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五章 そしてまったりと

しりいてえ

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初めてにしては過酷すぎる乗馬の旅を終え、体力の尽きた僕は生い茂る草むらに仰向けに沈みこんだ。


鼻を擽る細長い葉っぱに青い匂いとぬるい風………。


あぁ、このまま寝たいわ。


なんかもう、体力とか尻が痛すぎて消え失せたとか混じって色々と無理……。


「くく……大丈夫かぁ~?」

「心配してくれるならそのニヤニヤをどうにかして頂戴」

「断る」

即答………。


労いの言葉がその笑顔で消え失せちゃうんだよこんにゃろ~


「にしてもまさか行きだけでこうもへばるなんてなぁ……ちっとお前の体力を甘く見ていたぜ」

「ぐえ」


若干驚きを混ぜた声でアルさんは苦笑すると仰向けで唸っている僕に覆い被さってきた。


なに人の背中に乗ってくれてる馬鹿。

てか乗るっていうか潰されてるのと一緒だから……死ぬっ。


「どいて」

「やだね、もちっとラグを堪能させろや」

「堪能させたら僕が圧死する」

「んな簡単にするかよ」  

体重はかけられてないからそこまで負担ではないけどアルさんの面積がヤバイ……。

頭の横にアルさんの頭があるから息づかいとか声が直に耳に来てちょっと鳥肌が……、いや、嫌って意味ではないけどなんだろうこのむずむず。




てかこの人重いな。


「アルさん体重何キロ? 」

「ん~? 今年計った時は確か、126キロだったな?」

なんとこの人3桁……!?


「アルさんデブだね」

「あぁん? 俺に脂肪なんてついてると思うかぁ?」

えぇー?。

うーん、風呂場で見る辺り(一緒に入ってる)


「何処をどう見ても筋肉しかないね」 

「だろぉ?」

腹筋バキバキだし腕の筋肉とか僕を片手で上げられるくらいあるからヤバイよこの人、

しかも筋肉に無駄がない格闘家体型の辺りムカつく……。


「だろって言われても重いことには変わらんからどいてよ」

「…………ちぇー」

渋々と口を尖らせたアルさんが退いたことにより息苦しさから解放された僕、息を吸いながらのそのそと起き上がる。


「まだ尻ちょっと痛いけど、まぁいいや……ひゃっ!? 」


溜め息をつきながらその場に座ったラグーンだが、すぐに胡座をかいたアルギスの手が両脇に差し込まれ悲鳴をあげる。

そしてすぐに引っ張られ落ち着く先はアルギスの腕の中。


「おいこら」

「ん~? 」

「ん、じゃないよなにしてんの」

「嫁の尻を労ってるんだ、揉まないだけ良いだろう」

そんなどや顔で胸張られてもねぇ……。


「ただのエロ親父にしか見えないよ 」

「誉め言葉か 」

「ちゃう」

何処をどう見ればそう取れるのだか………。

まぁいいや、アルさんの膝の上にいるのだから、この人を天然の座椅子として使ってもいいだろう。


そう結論付けた僕は少し固めのアルさんの胸に背中を預け息を吐いた。



ふむふむ、座り心地は、固いけど中々のもの、そしてアルさんが優しく頭を撫でてくれるのもなお良い。


………胸とか触ったりしてるけど……まぁ我慢しよう、股間はだめ、カバンでガード。




なんとなく、僕とアルさんとの間にまったりとした雰囲気が漂う、改めて周りを見渡し僕は目を丸くした。


ここは何処かの森の入り口みたいな所。


地面には草むらができ、風が吹けばそれが揺れる、耳をすませば森の中から鳥や獣の鳴き声がギャーギャーと聞こえる。

遥か遠く、目を凝らせば草木の少ない広野の先にセンブレル王国のお城が小さく見える、多分。


静かすきず、煩すぎず、そして良い景色が見えてなおかつ近くには良い散歩道がある………好みの場所じゃないかねこれは……!


「なあラグ~」

おっと、興奮を抑えて抑えて………。


「なぁに? 」

「聞くけどよぉ」

「ん~? 」

なんぞな?


「ラグは今楽しいか? 」

………ん?


「楽しいよ? 」

何気なく言われた事にキョトンとした顔で答える。


アルさんとこんな素敵な場所に来られたんだもの、楽しくないわけないじゃん。


「そか」

なにその素っ気ない返答……、まぁいい寛ごう……。


「なぁラグ」

今度はなんだい。


「なにさ」

「今幸せか? 」

………幸せか? ………哲学?

違うか………。


うーん、幸せ………幸せ、幸せ?


「わからん」

「あぁ? 」

「まずそれ以前に、僕にとっての幸せがなんなのかよくわかんないんだよねぇ、」

「わからねぇだと? 」

頭をなでこなでこしている手を捕まえてそれを僕のお腹に持っていきふにふにと遊ぶ。


「うん、何時どんなときがしあわせなのかね? 美味しいもの食べたとき? 欲しかった物が手に入ったとき? 学校のテストで良い点をとったとき? ………さぁねわかんない、その時の感情を表すとすれば【楽しい】になる」


「………楽しいは幸せじゃねえのか? 」

遊んでいた手が動いて僕のお腹をむにゅりとつねる。


やめい。


「僕にとっては違うかな~、個人的に楽しいは一時の感情、幸せ永遠に続く感情って解釈してるからね」


「んで今は楽しいと? 」

「だね、後で森歩こう」


「おう、いやちげえ、話そらすな………、普通楽しいと幸せは一緒じゃねえのか?」

「違くはないと思うけど………幸せと感じる前に嫌な記憶やマイナスの感情が入って全部うやむやになっちゃう、普通の人なら幸せって感じるだろうけど、僕にとっては一時の楽しいは娯楽として終わっちゃうんだよね………」

今、良い点とれたけど次のテストではどうなるか?


手に入った物をみて嬉しいと思う反面、次はこうはいかないんじゃないか、もしくは失くしてしまうのではないかと不安になる。


今、幸せかもしれないけど、いつかそれが壊れるかもしれない。


そう思えば思うほど心と体が成長して考えることができてくるほど単純に喜べなくなっていく。


しかも折角連れてきて貰ったのにこんな暗い話をする僕……。


はぁ……。


「こんな自分が嫌になるなぁ………」

根暗なのは自覚しているけどねぇ。


「馬鹿だな」

心のなかで自虐してはため息をつくとアルさんは苦笑して僕の頬を撫でる。



「自分を貶すようなこと言うもんじゃねえぞ、それにな、そんなラグに惚れた俺はどうなるんだ? 」

「えー? 」

痛いところ突いてくれるね


「なぁラグ~、ラグから見て俺はどんな男に見える? 」

どんなって、そりゃあ。


「でかくて結構融通が効かない所もあるけど基本的に僕の嫌な事はしないしこんな怪しさ満点の僕に対してよくしてくれるいい人、かな?」

「ボロくそに言ってくれるじゃねえかこのやろ……落ち込むぜ?」

「にしちゃあ嬉しそうじゃん?」

ここからじゃ見えないけど確実に笑ってるよねこの人。


「ククッ、んな事面と向かって言われたのは幼馴染み以外初めてだからな」

そりゃあアルさんみたいな顔面凶器前にして言える人なんて早々いないからね。


「事実を言ったまでだ」

「なんだとお?」

あ、やばい、アルさんの手が僕の脇に移動してる、


「………擽るのは勘弁してください」

思わず敬語になったけど、今この状況だと負けるの不可避だもの。


「おっし、いいだろう」

ほっ、良かった………… 。


「とでも言うとおもった か?」

「うぇ?!」

「ククッ、冗談だ」

え、それは信じてもいいの? え? やだよ? やめてよ?


「心臓に悪いからやめて…………」

「善処する」


油断も隙もあったもんじゃない………。


「なあラグ」

「今度はなに」

今日これ多いな……。


「俺はな、お前を幸せにするからな」

「うん、うん? 」


「幸せがわからねえならどんな時でも楽しいと思えるようにしてやろう、旨いもん一緒に食ったり休暇使ってお前が行きてえ所にいったりな、今みてえに二人でまったりしたり、時間はいくらでもあるんだ、ラグが心開いてくれるまで俺は頑張るぜ ?」

………なにそれ、


「なんか口説かれてるみたい……」

「口説いてるんだが? 」

「えっ」

そんな事恥ずかしげもなく言われると耳が熱くなるじゃないか……


「耳真っ赤になってやんの、ククッ」

一々刺激してくるな!。

と耳つっつかないで!


「照れてんのかぁ?」

「照れてない!! 」

あーもう!。


「アルさんなんて嫌い!」

思わずぺちんとアルさんの手を叩くけど、効果はある筈もなく堪えきれず笑い声をあげたアルさんに後ろから抱き込まれる事になる。


そしてアルさんは真っ赤に染め上がった僕の耳に口を寄せると言った。


「んな虚勢張ってねえで素直になれや……な? 」

そのバリトンボイスやめい……!


えぇいやられっぱなしは駄目だからここは………!!。



顔を真っ赤にさせた僕だが、反撃の構えをとろうと頭を前に出す。


「お?」

後方で疑問の声が上がるがそれに構わず前に出した頭を勢いよく後ろに持っていった、


「ギルテイ!! 」

ゴツ!!


「フゴ!!」

そう、少し形は違うがいわゆる頭突きである、


頭突きが見事にヒットして鼻を抑えたアルさんは目を閉じて眉間に皺を寄せる。


だが鼻血すら出さずものの数秒で復活したアルさんは悪どくニヤリと笑った。


「このやろう……やりやがったな……?」

あれぇ?、おかしいな?。


後ろから冷気がくるぞー


ガシッ!!


「おうふ」

目を丸くして固まった僕はは寒気から一転、冷や汗をたらすと恐る恐る自分の脇腹を見る。




まぁ、なんと言うことでしょう……。


さっきまで頭を撫でていたアルさんの手が不思議な事に、僕の脇腹でわきわきとしているではありませんか………!


そして壊れた人形の如く振り替えれば良い笑顔をしたアルさんと目が合い……。


「お仕置きが必要だなぁ………?」


(´・ω・`)



「ちょ、や、やめ! ひ、や、#ω"!・☆$↓☆!〇ω"・・ω× !!!☆(声にならない悲鳴☆)


数分後、にやにやと満足そうに笑うアルさんの腕の中、ぐったりとした僕は、あの、疲れた………。



「ふ……愛してるからな、ラグ………嫌って言っても離してやるもんか」












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