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本編

五十五話 難しき話は湯船にとろかして

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平和を愛するふたりの光。

愛に殉じたかつての光、いまなお輝く光は広がり永遠の繁栄と、奇跡を。


はて、これはなんだろうか。

いまなお輝く光は、ディフラカン。

じゃあ、かつての光は、自分の祖の名は、ああ、分かった、※※ト※だ。

……記憶じゃないね、これ、本能、習性みたいな、頭じゃなくて身体が知っている。

なら話は早い、やることは最初から決まっている、そのために頑張ろうじゃないか。








「なるほど?  つまりは、いま。ニッキー様のなかには知らない記憶があると? 」
時間なんて些細なことよ、お行儀悪くベッドの上でご飯を食べながらぼくはいま、目の前で難しい顔をしているダンさんを中心に、いろいろと、なにかを……してないか、とりあえず頷いておこう。

うん。

「そして自分のものでないと確証があるということでよろしいですか? 」
割と笑顔が多かったダンさんからなにかすごいオーラを感じている、ような気がするね、頷いておこう。

うんうん。


「……なによりそれが気持ちが悪いと、不快に感じていると、そういうことでよろしいでしょうか」
うん、そうなのです。

「ふむ……」
起きて早々、エウァルドさんとおはなしを終えたらしいダンさんがむむむっと唸って、にっこりスマイル。

「朝風呂はいかがです? 気持ちいですよ? 」
「はい? 」
「メルディア、用意を」
「かしこまりましたー! 」
「ほえ? 」
「エウァルド君、準備を」
「了解した、少し待っていてくれ」
「ん? あ、はい」
なにか大きな相談でもするのかとちょっとだけわくわくした朝、桶の音が気持ちいいお風呂場に連れてかれて洗われて、ちょっとのんびりしてたたらこれだよね、いつものことだけど

湯気立つ湯船に浸かってぽかぽか浸かって我に返った、冷静になった、が正しいかも、ああ、うん、気持ちいかも。

「ほらみろ、ニッキー」
「ん? 」
「アヒルだ」
「アヒル」
ちょっと機嫌よさそうな声のエウァルドに視線を上げれば、桶を脇に抱えたエウァルドさんの掌にちいちやい黄色いものが。

「ニッキーを風呂に入れるときは浮き袋とアヒルが大事だそうだ、ほらみろ、鳴くぞこれ」
「あひるう? 」
プピー。

あら、鳴いたね。

「ほら」
「ほらじゃないよ」
甲高い音が部屋に反響してさながら合唱。

うん? 

「? 気に入らないか? 」
「あんまり興味が沸かないね」
「そうか」
プピー。

鳴いたね。

「まだ鳴らしてるし」
「その顔が見たいと思ってな」
「あーん? 」
「そう、その顔だ」
「意味がさっぱり」
「だろうな」
「んだあ~? 」
今の僕の顔はどうだろう、良い顔はしてないはず、だけど、だけどだね、そのことよりもちょっとにこにこしているエウァルドさん、なんか。

「なんか、むかつきますね」
「そうか」
「なんじゃそりゃ」
むかつく、むかつく、そうだね、むかついている。

だけどこのむかつきでエウァルドさんを嫌うことはないなと感じている、はてさて、この気持ちはなんだろうか。


わからん、まあいいや。


ゆっくりお湯の暖かさを楽しもうじゃないかね。

目を閉じて、感覚を研ぎ澄まして、リラックス、リラックス。


プピー、ピープー。



「アヒルすごい鳴くね」
「だろ? 」
「ちょっとわかんない」
難しいのよくわかんない、鳴いてる、エウァルドさんどや顔してる、むきー。





それで、それでね。


お風呂からあがって、エウァルドさんに色々とお世話してもらってお部屋に帰ったら、まあダンさんとか今日どっか行くお父様がいるわけなんですけども。

「おや、温まりましたか? 」
「はい、ホカホカします」
「それはよかった、ささ、朝食の用意ができていますので椅子へどうぞ」
お部屋の扉を開けてコロコロと入ったらですよ、まずは笑顔のダンさんが出迎えてくれる、いつものことですね。


「………あの、それ」
「あぁ、この役立たずのことですか? お気になさらず」
「やくたたじゅ」
ダンさんの足元で何故かお父様が、座って、なにあれ、変なすわり方してる。

「東の大陸で部下の謀反防止のための座り方、"正座"だそうです、ふふふ、この体制で座ると痺れるそうですよ」
セイザとな、なんぞや。


「あの、お父様、んーと、げんきですー?」
「あぁ、元気だ、すまんが反論が浮かばないからそっとしておいてくれ」
「あ、はい」


……難しいことは考えない方が良いやつかしらと考えようとして、冷や汗かいてるお父様とお怒りのオーラを醸し出してるダンさんを見比べまして、ちょっと成り行きを見守ろうと思いました。




「言い訳にしかならないが聞いてくれ、ニッキー」
そして、とても真剣な声のお父様に、集中して聞こうと思う。








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