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本編

十八話 努力禁止命令

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トマトのソースを添えてお好みで召し上がれと、熱々の鉄板の上で踊る鳥肉を用意した渋いお父様の笑顔と共におはようございます。




エプロン姿が大変似合っておりますお父様……。


あ、そうだ。


「考えてみたらこの顔を治すより美しく魅せる方法探したほうが楽しいと思うんですけどどう思います?」
「どうでもいい事考えとらんで飯を食え」
「はーい」
頑張って体治そうとと心に決めて2日。


敬語は親しい人に向けた言葉遣いというものが分からず。


試行錯誤の結果少し砕けた感じに出来たからこれで良いと言われ、少しだけお父様達との距離が近づいた気がする。



そのお父様が作ってくれた熱々のチキンステーキを食べて閃いた名案を却下されました、悲しい。


ベッドから出て、椅子に座って食事を取れるようになったのは確かな進歩と言っても過言ではないのかもしれない。

うむ、ステーキ美味しい。


「そういえばお父様」
「どうした」
「最近ずっとを朝ごはんにステーキを食べていますがなにか意味とかあるんです?」
「む?」
パンを切る姿が馴染んできたお父様に僕は常々疑問思っていたことを告げる。

鳥、牛、豚、猪、鹿。

とても美味しくて満足しているけど、毎朝必ずステーキをお父様は用意してくる。

問題なく食べれるから良いのだけど、朝に弱い人には堪らないなって思うんだよね。


「美味しくて最高なんですけどお父様が作るごはん必ずステーキが出てくるからなんでかなーと」
「それは当然お前のため……」
「?」
「と言っただけでは分からんな」
「分からないですね」
胸を張って言おうとしたお父様が少し眉を寄せてぼくに

そういう台詞はカップルがすれ違う原因になるやつです、メルディアさんの本で見た。


「そうも素直に返されると困るな……まあいい、ほれ、もっと食え」
「ありがとうございます~」
「礼は良い、さて……どう説明しようか」
切ったパンを僕に渡しお父様はテーブルに肘をつくとコーヒーを飲んで、ため息をついた。


「深刻な話ならあんまり聞きたくないので別に」
「はあ?」
「今まさに深刻なのに更に追加されると心の支えを増やさなきゃいけなくなるので」
ただ治療に専念と言われてもそれをするためのエネルギーをどう見繕うか困りどころなのが問題。


ごはん、本、外を眺めるでバランスを取っているのにここで問題を増やされるとメンタルが悲しいことになってしまうのだ。

「いやまぁ、筋は通るが……まさか聞きたくないと言われるとは思わんぞ」
「いやまぁ、聞きたくないですし」
「……明るいだけましだと思えば……これが素だと思いたいがどう思うダン」
「とても自然体で過ごされてるようで何よりでございます」
困ったお父様が壁際に控えるダンさんに声をかけるとダンさんは白い歯が綺麗な笑顔で答えた。


窓からの朝日に照らされたダンさんが凛々しいこと凛々しいこと……これで50代ってすごいよね。


「どうも?」
「どうもではない、こんなくだらない話題で複雑な気持ちにさせられるとはまだまだ未熟だな私も」
「お父様?」
「何でもない、食後のデザートも残さず食べるのだぞ」
「喜んでっ」
ステーキをもう一回食べて、にっこりスマイルでお返事完了、一体どんなデザートが出てくるのか楽しみだね。





それはそれとして。


「これから治療するにあたって僕がやることってあります?」
「ない」
あら、断言された


「その、運動とか」
「筋肉も贅肉もないのに運動なんてしたら骨が折れる」
「それじゃその肉をつけるためになにか」
「朝昼晩ステーキを食べていればよい」
「……だからステーキ出てくるんですね」
「そうだとも、すべては肉をつけてからだ」
「へぇー」
ポンと手をたたく僕をお父様はやれやれと首を振った。


……あれ?

「それだと僕やること無いじゃないですか」
「はじめから言っているだろう……阿呆」
困惑する僕にちょっと可愛そうな物を見る目をしたお父様が僕を見て言った。


「何かしようという意欲は褒められるが、今のお前に何かする余裕はないのだよ」
「えー」
「生きているだけで奇跡のようなものなのだから、良く分からない考えはまぁ……良いとして、それを行動に起こそうとしないでくれ」
「良く分からない行動ってなんすか……」
優しくされてるようでなんか突き放されてるような……なんだろうかこの気持ち。


「手当たり次第に娯楽品を取り寄せてるからそれまではじっとしててくれ、良いな?」
「……はーい」
反論する余地が見当たらない……ごはん食べたら本でも読もう。


そしたらお昼まで寝て、ごはん食べて、本読んで、寝て……自堕落な生活だなぁ。


頑張って早く治したいけどそうもいかないのかなあ……。










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