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本編

三十九話 新たな日常と 確かな進歩

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個人的な見解としては、色々な意味で一段落したと思う。

ダンさんとメルディアさんに出会い、保護され。

お父様が来て、治療を受けて、エウァルドさんが来た。

やることと言えば、健康な生活をして健康になること、その後のことはその時に考えればよいだろうということで、努力は惜しまないとも。






「おいっちに、おいっちに」
腕の可動域の限界を目指して、ぐいぐいっと、深呼吸も忘れずにー、いっちに、おいっちに。


「エウァルドさんエウァルドさん、こんな感じで合ってます? 」
「あぁ、いいぞ」
お父様の宣言から何日かしまして。

自分から何かをするのは苦手でも誰かから方向性が定められますと気が楽になって本日も元気にすくすく育っております。


「よいしょ、よいしょ……ふう」
「水だ」
「ありがとうございますー」
「おう」
少し肌寒い朝、いつものお部屋、ベッドから出まして、元気に体を動かして、おっと、ノックの音が。


「失礼するぞ、……何をしているのかね? 」
「あ、おはようございますお父様、その手に持つ凶器はなんです捨ててきてください」
「おはよう、注射器は捨てんしお前は何をしているのかね」
白衣姿のお父様と目がバッチリ合って、その手に持つトレーもバッチリ、その上に乗ってる見たくないものは見ない!

そして質問の答えは……ええとなんだっけ、ど忘れしてる。

「……ヨガ?」
「ストレッチだ」
「そうか適度な運動は大事だがほどほどにしておくように、エウァルド君」
「はっ」
「時間だ」
「畏まりました、ニッキー、注射の時間だ、おとなしくしろ」
「まだ何もしてないんですけど!? あと注射は嫌です、拒否します」
「そら力を抜け、すぐに終わる」
「話聞いてます?! あぁちょっとー、あああ!! 」
暴れる隙も逃げる間も無くエウァルドさんに捕獲され始まる無慈悲な所業、部屋の隅でにこにこしていろうダンさんと出口の隙間からちらちら見ているメルディアさんが見えている、見えているぞ……待っていま冷たいのチクってした! 


「さあ、観念するがいい」
「今すんごい暴れたい衝動にかられてるんですが、我慢しなくていいです? これ」
「構わんが体内に針が入り込んで最後は胸に刺さることになるぞ」
「あ、はーい……、我慢します」
「よろしい」
注射が一本、二本、三本、四本、五本最後に、おや、おしまい。

扉のむこうのメルディアさんから目を離してお父様をみればいそいそと片付けをしている。

「……お父様? 」
「どうした」
「注射はおしまいで? 」
「もっと欲しいのか? 」
「嫌です、でも今日は本数が少ないと思うんですよね、なんでです? 」
昨日まではは六本か七本、もしくはそれ以上悲しいことをされていたのに今日の朝はこれでおしまい。

「そんなもの決まっているだろう 「公爵」 分かっている、ちゃんと伝えるとも、はあ……私これでも当主なのだがね」
「親としてだらしない者に向ける敬意は持ち合わせておりませんので 」
「むう、手厳しいな、つまりだなニッキー」
「はいなんでしょう」
苦笑交じりにお父様は僕に笑いかける。

「良くなっているんだ、すこしずつ、来月には自由に歩き回れるだろう」
「おお……つまり注射はもうなくなると」
「いや、あと一週間は必要だ」
「え”」
「消毒は済んだ、朝食を持ってくる」
「え、あちょ、お父様? 」
「ん? 朝食のリクエストなら流石に聞けんぞ、昼食までがまんしなさい」
「違う違う違う、もっとこう、注射以外のなにかを」
「大人しくしてるんだぞー」
「ちょっとー! 」
無情にも、お父様は希望も残さず部屋を出ていく、これ以上の文句は言えず僕は深い深い悲しみに包まれえ「お茶をどうぞ」 あ、どうもどうも、まったくそれにしてもお父様はなんて酷い、これはもうしばらくご機嫌斜めだよ僕、すんごいいじけちゃう 「菓子を食え」 あ、おいしー、やっぱ朝は焼き立てのクッキーだよね! ほかほかしてて贅沢な気分が味わえて最高……ん? 

「……ん? 」
「どうされました? 」
「いやいま……なんだろう、ころころと転がされたような」
「気のせいで御座いますね」
「そうです? 」
「ええそうです、エウァルド殿、ニッキー様はまだ寝ぼけておられるようだ、ということで近い年齢同志お茶でも楽しむとよいでしょう」
「承知した、さあニッキー、こい」
にっこり笑顔のダンさんと真後ろに立っていたエウァルドさんに押されて押されて、朝食前のひとときが始まる。



これをあとちょっと繰り返せば歩けると考えると、全然悪くない、楽しいね。










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