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第四章 ざわめく水面~朴念仁と二人の少女~
第二十七話 地下での密談
しおりを挟む水上アスレチック勝負は、ルナフィス・ケーニッヒのペアが勝利した。
決着が付く前は、妙な高揚感からつい本気になって競技していた二人の少女だが――――
終わってみれば、勝者たる銀髪の少女が勝ち誇るのでもなければ、敗者たる蒼い髪の少女が悔し涙する事もなく、二人とも脱力感と虚無感、そしてどうしようもない後悔が襲ってきていた。
勝負中、いくつかの競技で、うら若き乙女が経験するにはあんまりなハプニングがあって、非常に恥ずかしい思いをしており、今更勝ち負けを言われてもなんの感慨も湧かない。
むしろ、お互いのペアだった男性の記憶をどのようにすれば消去できるのか……そのことについて思い悩む。
そんな少女達を嘲笑するかのように、最終競技のゴール地点には、勝者を称えるファンファーレが軽薄な音調で鳴り響いていた。
その場は、この巨大水上アスレチックの最奥に位置し、第一競技のスタート地点から見上げていた場所だ。
先程まで凍てついていた巨大な扉が、ステフ達の眼前にあり、その表面は氷が溶けて水滴が滴っている。
「取り敢えず、このままってワケにもいかないわ。あなた達が勝ったんだから、扉にどうぞ」
自分の胸を抱く様に腕を組みながら、にわかに不機嫌を織り交ぜつつ、ステフはルナフィスに申し向ける。
「……なんかさ、元々私はこの遺跡には無関係じゃないかと思うんだけど、こんなんでいいの?」
ルナフィスは少し不安を滲ませて、視線をステフ、ダーンと向けていき、最後にパートナーの男性、金髪の優男に向けた。
「え? 別にいいんじゃない。最初にボクが言ったじゃないかぁ……コレは『水神の姫君』の悪ふざけだって。この扉……『祝福の門』だっけ? この扉が開いたって事は、『水神の姫君』とやらを十分愉しませたってコトでしょ」
ケーニッヒは気安く後頭部に両手を組みつつ、ルナフィスに応じ、視線だけ艶やかな黒い髪を腰まで伸ばした少女に向ける。
ケーニッヒの視線に気がついたカレリアは、何も言わずに彼の方に静かに微笑み返すと、
「お姉様の仰るとおりです。このままここに立っていても事態は変わりませんわ。それにそろそろ水着のままでは身体が冷えてきていますし……」
少し震えるような声で言い、ルナフィス達を扉の前に行くよう促す素振りをした。
「わかったわよ……もうッ」
半ば投げやりに答えて、ルナフィスは扉の前に歩いて行く。
その半歩右後ろにケーニッヒが続いた。
そして、勝利条件を満たしたペアが、巨大な扉の前に立つと――――
未だに濡れていて、所々溶け残った氷の塊が付着した巨大な扉が、重々しい音と共に開いていく。
と同時に――――
ルナフィスの耳に背後から少女の悲鳴が聞こえ、さらにその悲鳴は急速に遠のいていった。
赤みのかかった銀髪を振って、後方を振り返れば、ダーンとステフが立っていた場所、その床に大穴が空いているではないか。
「なるほど……コレが罰ゲームですか」
スレームが楽しそうに呟いて、肩のあたりで切りそろえた艶やかな髪を右手で払う。
アーク王国の王立科学研究所の長たる彼女は、その仕草にも妖艶な雰囲気を醸し出していた。
その隣に立っていたカレリアが、少しうっとりとして大穴を覗き込んでいる。
ルナフィスも近付いて穴を覗き込むと、穴の先は漏斗状になっていて、大量の水が流れ出していた。
さらに漏斗の先は直径二メライ(メートル)弱のチューブ状になっていて、かなりの急傾斜で下に下っている。
つまり、落とし穴の先はウォータースライダーになっていたのだ。
「二人とも流されたの?」
眼下のチューブに流れ込む水の勢いの凄まじさに、身の毛がよだつ感覚を覚え、少し声が震えるルナフィス。
「あー、そのようだねぇ。これって、チューブの中にひねりが入っているから、ふたりとも水着姿でもみくちゃにされながら……」
ルナフィスの後方から穴を覗きつつ、顔を赤らめたケーニッヒが蕩けた表情で言う。
その言葉を耳にし――――
ふと先程の競技中の出来事が頭の片隅に浮かんだルナフィスは、沸き上がってきた羞恥心の仇を討つかのように、右肘を後方の優男の鳩尾にめり込ませるのだった。
☆
急流の水に流されながら、凄まじい勢いで滑り落ちていく感覚に、ステフは悲鳴を漏らしつつもダーンの身体にしがみつく。
ダーンも、ステフの身体の柔らかさに戸惑いつつも、しっかり抱き合っていなければ危険と察し、彼女を強く抱きしめるしかなかった。
そのままチューブのなかを流されつつ、もみくちゃにされて、途中、さらにステフが素っ頓狂な悲鳴を上げたりもしつつ、チューブの終わりが見えてきて…………。
滑り落ちる勢いのまま、スライダーの最後は少し跳ね上がっていて、空中に投げ出されてしまう。
ほんの一瞬空中に投げ出され、落下の感覚の後、派手な水音をたてながら、二人は着水する。
いや……正確には水ではなく――――
「ウッ……って、これお湯か……あれ? これって……」
湯が鼻に入った不快感に呻きつつも、ダーンは触れた湯の感触がしばらく前に触れたものと同じと気付く。
そのままその泉質に詳しいだろう少女の方に確認しようと、視線を巡らそうとしたところで――――
「ちょッ! 今こっち見ないでよッ」
一瞬ステフの方を見たダーンの視界には、はだけた胸元を両腕で抱きつつ後ろを向く少女の姿が映った。
――そういえば……。
スライダーの中で、ステフが素っ頓狂な悲鳴を上げた直後に、何か小さな布きれが顔に当たって、どこかに流れていったような気もするが。
彼女が身につけていた水着の上は、ベルトのひもを背中で結ぶタイプのものだったから、スライダーの中でもみくちゃにされた際に外れてしまったのだろう。
となると、さっきまで上半身は裸で密着していたこととなるが……。
ダーンはあえてそれ以上考えないようにした。
「もうッ! 水着の上見つからないじゃない」
はだけた水着もこの場に投げ出されて、湯に浮いているのではと周囲を見渡していたステフだったが、何故かそのような物体が湯面に無い。
悪態を吐いて、諦めたようにその場に姿勢を落とすステフ。
彼女が肩まで湯面に沈むのを待って、ダーンもその場で肩まで湯に浸かった。
――これで、一緒に風呂に入るのは二度目か……妙な関係だな、ナスカが知ったら何て言われるか。
ダーンはふと茶髪の義兄が理不尽な不機嫌を如実に現している状況を思い浮かべ、自嘲する。
任務中に義兄のナスカが負傷し、その後ダーン一人で任務を続行するようになってから一週間が経過しているが――――
思えば、短い期間に随分と色々な事があったし、自身を取り巻く環境や自分自身も劇的に変化していた。
その変化の最たる要因といえば、やはり目の前の蒼い髪の少女だろう。
そんな感慨に浸りながら、ダーンは現状の確認のため周囲に視線を走らせる。
滑り落ちてきた感覚から、先程の場所からかなり下に来たようだが、周囲を見渡せば、かなり広大な地下洞窟にわき出ている天然温泉のようだ。
周囲は剥き出しの岩場だが、人工的な加工も所々にしてあるようで、何より、洞窟内だというのにぼんやりと明るい。
天井部分には、何か特殊な法術を施された水晶玉の様なものがいくつも埋め込まれていて、それが発光し照明となっているのだ。
『どうやら、この場では念話も可能のようですね……』
不意に、ソルブライトの声がダーン達の脳裏に響く。
「あたしはさっきも嫌って言うほど聞こえてたけどね……。ということはサイキックもいけるかな」
「そうらしいけど、まだ武器がないし水着のままってのもな……」
『一人はトップレスですしね』
「う……うるさいわねッ」
『冗談です……あちらに《白き装飾銃》の反応を感じますから、用意されているようですよ。取りあえず、この場で冷えた身体を温めて、万全な状況で行きましょうか』
ソルブライトの言うあちらという方向――念話で伝わってくるその方向のイメージに視線を向けると、スライダーの出口とは反対の方向の奥に、質素な木製の建物が見て取れる。
どうやら、脱衣所のような施設だ。
その場にステフの《白き装飾銃》があるということは……。
「そうすると……いよいよ戦闘準備ってトコかしらね」
散々訳のわからない競技で対戦させられていたが、ステフもここに来た理由の一つを忘れているわけではない。
ここの主《水神の姫君》との契約を結ぶための他、ダーンとルナフィスの一騎打ちの約束もあるのだ。
まあ、その一騎打ちの賭けの対象がステフ自身なので、彼女も複雑な心境ではあるが……。
「ソレなんだが……ステフ。この場で二人だけだから伝えておきたい事がある」
ダーンは少し声を潜ませて、ステフに近付く。
「あんまり近付かないでよ……で、何?」
胸元を湯の中で抱きながら、ステフも少しだけダーンの方に寄っていくと……。
ダーンは「冷静に聞いてくれ」と前置きをして、『彼女』に関わる話をし始めた。
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