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完結編
一話 ちょっと違うっぽいです
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「記憶喪失なんて生易しいもんじゃないなこれ、人格が分かれているだけじゃねえ、あー、バランスが崩れているな」
「ほう? 」
カリカリと、ペンの走る音が耳をくすぐる。
「そーだなぁ、もので例えるなら、天秤が傾いている? いや違うなあもっと良い表現があるはすだ」
「具体的に頼む」
「心か精神か、はたまた記憶が無いからなのかそうじゃないのかはまだ分からんが恐らく、人格に精神に記憶、その他諸々のバランスが崩れているのか……ああ、極論ある意味頭が空っぽだから体に天秤が傾いている……か? 」
「それはニッキーを愚弄していると受け止めていいか? 拳が出るぞ」
「ちっげえよ……てかよお」
「なんだ? 」
「なーんで真面目に調べた俺が真顔の男にあざ作られなきゃなーんねーですかねー?! ほれこれ! ひでえぞ! 」
「アルちゃんアルちゃんすごーい、僕に近づいてるね! 」
「なんだいクーちゃん」
青筋立ててるニワトリさんのほっぺに立派な青あざができて怒ってらっしゃる、おやトカゲさんがのそのそ来たよ。
「あん? 」
「ほら、青くなってる」
くわっと嬉しそうにトカゲさんの口が開いて、とんがった爪の先をトカゲさん自身のほっぺに当ててにっこり。
「あぁー、あれか? 鱗みてえってか? 」
「そー! おそろーい」
「ばーか! シンプルに痛えんだよこれ! はぁ……後で治そ」
「ん? やるー? 」
「いや、いい、つかその状態でできんのかよ」
「えー? わかんなーい」
「……できないならできないでいい」
部屋を明るくして姿勢を整えて前を見ると、顔が無惨なニワトリ……モヒカン、ああ、ええと、アルちゃん? がギャーギャーしてる。
「……お名前なんでしたっけ」
「あぁ?! アールーゴース!! 大陸で一番二番に強い魔術師だっつーの!! 」
「ギャー」
ぶわってでかい声きた、くわばらくわばら。
「声がでかい、ニッキーの耳が痛んだらどうしてくれる」
「耳が痛むってなによ、そりゃ耳がギンギンするけど」
「やはりそうだろう、アルゴス殿よ、ニッキーは繊細なんだ、手荒な真似をしないでくれ」
ムスッ~っとした顔で淡々とエウァルドさんがニワトリさんに怒ってる。
「……何処が繊細なんだコイツの」
「手荒な真似をしても良いんだが? 」
「こっわ……なんだお前」
「ニッキーの伴侶だが? 」
「ん? え? 」
婚約者じゃなかったっけ。
「えって言ったぞこいつ」
「まだ正式にはなってないからな、遠くないう先で教会に届け出を出す、そうだろうニッキー」
「え? 」
なにそれ初耳、え? 。
「なあおい……ダンちゃんよ」
「なんだ、私は今手紙を書くのに忙しい」
「つれねえこと言うなよ、あれかもしかしてそこの男ってニッキーサマにぞっこんなやつか? 」
「そうみたいだな、辺境伯の領地で腐っていたところを公爵がわざわざ呼び出したらしいから信用はされているんだろう」
「ほーん……ほーん」
ヒソヒソ風だけど普通に聞こえるんだけどね、あ、こっち見た。
「なあなあ、ニッキーサマよ」
「なんでしょうなんでしょう」
「そこのムスッとした男の事をどう思ってる? 」
「エウァルドさん? ん?エウァルドさんのことを、どう思ってるか? 」
横にいるエウァルドさんの顔を見れば真顔のエウァルドさんと目が合う。
「ああそうだエウァルドって名前か、よし覚えた」
「好きか嫌いか、好きならなんで好きなのか、嫌いなら何故嫌いなのか気になってな、答えられるか? 」
「んえ、えーと……」
随分と難しい質問をしやがって……。
えー……と、どうだろうか。
すき……きらい、エウァルドさんのこと? ……すき? きらい?
「きらい……ではないです? 」
「なら好きか? 」
「んん……」
「んじゃあすきでもきらいでもないのか? 」
「……」
「どうだ? 」
すき……かもしれない、だってこんなにも大切に大事にしてくれるから。
きらいかも……しれない、ちょっと強引なところがあるし?
すきでもきらいでもない……と言われたら、もしかしてもしかしたらそうなのかもしれない。
だって……どうだろう、後々理由つけしたらそう頷くかもしれない。
「答えられないか? そうかそうか、ならそれがニッキーサマの”今”だ」
「それはどういうことだ、内容によっては止むなく拳が飛ぶ」
「止むなくじゃねえだろ、それがニッキーサマの現状だ」
「具体的に言え」
「自我が弱いっつ~ことだよ、一般の人間の半分以下しかないと見てるが、記憶喪失どころか自我喪失なんじゃねえか? しらんけど」
「しらんけどって言葉便利ですよね」
「お、分かってるねニッキーサマ、半分わかって半分わかんねえ時に使うと楽だぞ」
「へー」
「で、話戻すが睨みつけるのは程々にしてくれたまえエウァルド君よ、ニッキーサマについてだが」
「……聞こう」
「とりあえずは現状維持だ」
「は? 」
おや、エウァルドさんから聞いたこと無いドス声が。
「メンタルケアは専門外どころか無知なんだよ、俺様は呪いを視てるから、そっちは健やかに食って寝て元気になっとけ、以上! 」
「ほえー」
自我が弱いらしいってのはわかったけど解決策ないやん、とニッキーは思った。
「すまないが拳が飛ぶ」
「おいこらやめろ! 」
文句を言いたいがエウァルドさんが立ち上がりかけてるのでなんとなく止めなきゃ。
エウァルドさんこんな喧嘩っ早かったっけ?
まあいいか。
「わーいアルちゃんがドラゴンになる~! 」
「ならねえわドアホ! 」
「ニッキー樣公爵になにか伝言あれば一枚二枚用意しますがいかがでしょう」
「今ちょっと思い浮かばないので大丈夫ですー」
「畏まりました、エウァルド君、重いの一発で留めて置きなさい、これでも役には立つので」
「了解した」
あの、なんか……あのぉ……お腹、すいたなあ……あ、鈍い音した。
「ほう? 」
カリカリと、ペンの走る音が耳をくすぐる。
「そーだなぁ、もので例えるなら、天秤が傾いている? いや違うなあもっと良い表現があるはすだ」
「具体的に頼む」
「心か精神か、はたまた記憶が無いからなのかそうじゃないのかはまだ分からんが恐らく、人格に精神に記憶、その他諸々のバランスが崩れているのか……ああ、極論ある意味頭が空っぽだから体に天秤が傾いている……か? 」
「それはニッキーを愚弄していると受け止めていいか? 拳が出るぞ」
「ちっげえよ……てかよお」
「なんだ? 」
「なーんで真面目に調べた俺が真顔の男にあざ作られなきゃなーんねーですかねー?! ほれこれ! ひでえぞ! 」
「アルちゃんアルちゃんすごーい、僕に近づいてるね! 」
「なんだいクーちゃん」
青筋立ててるニワトリさんのほっぺに立派な青あざができて怒ってらっしゃる、おやトカゲさんがのそのそ来たよ。
「あん? 」
「ほら、青くなってる」
くわっと嬉しそうにトカゲさんの口が開いて、とんがった爪の先をトカゲさん自身のほっぺに当ててにっこり。
「あぁー、あれか? 鱗みてえってか? 」
「そー! おそろーい」
「ばーか! シンプルに痛えんだよこれ! はぁ……後で治そ」
「ん? やるー? 」
「いや、いい、つかその状態でできんのかよ」
「えー? わかんなーい」
「……できないならできないでいい」
部屋を明るくして姿勢を整えて前を見ると、顔が無惨なニワトリ……モヒカン、ああ、ええと、アルちゃん? がギャーギャーしてる。
「……お名前なんでしたっけ」
「あぁ?! アールーゴース!! 大陸で一番二番に強い魔術師だっつーの!! 」
「ギャー」
ぶわってでかい声きた、くわばらくわばら。
「声がでかい、ニッキーの耳が痛んだらどうしてくれる」
「耳が痛むってなによ、そりゃ耳がギンギンするけど」
「やはりそうだろう、アルゴス殿よ、ニッキーは繊細なんだ、手荒な真似をしないでくれ」
ムスッ~っとした顔で淡々とエウァルドさんがニワトリさんに怒ってる。
「……何処が繊細なんだコイツの」
「手荒な真似をしても良いんだが? 」
「こっわ……なんだお前」
「ニッキーの伴侶だが? 」
「ん? え? 」
婚約者じゃなかったっけ。
「えって言ったぞこいつ」
「まだ正式にはなってないからな、遠くないう先で教会に届け出を出す、そうだろうニッキー」
「え? 」
なにそれ初耳、え? 。
「なあおい……ダンちゃんよ」
「なんだ、私は今手紙を書くのに忙しい」
「つれねえこと言うなよ、あれかもしかしてそこの男ってニッキーサマにぞっこんなやつか? 」
「そうみたいだな、辺境伯の領地で腐っていたところを公爵がわざわざ呼び出したらしいから信用はされているんだろう」
「ほーん……ほーん」
ヒソヒソ風だけど普通に聞こえるんだけどね、あ、こっち見た。
「なあなあ、ニッキーサマよ」
「なんでしょうなんでしょう」
「そこのムスッとした男の事をどう思ってる? 」
「エウァルドさん? ん?エウァルドさんのことを、どう思ってるか? 」
横にいるエウァルドさんの顔を見れば真顔のエウァルドさんと目が合う。
「ああそうだエウァルドって名前か、よし覚えた」
「好きか嫌いか、好きならなんで好きなのか、嫌いなら何故嫌いなのか気になってな、答えられるか? 」
「んえ、えーと……」
随分と難しい質問をしやがって……。
えー……と、どうだろうか。
すき……きらい、エウァルドさんのこと? ……すき? きらい?
「きらい……ではないです? 」
「なら好きか? 」
「んん……」
「んじゃあすきでもきらいでもないのか? 」
「……」
「どうだ? 」
すき……かもしれない、だってこんなにも大切に大事にしてくれるから。
きらいかも……しれない、ちょっと強引なところがあるし?
すきでもきらいでもない……と言われたら、もしかしてもしかしたらそうなのかもしれない。
だって……どうだろう、後々理由つけしたらそう頷くかもしれない。
「答えられないか? そうかそうか、ならそれがニッキーサマの”今”だ」
「それはどういうことだ、内容によっては止むなく拳が飛ぶ」
「止むなくじゃねえだろ、それがニッキーサマの現状だ」
「具体的に言え」
「自我が弱いっつ~ことだよ、一般の人間の半分以下しかないと見てるが、記憶喪失どころか自我喪失なんじゃねえか? しらんけど」
「しらんけどって言葉便利ですよね」
「お、分かってるねニッキーサマ、半分わかって半分わかんねえ時に使うと楽だぞ」
「へー」
「で、話戻すが睨みつけるのは程々にしてくれたまえエウァルド君よ、ニッキーサマについてだが」
「……聞こう」
「とりあえずは現状維持だ」
「は? 」
おや、エウァルドさんから聞いたこと無いドス声が。
「メンタルケアは専門外どころか無知なんだよ、俺様は呪いを視てるから、そっちは健やかに食って寝て元気になっとけ、以上! 」
「ほえー」
自我が弱いらしいってのはわかったけど解決策ないやん、とニッキーは思った。
「すまないが拳が飛ぶ」
「おいこらやめろ! 」
文句を言いたいがエウァルドさんが立ち上がりかけてるのでなんとなく止めなきゃ。
エウァルドさんこんな喧嘩っ早かったっけ?
まあいいか。
「わーいアルちゃんがドラゴンになる~! 」
「ならねえわドアホ! 」
「ニッキー樣公爵になにか伝言あれば一枚二枚用意しますがいかがでしょう」
「今ちょっと思い浮かばないので大丈夫ですー」
「畏まりました、エウァルド君、重いの一発で留めて置きなさい、これでも役には立つので」
「了解した」
あの、なんか……あのぉ……お腹、すいたなあ……あ、鈍い音した。
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