92 / 182
六章 変化
あらら
しおりを挟む
暖かな夏風の吹き抜ける城の中、拝啓王様……天国でいかがお過ごしですか?
私は今、とても健やかに過ごしております。
「聞いてるのかラグーン……」
「あ、はい」
「その返事は聞いてなかったんだな……」
呆れたようにため息をつくアイデンさん。
対して僕は……正座してます、説教、長いです。
かれこれ、一時間弱、くどくどくど、何処からそんなに内容が浮かんでくるのか……あぁ、眠い……。
「全く……話を戻すがあまり謙虚すぎたり静かすぎたりするのはいかがなものと思うが、君の場合はもう少し静かなときと騒がしいときのバランスを取ってくれ……」
「えぇ……」
腕を組んで言ったアイデンさん、そして良くわかんない僕は首をかしげる。
「返事は? 」
「はーい」
「………まあいぃ、おいナパス」
「なに……」
諦めたようにため息をついたアイデンさんは、
今度は僕の隣で正座している青髪エルフを睨む。
「とりあえず、暫く城で研究禁止」
「は、はぁ? はぁあああ!? 」
「むやみやたらと揉め事を起こすお前が悪い……ふう、以上だ、解散」
あ、説教、終わった?
※※※
時刻はただいま午前十一時~。
足が痺れて生まれたての鹿になっている僕を見てアイデンさんがにこにこしてらっしゃるのを睨みながらただいま城門をでた僕はその前にあった下り坂を降りているのだけ、ど。
「全く……何でもうこんな時間になっているんだ………」
にこにこから一転、日が高くなった空を見て顔を覆って嘆いてる人が一名……。
「半分以上はアイデンさんのお説教で時間食ってたようなぁ………」
と言いかけてアイデンさんにじろりと睨まれて口をつぐむ、そしてあははと笑い誤魔化せばため息をつくアイデンさん。
「………仕方がない、もう少し降りていけばレストラン街に出る、そこで食事にしよう」
「はーい」
そう返事をして僕は影の翼で浮かび上がり、回りを見る。
石の堀の向こうに大きい大きい屋敷、そして敷き詰められたタイルののむこうにも似たような屋敷。
「でっかい屋敷しかないねここ」
「そうだなぁ、城を出て直ぐは地方から集まった貴族達の別荘が並んでいる、見ていて飽きるな」
「え、…………なにそれ全部別荘? 勿体ない………」
「だろう? 資金の無駄だ」
「ねー」
つまらなそうに言ったアイデンさん。
そして更に歩いていくと坂道が終わり大きなアーチがあった。
中央に噴水、花壇やベンチと寛げる広場が見える。
「そこの先がレストラン街だ」
ほほう。
広場の周りはいくつもの道に分かれて、その先におおきな建物がたくさん見える。
たくさん道があってたくさん店があり、その分きっも路地裏とかもいっぱいある。
迷いますわ。
「迷いそうだねここ」
「俺について来てくれればいい、迷ってもラグーンなら空高く飛べばいいだろ? 」
あ、そうか飛べば全て解決する……まてよ?
「なら大丈夫だ……あっ、でも」
「ん? 」
「僕の読んだ小説だと空に飛び上がった瞬間鳥にぶつかって真っ逆さまとか」
「あり得ないと思うが? 」
「落ちた先が裏路地で奴隷商に捕まって売り飛ばされるとか」
「ないからな? 一体どんな本を読んでるんだ……」
「えっとね、この」
苦笑しているアイデンさんに僕はごそごそとポケットの中(影)を漁る。
よし、みっけた。
「【奴隷体験記】って奴」
「とんでもないものを読んでるな」
「おもしろいよ~」
「読む分にはだろ、実際にそんな目にあったらどうするんだよ」
「え?、そんなの即効性の猛毒塗ったナイフで奴隷商に永遠の眠りを提供あそばせるよ」
「言葉を濁しても物騒だな………」
眷属の腕輪とか首輪とかなら魔王以前に、ゾンビには効かないから、まぁぶちのめす。
朗らかに笑ったアイデンさんが広場の先に進もうと足を進めた所でふいにピタリと止まった。
「………ん? 」
寄っていくアイデンさんの眉間の皺と共に後ろからガラガラと鳴り響く車輪の音…………。
「事実は小説より奇なりというのはこう言うことか………? 」
何事と思い、瞬間、体にアイデンさんの腕が回る。
「へ、えぇ?! 」
「口を閉じていろ」
呆気に取られる間もなく僕を抱き寄せたアイデンさんは突然もの凄いスピードで走り始める。
「いきなりどしたのーー?! 」
「黙っていてくれ、舌を噛むぞ! 」
「噛んだことおるから大丈夫!! 」
「よくない! 」
周りの街並みがぐんぐんと過ぎていく中、息も切らさず走るアイデンさんに、とても不機嫌な顔を露にして目打ちを打つ。
「ラグーン、いいか?、よーく耳を澄ましてみろ、よーくだ」
「え、みみ? 」
ピコピコと耳をすまし、目を瞑る。
聞こえてくるのはアイデンさんの走る靴の音、そして風を切る音に周りの建物から調理する音………最後に微かに聞こえる、声……ん? 段々おっきくなって…………。
「あーいでぇーんさまぁ~!! おまちになってえぇえ~!!? 」
え?
改めて後ろを見ればガラガラともの凄い速さでこちらに迫る馬車、その窓からひょこっと顔を出し長い髪を大変になり、もの凄いスマイルでこちらに手を振っている女子……あれは。
えーと、えーっと。
誰あれ
私は今、とても健やかに過ごしております。
「聞いてるのかラグーン……」
「あ、はい」
「その返事は聞いてなかったんだな……」
呆れたようにため息をつくアイデンさん。
対して僕は……正座してます、説教、長いです。
かれこれ、一時間弱、くどくどくど、何処からそんなに内容が浮かんでくるのか……あぁ、眠い……。
「全く……話を戻すがあまり謙虚すぎたり静かすぎたりするのはいかがなものと思うが、君の場合はもう少し静かなときと騒がしいときのバランスを取ってくれ……」
「えぇ……」
腕を組んで言ったアイデンさん、そして良くわかんない僕は首をかしげる。
「返事は? 」
「はーい」
「………まあいぃ、おいナパス」
「なに……」
諦めたようにため息をついたアイデンさんは、
今度は僕の隣で正座している青髪エルフを睨む。
「とりあえず、暫く城で研究禁止」
「は、はぁ? はぁあああ!? 」
「むやみやたらと揉め事を起こすお前が悪い……ふう、以上だ、解散」
あ、説教、終わった?
※※※
時刻はただいま午前十一時~。
足が痺れて生まれたての鹿になっている僕を見てアイデンさんがにこにこしてらっしゃるのを睨みながらただいま城門をでた僕はその前にあった下り坂を降りているのだけ、ど。
「全く……何でもうこんな時間になっているんだ………」
にこにこから一転、日が高くなった空を見て顔を覆って嘆いてる人が一名……。
「半分以上はアイデンさんのお説教で時間食ってたようなぁ………」
と言いかけてアイデンさんにじろりと睨まれて口をつぐむ、そしてあははと笑い誤魔化せばため息をつくアイデンさん。
「………仕方がない、もう少し降りていけばレストラン街に出る、そこで食事にしよう」
「はーい」
そう返事をして僕は影の翼で浮かび上がり、回りを見る。
石の堀の向こうに大きい大きい屋敷、そして敷き詰められたタイルののむこうにも似たような屋敷。
「でっかい屋敷しかないねここ」
「そうだなぁ、城を出て直ぐは地方から集まった貴族達の別荘が並んでいる、見ていて飽きるな」
「え、…………なにそれ全部別荘? 勿体ない………」
「だろう? 資金の無駄だ」
「ねー」
つまらなそうに言ったアイデンさん。
そして更に歩いていくと坂道が終わり大きなアーチがあった。
中央に噴水、花壇やベンチと寛げる広場が見える。
「そこの先がレストラン街だ」
ほほう。
広場の周りはいくつもの道に分かれて、その先におおきな建物がたくさん見える。
たくさん道があってたくさん店があり、その分きっも路地裏とかもいっぱいある。
迷いますわ。
「迷いそうだねここ」
「俺について来てくれればいい、迷ってもラグーンなら空高く飛べばいいだろ? 」
あ、そうか飛べば全て解決する……まてよ?
「なら大丈夫だ……あっ、でも」
「ん? 」
「僕の読んだ小説だと空に飛び上がった瞬間鳥にぶつかって真っ逆さまとか」
「あり得ないと思うが? 」
「落ちた先が裏路地で奴隷商に捕まって売り飛ばされるとか」
「ないからな? 一体どんな本を読んでるんだ……」
「えっとね、この」
苦笑しているアイデンさんに僕はごそごそとポケットの中(影)を漁る。
よし、みっけた。
「【奴隷体験記】って奴」
「とんでもないものを読んでるな」
「おもしろいよ~」
「読む分にはだろ、実際にそんな目にあったらどうするんだよ」
「え?、そんなの即効性の猛毒塗ったナイフで奴隷商に永遠の眠りを提供あそばせるよ」
「言葉を濁しても物騒だな………」
眷属の腕輪とか首輪とかなら魔王以前に、ゾンビには効かないから、まぁぶちのめす。
朗らかに笑ったアイデンさんが広場の先に進もうと足を進めた所でふいにピタリと止まった。
「………ん? 」
寄っていくアイデンさんの眉間の皺と共に後ろからガラガラと鳴り響く車輪の音…………。
「事実は小説より奇なりというのはこう言うことか………? 」
何事と思い、瞬間、体にアイデンさんの腕が回る。
「へ、えぇ?! 」
「口を閉じていろ」
呆気に取られる間もなく僕を抱き寄せたアイデンさんは突然もの凄いスピードで走り始める。
「いきなりどしたのーー?! 」
「黙っていてくれ、舌を噛むぞ! 」
「噛んだことおるから大丈夫!! 」
「よくない! 」
周りの街並みがぐんぐんと過ぎていく中、息も切らさず走るアイデンさんに、とても不機嫌な顔を露にして目打ちを打つ。
「ラグーン、いいか?、よーく耳を澄ましてみろ、よーくだ」
「え、みみ? 」
ピコピコと耳をすまし、目を瞑る。
聞こえてくるのはアイデンさんの走る靴の音、そして風を切る音に周りの建物から調理する音………最後に微かに聞こえる、声……ん? 段々おっきくなって…………。
「あーいでぇーんさまぁ~!! おまちになってえぇえ~!!? 」
え?
改めて後ろを見ればガラガラともの凄い速さでこちらに迫る馬車、その窓からひょこっと顔を出し長い髪を大変になり、もの凄いスマイルでこちらに手を振っている女子……あれは。
えーと、えーっと。
誰あれ
11
お気に入りに追加
1,918
あなたにおすすめの小説
使い捨ての元神子ですが、二回目はのんびり暮らしたい
夜乃すてら
BL
一度目、支倉翠は異世界人を使い捨ての電池扱いしていた国に召喚された。双子の妹と信頼していた騎士の死を聞いて激怒した翠は、命と引き換えにその国を水没させたはずだった。
しかし、日本に舞い戻ってしまう。そこでは妹は行方不明になっていた。
病院を退院した帰り、事故で再び異世界へ。
二度目の国では、親切な猫獣人夫婦のエドアとシュシュに助けられ、コフィ屋で雑用をしながら、のんびり暮らし始めるが……どうやらこの国では魔法士狩りをしているようで……?
※なんかよくわからんな…と没にしてた小説なんですが、案外いいかも…?と思って、試しにのせてみますが、続きはちゃんと考えてないので、その時の雰囲気で書く予定。
※主人公が受けです。
元々は騎士ヒーローもので考えてたけど、ちょっと迷ってるから決めないでおきます。
※猫獣人がひどい目にもあいません。
(※R指定、後から付け足すかもしれません。まだわからん。)
※試し置きなので、急に消したらすみません。
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる