23 / 117
本編
十七話 鏡
しおりを挟む
歩幅は少なく、一定に。
ベッドから床に足をつけて、自分の力で立ち上がって……意識して進んで、転ばないように諦めないうように。
ちょっと進んだだけでもうしんどくなったけど……頑張れ自分。
「ニッキー、今日はそのあたりに」
「結構です」
頑張っているのに邪魔されるのはちょっと正直、話しかけられたくないという本音が口にでそうだけど我慢して……がまん。
「歩くにはまだ筋肉が辛いだろう? 」
「ええはい辛いので話かけないでください!」
「うぐう……」
我慢……できなかった~。
いやまあ砕けた感じで接してくれってお父様言ってたし……後で謝っとこ。
「ふう……もうちょい」
目指すは、化粧台、ドレッサー……。
3時間に1度だった睡眠が5時間に1度になって、少しでも疲れを感じるとほとんど動けなかったのが少しは改善されて……辛いけど、孤独な時よりはずっと良い。
今、ダンさんとかお父様の目がある所限定だけど、自分の足で歩けるようになってきて、頑張って運動をして……辛い。
「ふう……んんぬぬ! 」
「大丈夫なのか!? 」
「大丈夫……です!!」
体が重くって足が震えちゃうのは見ないふりをして……足を、動かして。
残り少し、あと4回足を動かせば……つく、から。
「に、ニッキー……、もう、いいだろう?_ 頑張ったぞ、今日はもうそのあたりにしておかないか?! 怪我をしてしまったらリハビリの意味がないと思うのだがっ、そ、そうだ、好きなものはないか!?」
「公爵」
よし、ついた……。
なら、やることはひとつ。
「な、なんだ、何故私を睨む」
「失礼は承知で申し上げますと、煩いです」
「なんだと?! 私に向かって何て事を……」
「ニッキー様の邪魔になっておりますので、よろしいでしょうか」
「ぬ、ぬう……!?」
「……おお?」
実は意外なことに鏡を見る機会が一度も無かった。
目覚めてから今に至るまで、一度も。
メルディアさん、ダンさん、お父様。
僕の顔を見て皆は初め、顔を歪めて、泣きそうな顔になって。
そんな顔をさせる僕って一体どんな顔をしているのか気になっていたけども、中身を治すほうを優先して見ていなかった。
そして今、鏡に映る自分を見た感想は……なんだろうか。
「……ミイラみたい」
率直な感想としては、顔色の良いミイラ。
「……ニッキー?」
「お肌カサカサで、髪真っ白で……骨格がはっきりしてて、元気なミイラだこれ、すごーい」
「すごくは無い」
真っ白な髪は、銀髪や白髪とは比べてはいけないくらいボロボロで、頬は痩けて。
「こんな状態の良いミイラみたいな顔だったなんて思わなくて……、面白くなってきちゃいましたなんか」
「面白くもないわ……阿呆」
怖いなって少しは思うけどそれ以上に驚いてしまった。
「いやだってほらお父様……お父様?」
ちょっと楽しくなってお父様達をみれば、二人とも悲しそうな顔で僕をみていた。
あぁ……うん、何してるんだろうね、僕。
まともに考えたら、すごい姿だ。
多分、ほとんど骨と皮だろうし、そんな僕をお世話をしてくれるお父様達ってありがたいね。
「あの……お父様」
「なんだ」
うん……悲しくなってきた。
「これ……良くなりますかね」
折角ならそれなりに楽しく過ごしたいなとは思ったけど、骸骨みたいな顔じゃまともに外に出れないだろう。
醜い姿の僕の世話をしてくれる人達にほんと申し訳無くなっちゃう。
多少の醜さならどうって事無いけど、これは……大丈夫なのかな。
見なきゃ良かったかも……、もう少し待ってから見れば良かったかも。
「ニッキー? 」
「はい……」
「大丈夫だ、治すとも」
見上げて見る僕に、歩いてきたお父様は笑顔で言った。
「でも、なにも無い状態から肉をつけるなんて……」
「私を誰だと思っている、医者だぞ?」
「そうなんですか?」
あ、いや、そうなのかな、朝の診察とかしてるし、うん。
「まぁそうなのだが……体の肉が無いくらいどうってことない、私は国一番の医術師だからな」
「初めて聞きました」
「そうか……残念だ」
「え? 」
「まあいい、ニッキー、お前はただ、楽しいことだけ考えていれば良い」
先の事を想像して不安になる僕を抱きしめて、お父様は優しく言ってくれる。
「それじゃあ……治ります?」
「ああ、必ず治す」
「……ありがとう、ございます?」
ちょっと……お父様に惚れそう。
治るなら、もう少し頑張ろうかな。
「それはそれとして、しばらくリハビリは禁止だ、心臓に悪すぎる」
「え?! どうしてです!?」
あ、あれぇ? それじゃあどう頑張ろうか。
ベッドから床に足をつけて、自分の力で立ち上がって……意識して進んで、転ばないように諦めないうように。
ちょっと進んだだけでもうしんどくなったけど……頑張れ自分。
「ニッキー、今日はそのあたりに」
「結構です」
頑張っているのに邪魔されるのはちょっと正直、話しかけられたくないという本音が口にでそうだけど我慢して……がまん。
「歩くにはまだ筋肉が辛いだろう? 」
「ええはい辛いので話かけないでください!」
「うぐう……」
我慢……できなかった~。
いやまあ砕けた感じで接してくれってお父様言ってたし……後で謝っとこ。
「ふう……もうちょい」
目指すは、化粧台、ドレッサー……。
3時間に1度だった睡眠が5時間に1度になって、少しでも疲れを感じるとほとんど動けなかったのが少しは改善されて……辛いけど、孤独な時よりはずっと良い。
今、ダンさんとかお父様の目がある所限定だけど、自分の足で歩けるようになってきて、頑張って運動をして……辛い。
「ふう……んんぬぬ! 」
「大丈夫なのか!? 」
「大丈夫……です!!」
体が重くって足が震えちゃうのは見ないふりをして……足を、動かして。
残り少し、あと4回足を動かせば……つく、から。
「に、ニッキー……、もう、いいだろう?_ 頑張ったぞ、今日はもうそのあたりにしておかないか?! 怪我をしてしまったらリハビリの意味がないと思うのだがっ、そ、そうだ、好きなものはないか!?」
「公爵」
よし、ついた……。
なら、やることはひとつ。
「な、なんだ、何故私を睨む」
「失礼は承知で申し上げますと、煩いです」
「なんだと?! 私に向かって何て事を……」
「ニッキー様の邪魔になっておりますので、よろしいでしょうか」
「ぬ、ぬう……!?」
「……おお?」
実は意外なことに鏡を見る機会が一度も無かった。
目覚めてから今に至るまで、一度も。
メルディアさん、ダンさん、お父様。
僕の顔を見て皆は初め、顔を歪めて、泣きそうな顔になって。
そんな顔をさせる僕って一体どんな顔をしているのか気になっていたけども、中身を治すほうを優先して見ていなかった。
そして今、鏡に映る自分を見た感想は……なんだろうか。
「……ミイラみたい」
率直な感想としては、顔色の良いミイラ。
「……ニッキー?」
「お肌カサカサで、髪真っ白で……骨格がはっきりしてて、元気なミイラだこれ、すごーい」
「すごくは無い」
真っ白な髪は、銀髪や白髪とは比べてはいけないくらいボロボロで、頬は痩けて。
「こんな状態の良いミイラみたいな顔だったなんて思わなくて……、面白くなってきちゃいましたなんか」
「面白くもないわ……阿呆」
怖いなって少しは思うけどそれ以上に驚いてしまった。
「いやだってほらお父様……お父様?」
ちょっと楽しくなってお父様達をみれば、二人とも悲しそうな顔で僕をみていた。
あぁ……うん、何してるんだろうね、僕。
まともに考えたら、すごい姿だ。
多分、ほとんど骨と皮だろうし、そんな僕をお世話をしてくれるお父様達ってありがたいね。
「あの……お父様」
「なんだ」
うん……悲しくなってきた。
「これ……良くなりますかね」
折角ならそれなりに楽しく過ごしたいなとは思ったけど、骸骨みたいな顔じゃまともに外に出れないだろう。
醜い姿の僕の世話をしてくれる人達にほんと申し訳無くなっちゃう。
多少の醜さならどうって事無いけど、これは……大丈夫なのかな。
見なきゃ良かったかも……、もう少し待ってから見れば良かったかも。
「ニッキー? 」
「はい……」
「大丈夫だ、治すとも」
見上げて見る僕に、歩いてきたお父様は笑顔で言った。
「でも、なにも無い状態から肉をつけるなんて……」
「私を誰だと思っている、医者だぞ?」
「そうなんですか?」
あ、いや、そうなのかな、朝の診察とかしてるし、うん。
「まぁそうなのだが……体の肉が無いくらいどうってことない、私は国一番の医術師だからな」
「初めて聞きました」
「そうか……残念だ」
「え? 」
「まあいい、ニッキー、お前はただ、楽しいことだけ考えていれば良い」
先の事を想像して不安になる僕を抱きしめて、お父様は優しく言ってくれる。
「それじゃあ……治ります?」
「ああ、必ず治す」
「……ありがとう、ございます?」
ちょっと……お父様に惚れそう。
治るなら、もう少し頑張ろうかな。
「それはそれとして、しばらくリハビリは禁止だ、心臓に悪すぎる」
「え?! どうしてです!?」
あ、あれぇ? それじゃあどう頑張ろうか。
103
お気に入りに追加
3,070
あなたにおすすめの小説
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる