上 下
90 / 117
本編

七十四話 偶発で必然の不思議な扉

しおりを挟む
昨日まで無かったものがあった、その一言で片付けられる事件が起きた。


「なんでしょうこれ」
「わからん」
寝起きのお世話をされてさあご飯を食べよう視線の先、廊下の、



「ん? んん? エウァルドさんエウァルドさん」
「言おうとしていることはわかる、俺もわから? 」
「あらまぁ……」
読書には時間がかかる、だからメルディアさんから受け取った本に齧り付いて、夜になって食堂に運ばれてご飯を食べて、寝る時間までまた齧り付いた次の日の朝のこと。


身支度を済ましてさあ食堂に行こう、とエウァルドさんに運ばれて廊下へ続く扉を開けた先、すぐ先に昨日まで無かった扉があった。

「んーと、ダンさんが取り付けたとか? 」
「つける意味がないだろう、戻るぞ」
「はーい」
お部屋の中に回れ右して椅子に座らされて、エウァルドさんはガサゴソとクローゼットを漁って。

「なんですそれー」
「緊急時用のクラッカーだ」
エウァルドさんの大きな手に少し余るくらいの大きさの筒状のなにか、それを窓の外に向けて後ろの紐を引っ張って、ポポン。

からの遠くから聞こえる甲高い鐘を鳴らす音。

「……なるほど? 」
「すぐにダン殿がくる、きたぞ」
「んえ? 」
「ご無事ですか!! ですね?! よろしい! 」 
「あ、ほんとだ」
良く分かってないタイプのなるほどを言ったところで、後ろからダンさんの声が……後ろからー? 

「おはようございますニッキー様、土のついた靴のまま失礼! エウァルド君詳細を」
「廊下を出た先に不自然な扉があった、以上だ」
「ありがとうございます、ニッキー様笛を鳴らしますので耳を塞いでください」
「はーい 「はいいきますよ-」わあああ」
指で笛吹ける人って尊敬するよねってのは置いといて、あれよあれよと十人くらいの兵士服の人がやってきて荷造り的なのが始まりまして。

「お手数ですが窓から庭に出てもらい玄関から新たなお部屋に移動して頂きます」
「はーい、あ 自分で歩 「エウァルド君に運んで頂きます 」あ、はいー……」

大きめの窓からお姫様抱っこで運び出されてお日様を浴びながらのっしっしと運ばれて、玄関を通って、新たな自室っぽい所について。

次の日。


「あらー? 」
「合図を送る」
新たな部屋で新たな一日を迎えてさあ食堂に行こうと廊下に出れば、昨日まで無かった扉がこんにちわしている。

わざわざ目の前が窓の部屋に入ったのにその窓があるはずの部分に扉が陣取っている。

「あれ、エウァルドさん」
「どうした」
「これクラッカー鳴らすのに廊下でなきゃ行けないやつじゃないですか? 」
「そうだな……どうしようか」
「どうしようね」

どことなく”あの”部屋の雰囲気と似てるような気もしなくもないような。

「少し待っていれば異変に気づいたダン殿が来てくれる、ベッドに戻るぞ」
「ちょっとあの扉に興味向いてるって言ったら……怒る? 」
「特段可笑しいことでもないだろう、怒りはしない」
「じゃああの扉開けたいなーてのは? 」
「怒るな」
「そっかー」
「戻るぞ」
この好奇心はわりかし普通のこと、気になる、けどもここはがまんがまん。

がまんよニッキー、扉の中がどんな感じなのか純粋な少年心はステイステイ。

このままベッドにインして好奇心にもだえ苦しむのが吉だよね、うむうむ。


「えー? 入ってくれないのー? 折角移動させたのにー? 」
「んえ? 」
「っ!!  」

声がして慌てて振り返れば、自室の扉からひょっこり顔を出した見たことのあるトカゲ顔。

と、それにとびかかろうとしているエウァルドさん。

……うん? 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

竜人の王である夫に運命の番が見つかったので離婚されました。結局再婚いたしますが。

重田いの
恋愛
竜人族は少子化に焦っていた。彼らは卵で産まれるのだが、その卵はなかなか孵化しないのだ。 少子化を食い止める鍵はたったひとつ! 運命の番様である! 番様と番うと、竜人族であっても卵ではなく子供が産まれる。悲劇を回避できるのだ……。 そして今日、王妃ファニアミリアの夫、王レヴニールに運命の番が見つかった。 離婚された王妃が、結局元サヤ再婚するまでのすったもんだのお話。 翼と角としっぽが生えてるタイプの竜人なので苦手な方はお気をつけて~。

処理中です...