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本編
二十話 朝のささやかな攻防と 客人の知らせ
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カーテンを引く音がうっすらと聞こえて、朝の暖かな光が顔にかかって意識が覚醒する。
「んん……ん? んん」
普通な目覚め……怠すぎず爽やか過ぎないとても、バランスが取れた僕好みの朝。
今日も良い日になるといいなあ……頑張ればなるのかな、ん、頑張ろう。
「おはようニッキー、今日は少し騒がしくなるぞー」
「んん……」
瞬きを繰り返して視界を良くすれば、白衣姿のお父様と目が合う、あ、笑った。
「おーい、起きてるか?」
「ございまし……」
「言葉が出てきとらんぞ」
「うん」
「うんじゃない、ほれ起きんか」
なんかお腹たたかれてる……痛くないけどいたい、やめて。
「もう少し」
「寝たいのか?」
「うむ」
「駄目だ、起きなさい」
「……すう」
「寝るなっ」
今の僕は天才だからどんなに声をかけられても数秒で湯y目の世界に旅立てるのだ、グッバイ!
やるなって言われてることをわざとやるのってダメって分かってるけどやると楽しいよね……ん?
「……んん?」
なんかチクって冷たいのが腕に今、例えるなら細い針で刺されたような。
「ん?」
目を開けて手を見ればお父様が僕の手を持ってて、もう片方のお父様の手には注射器が……。
「ん?」
今僕は、何を、駄目だ頭が理解しようとしない。
「なんだ、結局起きるのか?」
「……いたあい」
「嘘つけ」
「痛くは無いけど痛いって言いたくなりますよね、これ」
「理解できんな」
ていうか、注射……刺された? この僕に……注射?
「で、僕になにしました? 怒りますよ」
寝ようとしたのに注射されたという事実に目が覚めてしまったではないか。
この決して晴れぬ怒りをぶつけようではないか、具体的にはなにしようかさっぱりだけどさあお父様お覚悟を。
「んん? 何故キレてるのかが全く分からないが、今日は注文した品が届くだろ?」
「そうですね」
「それに呼んでいた者がくる日でもあるだろう?」
「……ん? もの、あ、そうですね」
「おいこら、さてはお前忘れていたな」
「はい、ばっちり」
「やかましい」
だってその人に関する詳しい情報全く聞けてないし僕としては正直娯楽品の方が重要っていう言い訳は黙っとこう、怒られるからね!
「まあ良い、今日はやることが多いからな、面倒なことは早めに終わらせないとな」
「へえなるほど……今僕のこと面倒臭いって言いました?!」
「言ってない、そら、腕をだせ」
「……やです」
怒る理由をこじつけることに失敗した僕に残されたのはこの注射拒否しかない、是が非でも男の尊厳捨てでも抵抗してやる。
冷静に考えるとかなり見苦しいなそれ、ほどほどに捨てよ。
「……なあニッキー」
「なんでしょう」
笑顔のお父様の手には未使用の注射器が……ひえ。
「今日はな、負担が大きいお前のために朝昼晩デザートにパフェをつけようと思うんだ、それにお前の好きそうな雑貨と嗜好品を目一杯取り寄せたぞ、どうだ楽しみだろう? 」
「パフェ……嗜好品、おお」
パフェ、アイスとかフルーツとかチョコとかいろいろ乗ってるスイーツが今日は三回食べられると……悪くない。
「よし打った」
「え」
打ったとは、あ、いつの間にお父様僕の腕を! 気がつかなかった。
「次は足だ、毛布めくるぞ」
「嫌です寒いです、寒いって言いました!」
「めくったぞ」
報告すれば良いって思ってるのかなこの方は?! あ、注射器持った!
「今すごい酷いことしましたよ、ねえお父様」
「ああ? 」
「人を物で釣って嫌なことさせるとかケダモノですよお父様」
「やかましいわ、そら次は腰と背中だ」
「ああまた打った! 」
「痛くはないだろ?」
「痛いです! 心が!」
「そうか」
「そうか?! 」
そうかってなに? ねえ後ろ向いてるけどなにしてるのお父様!
「そんな大声出すとまた喉痛めるぞ~」
「あ、確かに、すいません」
「誰に謝っているんだそれは」
「うーん……自分?」
「意味が分からん、ほれ、飲め」
こっちを向いたお父様は呆れた顔をしていて、湯気立つマグカップを僕に渡してため息をついた。
これは……ハチミツミルクだね、好き。
「ありがとうございます」
「礼は良い、良いから飲め」
「はーい」
ベッドの横に椅子を置いて座ったお父様。
それを横目に僕は温かいミルクを飲む…のだけど。
「…………」
ミルクを飲む間じっとお父様僕の事見てるからちょっと居心地が悪い。
さっきまでぎゃーぎゃー言ってたのに凄い優しい顔してるから文句も言えない……まあ、大丈夫か無視しても。
「美味しいです」
「それならよかった、注射の続きはダンが戻ってからで良いな」
「え" あれ、ダンさんて今どっかに行ってるんです?」
「あぁ、街の方にあれがついたと知らせを受けて今迎えに行かせてる、そろそろつくだろう」
「へー」
「注文したものも一緒に持ってくるよう言ったから大荷物になるな」
「やったー」
「……やはりそちらにしか興味が向いてないな、まあよいが、きちんと礼儀正しくするんだぞ」
「大丈夫です、礼儀作法は頭に入ってます」
「ふむ、あまり信じられんな」
「……ケダモノ」
「使い方間違っとるわばかもん」
少し良い気分になった僕を呆れた顔でお父様は見る。
とても嫌がられてるように見えるけど、多分ちょっとしたじゃれ合いだと思い僕はにっこりとスマイルを返す。
「失礼いたします、旦那様」
「ああ、今行く」
ノックされて、メルディアさんがやってきて、二人が目配せしてる。
「すまんが少し待っていてくれ、すぐ戻る」
立ち上がったお父様は微笑んで僕の頭を撫でて、メルディアさんに何かを言うと部屋の外に出て行ってしまった。
「……休憩してよ」
一体誰が来るんだろう……そういえば朝ごはんまだ食べてないな。
「んん……ん? んん」
普通な目覚め……怠すぎず爽やか過ぎないとても、バランスが取れた僕好みの朝。
今日も良い日になるといいなあ……頑張ればなるのかな、ん、頑張ろう。
「おはようニッキー、今日は少し騒がしくなるぞー」
「んん……」
瞬きを繰り返して視界を良くすれば、白衣姿のお父様と目が合う、あ、笑った。
「おーい、起きてるか?」
「ございまし……」
「言葉が出てきとらんぞ」
「うん」
「うんじゃない、ほれ起きんか」
なんかお腹たたかれてる……痛くないけどいたい、やめて。
「もう少し」
「寝たいのか?」
「うむ」
「駄目だ、起きなさい」
「……すう」
「寝るなっ」
今の僕は天才だからどんなに声をかけられても数秒で湯y目の世界に旅立てるのだ、グッバイ!
やるなって言われてることをわざとやるのってダメって分かってるけどやると楽しいよね……ん?
「……んん?」
なんかチクって冷たいのが腕に今、例えるなら細い針で刺されたような。
「ん?」
目を開けて手を見ればお父様が僕の手を持ってて、もう片方のお父様の手には注射器が……。
「ん?」
今僕は、何を、駄目だ頭が理解しようとしない。
「なんだ、結局起きるのか?」
「……いたあい」
「嘘つけ」
「痛くは無いけど痛いって言いたくなりますよね、これ」
「理解できんな」
ていうか、注射……刺された? この僕に……注射?
「で、僕になにしました? 怒りますよ」
寝ようとしたのに注射されたという事実に目が覚めてしまったではないか。
この決して晴れぬ怒りをぶつけようではないか、具体的にはなにしようかさっぱりだけどさあお父様お覚悟を。
「んん? 何故キレてるのかが全く分からないが、今日は注文した品が届くだろ?」
「そうですね」
「それに呼んでいた者がくる日でもあるだろう?」
「……ん? もの、あ、そうですね」
「おいこら、さてはお前忘れていたな」
「はい、ばっちり」
「やかましい」
だってその人に関する詳しい情報全く聞けてないし僕としては正直娯楽品の方が重要っていう言い訳は黙っとこう、怒られるからね!
「まあ良い、今日はやることが多いからな、面倒なことは早めに終わらせないとな」
「へえなるほど……今僕のこと面倒臭いって言いました?!」
「言ってない、そら、腕をだせ」
「……やです」
怒る理由をこじつけることに失敗した僕に残されたのはこの注射拒否しかない、是が非でも男の尊厳捨てでも抵抗してやる。
冷静に考えるとかなり見苦しいなそれ、ほどほどに捨てよ。
「……なあニッキー」
「なんでしょう」
笑顔のお父様の手には未使用の注射器が……ひえ。
「今日はな、負担が大きいお前のために朝昼晩デザートにパフェをつけようと思うんだ、それにお前の好きそうな雑貨と嗜好品を目一杯取り寄せたぞ、どうだ楽しみだろう? 」
「パフェ……嗜好品、おお」
パフェ、アイスとかフルーツとかチョコとかいろいろ乗ってるスイーツが今日は三回食べられると……悪くない。
「よし打った」
「え」
打ったとは、あ、いつの間にお父様僕の腕を! 気がつかなかった。
「次は足だ、毛布めくるぞ」
「嫌です寒いです、寒いって言いました!」
「めくったぞ」
報告すれば良いって思ってるのかなこの方は?! あ、注射器持った!
「今すごい酷いことしましたよ、ねえお父様」
「ああ? 」
「人を物で釣って嫌なことさせるとかケダモノですよお父様」
「やかましいわ、そら次は腰と背中だ」
「ああまた打った! 」
「痛くはないだろ?」
「痛いです! 心が!」
「そうか」
「そうか?! 」
そうかってなに? ねえ後ろ向いてるけどなにしてるのお父様!
「そんな大声出すとまた喉痛めるぞ~」
「あ、確かに、すいません」
「誰に謝っているんだそれは」
「うーん……自分?」
「意味が分からん、ほれ、飲め」
こっちを向いたお父様は呆れた顔をしていて、湯気立つマグカップを僕に渡してため息をついた。
これは……ハチミツミルクだね、好き。
「ありがとうございます」
「礼は良い、良いから飲め」
「はーい」
ベッドの横に椅子を置いて座ったお父様。
それを横目に僕は温かいミルクを飲む…のだけど。
「…………」
ミルクを飲む間じっとお父様僕の事見てるからちょっと居心地が悪い。
さっきまでぎゃーぎゃー言ってたのに凄い優しい顔してるから文句も言えない……まあ、大丈夫か無視しても。
「美味しいです」
「それならよかった、注射の続きはダンが戻ってからで良いな」
「え" あれ、ダンさんて今どっかに行ってるんです?」
「あぁ、街の方にあれがついたと知らせを受けて今迎えに行かせてる、そろそろつくだろう」
「へー」
「注文したものも一緒に持ってくるよう言ったから大荷物になるな」
「やったー」
「……やはりそちらにしか興味が向いてないな、まあよいが、きちんと礼儀正しくするんだぞ」
「大丈夫です、礼儀作法は頭に入ってます」
「ふむ、あまり信じられんな」
「……ケダモノ」
「使い方間違っとるわばかもん」
少し良い気分になった僕を呆れた顔でお父様は見る。
とても嫌がられてるように見えるけど、多分ちょっとしたじゃれ合いだと思い僕はにっこりとスマイルを返す。
「失礼いたします、旦那様」
「ああ、今行く」
ノックされて、メルディアさんがやってきて、二人が目配せしてる。
「すまんが少し待っていてくれ、すぐ戻る」
立ち上がったお父様は微笑んで僕の頭を撫でて、メルディアさんに何かを言うと部屋の外に出て行ってしまった。
「……休憩してよ」
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