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本編

四十六話 不満がちょっぴり されども食欲が先に

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1日10歩以上歩いちゃいけません。

ごはんはたっぷりお食べ。

リハビリ以外なら好きなことをしていいよ、って。

気持ちとしては、軽くもなければ重くもない、目の前のことには集中できる感じの精神状態、本音を言えばリハビリしたい、歩きたい。

でもそれはできないし無理に通すには申し訳なさが勝っちゃうから渋々、ちょーしぶしぶまったりしている、ほんとだよ?

ぼんやりと明日なにしよーかなーなんて考えながら夕食をもそもそ、もそもそ。

大きな大きなお肉の挟まったサンドイッチを美味しく食べてるニッキーでございます。

食べてる場所はもちろん僕の寝てるお部屋のテーブル、考えてみたらベッドでごはん食べた頃とは大違い、なんて思ったり、もうちょっと欲張りたいとは思ってる。

だけどもね、ちょっと今は微妙だなーって思ってるところもあるっちゃある。


「…………」
「…………」

味は絶品、ボリュームもたっぷり、食べる楽しさも文句無し、なんですけども、なん、ですけどもね。

「…………」
「…………」

お父様もエウァルドさんもごはん食べるときは無言なのよ、もちろん僕も大体静かに食べるタイプ。

欲張りな僕としては良い感じに喋ってくれる人がいてもいいかもー、なんて。

どうでも良いこと考えるくらい、喋ってくれる人がいない。

いや、喋るときは喋ってるんだけど、無言のときはとことん無言。

物静かに食事ができてハッピー、という考えは昨日あたりで飽きたし、お父様がいるときはメルディアさん屋敷のどっかにいるし今はダンさんという和やかの化身みたいな人がいない。


「お食事中のところ失礼します、ダン・オールド休暇よりただいま戻りました」
「ほほはん? 」
まあでものんびりできるしと割りきって、三個目のサンドイッチを持ったときにだ、軽やかなリズムで3回扉がノックの音の後に顔をだした後に、今考えていた人物が顔をだしてびっくり。


ダンさんって言おうとしたのに言葉にならなかった、無念。


「ニッキー様、口の中のものが無くなってからお話ください」
「んぐ、はーい」
「ダンよ、私への挨拶はどうしたのかね」
「あ、公爵本日もご機嫌麗しゅう」
「おいこら」
ペコッ、と綺麗なお辞儀をしたダンさん、おお。

テーブルをバンバンして騒いでるお父様、おお……。

「ああところでニッキー様、一週間ほど屋敷を空けておりましたがエウァルド君とは仲良くなりましたか?  」
「ん? んーー……どうだろう」
チラッとエウァルドさんを見れば大きな歯形がついたサンドイッチを持ってこっちを見てて、あ、目があった。


「 ……食うか? 」
「たべないっす」
「ふむ」
「そこまで食い意地張ってないですよ」
「そうなのか」
食べかけのサンドイッチ食べたくて見たわけじゃあないのよ。

あら、ダンさんのクスクスする声が。

「どうやらよい関係が築けそうでなによりでございま
す」
「んーおかげさまで? 」
「そのまま是非のびのびと過ごしくださることを願います、ああそうだ公爵」
「なんだね」
「お食事中のところ申し訳ありませんがご子息より手紙を預かっていますので後程目を通すように」
「ほうリアンが、珍しいな」
「珍しいもなにも、いえ、後程お話しするということで、お食事をお楽しみくださいませ、ニッキー様にはたんとお土産をお持ちしたので是非受け取ってくださいませ」
「やったー」
「まてまてまてまて、おいこらダン」
お土産!  楽しみが増えたねやった。

ちょっと気になることがあった気もしないけどまあよかろう、なにくれるんだろうか、うきうきしちゃう。

「む? なんです? 」
「大事なことをさらりと言った上に露骨に私への扱いが酷くなってるのだがなぜかね、ん? なにかお前にしたかね私」
「なにかと言いますか、ご子息様から苦情が入っておりますので当然のことかと 」
「はぁー? 私は雇い主だぞ? 」
「だからなんです? 」
「だからなんですだと!? 」
なんだろう、目を剥くお父様みてるとご飯が美味しく……おっと、これは癖になっちゃいけないやつだ、今回だけ今回だけ。

胸を張るダンさんのなんと立派なことか、そういう問題じゃあないぞと考える自分もいるがそんなものしらん。

楽しさを重視すると頭空っぽにいたしましょう、いえーい。


「お、おいダン」
「はいなんでしょうか」
「仮に、仮にだぞ? いまここで解雇しても文句言えない立場なことを理解して欲しいのだがね私としては、どうだね」
「そうですねぇ」
優雅に腕を組んで目を閉じてちょっとだけ考える素振りをしたダンさんはにっこりと笑顔でお父様にポツリと
「公爵の財産四割ほどの損害を捨て身で与えて自害しますいかがでしょう」
「はぁ?! 」
「一応私もそれなりの地位の者ですのでただでは負けませんよ、死なば諸とも道連れにします」
「……なんだこやつ、こわっ」
「おや今日の夕食はサンドイッチですか、食べやすくて良いですね~」
にこやかなダンさんと心底仰天してるお父様の二人を見比べて、ここでニッキー心のなかで感想をひとつ、いとおかし。

なんとなくエウァルドさんを見てみれば二人の会話なんて聞いてないようで無言でごはんを食べている、あ、こっち見た。

「……ん? 食うか? 」
「食べないでーす」
「そうか、水を飲め」
「はーい」
水分を取ったことで喉もすっきり。

うむ、心がスカッとするような感覚、嫌いじゃない。

「ああそうだ、くだらない話はともかく公爵」
「む!? なんだねまったく……」
「注文していたものが明日届きますのでその準備をお願いします」
「お? おおそうか! そうかそうか! うむ、ニッキー! 」
「なんですー? 」
「明日を楽しみに待っていろ! 」
「え? あ、はいー」
急に元気になったお父様に疑問となにこの人ってなるけど。

正直今知りたいけども、我慢しよう。

まあ楽しみが増えるのは嬉しい、今日もぐっすり眠れるだろうしうんうん、よきかなよきかな、ご飯おいしい、おかわり。








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