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本編

七十二話 満月をひとつ

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突然だが、僕が夜に寝る時はかならずカーテンを閉められている。


当然といえば当然だけど、それにしては真っ暗すぎるくらい、冬に使うような分厚いカーテンをかけられている、月明かりの一つも入ってこない。



「ねーエウァルドさーん」

「なんだ」

「たまには月明かり見ながら寝たいでーす」

ご飯を食べてお風呂に入ってパジャマに着替えて体のお手入れをしてもらって後はベッドに転がるだけ。


なのだけど欲がひとつ出てきた、夜空を眺めながら寝てみたい。


ということでお部屋の点検していたエウァルドさんに声をかけてみたわけだけど。


「ううむ……」

顎に手をおいて唸っていらっしゃる。


「だめ~? 」

「俺としてはだめではないのだが……」

「ないのだが? 」

「公爵からきつく言われていてな、防犯の面もある、すまない」

「えー」

駄目ならば仕方ない、我慢しよう。


「すまない」

「いーえー、それじゃあ、おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」

寝転ぶベッド脇でしょげてるエウァルドさんににっこり挨拶をして、すやあっと眠りについて。




ちょっと目を覚ました。



「……むむ」

極たまーにある、ぐっすり寝ていたのに突然目が覚めるやつ、少し困る。


明かりもなくちょっと真っ暗闇な中で目を開けても、目の前は真っ暗なまま。


仕方がない。


「エウァルドさーん」

きっとまだ起きているであろうエウァルドさんにお話相手になってもらう、そんな浅はかな魂胆を全面に出して、声をかける。 




……うむ?


「エウァルドさーん? 」 

部屋にいないのかしら、お手洗いかしら。


ぐぐーっと耳を澄ましてみる。


「………」

なんも聞こえない、なんも見えない。



「……エウァルドさん? 」

おやおやおや? 珍しいことこの上ない。

……ほんとに珍しい、いつもいるのに、エウァルドさん。


うん、うん? ……うむぅ、どうしよう、納得できない何故いないのだ。


きっときっと、あれだ、お手洗いとか、何か用事があって運悪く、運悪く僕が起きた? からだね、たぶんきっと、それにしても。



ちょっと不快、うむ、エウァルドさん早く帰ってきて僕のダル絡みに付き合って欲しい。


むむむ……ん? エウァルドさんかいると思って壁の方向いたけどなんか目の端が明るいような。


ちょっと寝返りをごろんと……おや、明るい。



「開いてるじゃない」

僕から一番近い場所のカーテンが大きく開いて、まあるい月がこちらを覗いている。


あんなに重たそうで分厚いカーテンが思い切り開いて、夜空が見える。


「いいねぇ……」

きっとエウァルドさんが開けてくれたんだろう窓の外、雲ひとつ無い闇に、大きくて丸い月の光が照らしてとてもとても明るい。


本当に、本当に明るい……マジで明るい。


たった一箇所しか空いてないのに部屋の中いっぱいに照らして、唯一僕が向いていあ壁際だけが薄暗い。


「まぶしっ……」

お空は綺麗だけど、寝るお供には全然向かない、休めない。


ごねてまで見ようとするものじゃないね。


暗いほう向いて、おやすみなさい。






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