしさ、キャラメルのミルキーな甘さ、それにカカオニブの苦みと香りが一つにギュッと詰まっている。
「サクサクした軽い食感でとってもおいしい!」
「よかったぁ。これ、並べてもいいですか?」
「もちろん。ショーケースの右半分をスペシャルカカオコーナーにしたから、その上に並べたらどうかしら」
「はい!ラッピングして並べますね」
「フロランタンは青王様にも持っていこうと思って取っておいた分がありますが、それも並べちゃいましょうか?」
「いいえ、それは青王様に持っていきましょう」
スペシャルカカオコーナーの商品はお昼過ぎには品薄になり、まもなく完売してしまった。「今日はもう追加できないから仕方ないわね」
「この前続けてカカオの発酵を始めておけばよかったのかも」
「そうね。でもあの時は早くチョコレートを作りたくてそこまで頭が回らなかったのよね」
まだ京陽産カカオの味がわからなかったし、いつものカカオ豆もあるから、そんなに深く考えていなかったのだ。
「今夜からまた発酵始めますか?」
「ええ、ケーキが完売したら早めに閉店してカカオの森へ行きましょうか」
「そうしましょう!」
予想していたよりも早く、夕方にはすべてのケーキが完売してしまった。
閉店作業を終えカカオの森へ行くと、青王様がたくさんの妖たちを連れてやってくるのが見えた。
「ひっ...あれなに?なんの妖?」
大きなねずみみたいなのと、体にいくつもの目がある牛みたいなの。
「あれは、鉄鼠と白沢ですね」
「鉄鼠と白沢...」
近づいてくるとやっぱり怖い。思わず後ずさりしていると、
「穂香が怖がっている。みんな人間の姿になってくれるかな」
青王様が言うと、次々と人間の姿に変わっていく。しかもみんなかなりの美男美女だ。
「え?すごい...」
「驚かせてすまなかったね。この妖たちが発酵と乾燥を手伝ってくれる。作業中は人間の姿でいるから安心して」
「は、はい」
全部で十人の妖たちによろしくと挨拶をすると、みんなフレンドリーに話しかけてくれた。明るくて優しくていい妖ばかりだ。怖がったりして失礼だったなと反省する。
「すぐに発酵作業を始めたいのですが、今からでも大丈夫ですか?」
「かまわないよ。完成している設備は今のところ三カ所だから、今回はすべての設備で発酵を始めるといい」
「ありがとうございます。みなさん、よろしくお願いします」
さっそく一通りのやり方を説明すると、みんな一斉にカカオポットを収穫し作業を始めてくれた。
「わたしにも手伝わせてくれるかな。前回一緒に作業したとき、とても楽しかったんだ」
「はい、一緒にやりましょう」
青王様は私のとなりで作業を始めた。
瑠璃が言っていた通り、みんなとても丁寧に作業をしてくれた。しかも早い!
楽しく和やかな雰囲気で作業が進み、あっという間に終了してしまった。
「みなさんお疲れ様でした。これはフロランタンと言って、瑠璃ちゃんが作ってくれたお菓子です。ここのカカオも使っているのでぜひ食べてみてください」
みんながおいしいと言って食べてくれた。もっと欲しいなって言ってもらえて瑠璃もうれしそうだ。
「ここにいる妖たちはチョコレートを食べたことがないんだよ。だから、できあがったらぜひ振る舞ってやってほしい」
「もちろん持ってきます」
「わたしもケーキやクッキー、作ってきます!」
「二人ともありがとう。そうだ、穂香に聞きたいことがあったんだ」
え、なんだろう...?
「チョコレートやフロランタンに入っていたカカオニブ。あれはほかの食べ方もあるのかな?」
「はい。お菓子に使うことが多いですが、お料理にも使えますよ。カカオニブはポリフェノールが豊富で体にいいんです」
「妖にも効果があるだろうか...まぁ、効果に関係なくおいしいものは食べてみたいが」
「よろしければ、お菓子以外にもなにか作りますよ」
「穂香、ありがとう」
青王様は私を見つめ、そっと頭をなでた。
「あの、青王様。私...ずっと前に青王様に会ったことがある気がして...」
「そうか...」
青王様はそれ以上そのことには触れようとしなかった。
言いづらいなにかがあるのだろうか。私はなにも思い出さないほうがいいのかな...
私ももうなにも言わず、数日後に発酵状態の確認に来ることにしてカカオの森をあとにした。
瑠璃は王城に戻るなり、チョコレートを差し出しながら青王様にかけ寄った。
「瑠璃、少し落ち着け」
「あっ、すみません...これ、穂香さんから預かってきました」
「ん?これは初めて見る形だね。いつもと味が違うのかな」
「食べればわかりますよ。すぐに紅茶を淹れてきますね」
長方形のチョコレートを半分ほどかじると、口の中にカカオの香りが広がる。
「いつもよりカカオの香りが強いかな。それにサクサクした歯ごたえが心地いい」
「カカオ豆を砕いたものを入れたそうです」
「カカオ豆はこんな形でも食べられるのか。ほかにも使い道があるのかな」
「青王様から穂香さんに聞いてみたらどうでしょう?あっ、そうだ。設備について穂香さんと話したんですが...」
カカオの森の設備について、穂香さんと話した内容を青王様にすべて伝えた。
「そうか。今のところ五カ所に設置しようと思っている。もし必要なら徐々に増やしていくというのではどうだろう」
「わたしはそれでいいと思いますが、明日穂香さんにも聞いてみますね」
「おはようございます。設備のこと、青王様にお話してきました」
瑠璃が青王様の考えを教えてくれた。
「ありがとう。私もそれでいいと思う。今夜、青王様に直接お話しに行くわ」
「はい、わかりました。あの、カカオニブってまだありますか?」
「もうあまり残ってないけれど、これ全部使っていいわよ」
ガラスの容器に入ったカカオニブを渡すと、うれしそうになにか作り始めた。
開店準備をしていると、瑠璃ができあがったお菓子を持って厨房から出てきた。
「ナッツとカカオのフロランタンです!試食してみてください」
「おいしそうね。いただきます」
ローストしたナッツの香ばしさ、キャラメルのミルキーな甘さ、それにカカオニブの苦みと香りが一つにギュッと詰まっている。
「サクサクした軽い食感でとってもおいしい!」
「よかったぁ。これ、並べてもいいですか?」
「もちろん。ショーケースの右半分をスペシャルカカオコーナーにしたから、その上に並べたらどうかしら」
「はい!ラッピングして並べますね」
「フロランタンは青王様にも持っていこうと思って取っておいた分がありますが、それも並べちゃいましょうか?」
「いいえ、それは青王様に持っていきましょう」
スペシャルカカオコーナーの商品はお昼過ぎには品薄になり、まもなく完売してしまった。「今日はもう追加できないから仕方ないわね」
「この前続けてカカオの発酵を始めておけばよかったのかも」
「そうね。でもあの時は早くチョコレートを作りたくてそこまで頭が回らなかったのよね」
まだ京陽産カカオの味がわからなかったし、いつものカカオ豆もあるから、そんなに深く考えていなかったのだ。
「今夜からまた発酵始めますか?」
「ええ、ケーキが完売したら早めに閉店してカカオの森へ行きましょうか」
「そうしましょう!」
予想していたよりも早く、夕方にはすべてのケーキが完売してしまった。
閉店作業を終えカカオの森へ行くと、青王様がたくさんの妖たちを連れてやってくるのが見えた。
「ひっ...あれなに?なんの妖?」
大きなねずみみたいなのと、体にいくつもの目がある牛みたいなの。
「あれは、鉄鼠と白沢ですね」
「鉄鼠と白沢...」
近づいてくるとやっぱり怖い。思わず後ずさりしていると、
「穂香が怖がっている。みんな人間の姿になってくれるかな」
青王様が言うと、次々と人間の姿に変わっていく。しかもみんなかなりの美男美女だ。
「え?すごい...」
「驚かせてすまなかったね。この妖たちが発酵と乾燥を手伝ってくれる。作業中は人間の姿でいるから安心して」
「は、はい」
全部で十人の妖たちによろしくと挨拶をすると、みんなフレンドリーに話しかけてくれた。明るくて優しくていい妖ばかりだ。怖がったりして失礼だったなと反省する。
「すぐに発酵作業を始めたいのですが、今からでも大丈夫ですか?」
「かまわないよ。完成している設備は今のところ三カ所だから、今回はすべての設備で発酵を始めるといい」
「ありがとうございます。みなさん、よろしくお願いします」
さっそく一通りのやり方を説明すると、みんな一斉にカカオポットを収穫し作業を始めてくれた。
「わたしにも手伝わせてくれるかな。前回一緒に作業したとき、とても楽しかったんだ」
「はい、一緒にやりましょう」
青王様は私のとなりで作業を始めた。
瑠璃が言っていた通り、みんなとても丁寧に作業をしてくれた。しかも早い!
楽しく和やかな雰囲気で作業が進み、あっという間に終了してしまった。
「みなさんお疲れ様でした。これはフロランタンと言って、瑠璃ちゃんが作ってくれたお菓子です。ここのカカオも使っているのでぜひ食べてみてください」
みんながおいしいと言って食べてくれた。もっと欲しいなって言ってもらえて瑠璃もうれしそうだ。
「ここにいる妖たちはチョコレートを食べたことがないんだよ。だから、できあがったらぜひ振る舞ってやってほしい」
「もちろん持ってきます」
「わたしもケーキやクッキー、作ってきます!」
「二人ともありがとう。そうだ、穂香に聞きたいことがあったんだ」
え、なんだろう...?
「チョコレートやフロランタンに入っていたカカオニブ。あれはほかの食べ方もあるのかな?」
「はい。お菓子に使うことが多いですが、お料理にも使えますよ。カカオニブはポリフェノールが豊富で体にいいんです」
「妖にも効果があるだろうか...まぁ、効果に関係なくおいしいものは食べてみたいが」
「よろしければ、お菓子以外にもなにか作りますよ」
「穂香、ありがとう」
青王様は私を見つめ、そっと頭をなでた。
「あの、青王様。私...ずっと前に青王様に会ったことがある気がして...」
「そうか...」
青王様はそれ以上そのことには触れようとしなかった。
言いづらいなにかがあるのだろうか。私はなにも思い出さないほうがいいのかな...
私ももうなにも言わず、数日後に発酵状態の確認に来ることにしてカカオの森をあとにした。
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