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本編

七十三話 この欲は余分

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「朝だ、起きてくれ」

「んえ? 」

朝らしい、起きなきゃ……五分後に。


「起きてくれ」

「んん……五分後」

「起きろ」

「んげ」

無理矢理持ち上げられて、意識が急浮上、目を開けた先にはエウァルドさん、ムスッとしてる。


「起きたな、よし」

「ねむたい」 

「がまんしろ」

「うえー」

二度寝がしたい、とっても。


「今日は部屋ではなく食堂で食事を取るそうだ、行くぞ」

「んえ? ごはん」

「先に顔を拭く、目と口を閉じろ」

「あいー」

夢心地に、眠気眼に微睡んで力を抜いていたらいつの間にか身支度は終えてもらったらしくて気がつけば。


「……あれ? 」

エウァルドさんに運ばれながら、廊下を進んでいた。


「目覚めたか」

「おはようございます? 」

「おはよう、食堂に向かっている」

「なるほど? 」

「しっかり掴まっていろ」

「ああはい~」


間近のエウァルドさんの顔、ちょっと揺れる感覚、はっきりしていく意識、前方の扉。


「? ついたぞ」

「ついた」

思ったより早くついた気がしなくもないけど、美味しいご飯が食べれるのなら何でもいいよね。


「……まあいいか」

お腹空いてきちゃった。



 



「ニッキー様~、新しい本買ってきましたよ~! 」

「わーい」

日向ぼっことおやつとごはん、それとちょっとした運動とあと読書。


このお屋敷のどこかに図書室的なのがあるんだとか、ダンさんに見せてもらった地図に書いてあった、気がする、いつか見つけてゆっくりと時間をかけて読んでみたい、じっくりと……それで、ううん、これは蛇足。


光を助けたいなんて蛇足も蛇足、今この時だ

けは、聞かない知らない見て見ぬふりってね、そう今はそう、本!


結構な頻度で片道半日の街に行くらしいメルディアさんになんか面白そうな本を買ってきて貰うことがしばしば、メルディアさんはそれを口実に街に遊びに行けてハッピーのお互いウィンウィン? のやーつ。


「今回はですね!! 前々から目をつけていたこちら大長編【妖精の国】シリーズ!! 一冊千ページ越えの分厚さを七冊もあって運んでくるのが大変でしたが読みごたえも内容の良さも抜群! 」

「おおー」

ババーンと見せられたワゴンの上のたくさんの本に思わず小さく拍手する。


「ささ! 早速読書タイムです! ニッキー様が読み終えたら私も読みます!」

「疑問なのだが購入した本はどこに保管しているんだ? 」

「あ、私の部屋です」

「は? 」

そう、これはウィンウィンな関係。


僕のポケットマネー(らしい)をメルディアさんに渡して本を調達してもらい、その本の管理もメルディアさんがする、



僕は好きなタイミングで本を読める、メルディアさんも僕の次に好きに本を読める。


うむ、ウィンウィン。


「ニッキーが納得しているのなら、いい……のか」

「ん? 」

「いや、なんでもない、ハチミツミルクでも作ればゆったりできるだろう、頼む」

「畏まりましたー! 」


悠々自適、まったりライフ、穏やかな時間。


とてもいいと思う、とても善いと思う。


読書もいいと思う、たくさん読んで、たくさん堪能して、嗚呼、この屋敷にも図書室あるらしいよね、いいなあ、入りたいなあ、図書室。

まあ、我慢するけども、他にも楽しいことはたくさんある、きっとできる。



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