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三章 新たな生活

夢? いいえ現実です

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微睡みの中、ゆっくりと目を開ければ金色の刺繍が施されたレースの天幕。

ふかふかとしたベッドは気持ち良く、枕はちょっと固くて暖かい…………暖かい?


そういえばやけにお腹部分が重いような………。















夢にときめき、恋にうららかな女性の皆さん、一度はこんな夢を抱いたことは無いだろうか。


朝起きたら最愛の人に抱き締められてクスリと笑って目覚める恋愛ロマンス……………。






そんな、そんなロマンスが実現した現実は、甘くない…………


朝起きて抱き締められてクスリと笑う?

こんなのアルさんの体格がよろしすぎて抱き込まれてて暑苦しいし息苦しい。


起き上がる時にぶっとい腕が邪魔でどかすの面倒だしどかしたと思ったら腰に手が回ってきて起きたときの体制に逆戻りだわあげく余計抱き込まれて抱き枕にされるおまけ付き……………。



一種の拷問だぞこれ…………気持ちのいい朝のはずなのに既に疲れる案件だよこれ。

布団からでようとあがいていた僕はパタリと体から


女性の皆さんや………現実は非情だ…………。



フレンチでフルーティーな朝なんて望めない…………。


そもそも今って朝なの?

時計、体制動かせないせいで時計が見えない。


…………いや、よくよくみれば日が大分上ってるし遠くからガヤガヤとなんか聞こえるからお昼回ってる…………えらい朝寝坊になってるよこれ。



「ちょっとアルさん、起きて」

さっきからがーがーと口大きく開けていびきかいているアルさんの頭をポンポン叩いて起こそう試みてはいるのだが効き目が全くと言っていい程起きる気配がない。



「…………仕方ないなぁ…

完全に諦めた僕はアルさんに背を向ける体制に変え、自分のステータス画面を開いた。


無機質なガラスのようなパネルは上から自分のステータス、装備、メール、そして今は何故か無いがゲームの頃ならあったログアウト。

最後の物だけ抜かして系三つと見やすくなっている。



そして一番上にあるステータスを押すと下の二つが消える代わりにその部分に特殊スキル、スキル、技能、の三つがでてくる、

 そのスキルには今僕が使える能力の説明と、その技を押すことによって実際にその能力が行使できると言うシステム(だと思う)。


アルさんとの生活があったから最近はこのパネルほとんど見てなかったんだよね、だから改めて確認しようかなと思うんだけど………………。



「それが今この状況なのは複雑だなぁ………」

アルさんの拘束から逃れられないから暇潰しにパネル調べるなんて……………。



考えても仕方ないし、いいや……………。

気を取り直して技能欄の影使いと書かれた場所を指で叩く。

影使いは影を操る能力。



こっちに来て影使いとして使用した技は影と影を扉で繋ぐシャドーゲートと影と同化する影化の二つ。



その他に、影の形を自由自在に変えられる影操作。


もう一人の自分を造りだす、ドッペルゲンガー


造りだしたもう一人の自分の場所とと僕の場所を入れかえるシャドーチェンジ

それに派生した影武者、で最後にあまり使ったことないけど影の喜劇と呼ばれる中二病の固まりを合わせたような技の系七つ……………。



ちょっと少ないな。


普通特殊技能とか特別なものはもっと数あってもいいはずなのにこの数は……………。


ゾンビ倒した事で僕のレベルは50、まだまだ低いからだね、うん、レベル上がってけば増えるよねきっと。



もう一つ、運営から魔王になってと言われたときに貰った特殊技能も基本的に技が三つくらいしかないのもきっと低レベルな僕が悪いんだよね…………。



うん、言ってて悲しくなって来ちゃった……………。

でも少ないとは言っても色々な面で使えるものばかりだからいいよね。


例えば今この状況だと。


「【ドッペルゲンガー】」

ドッペルゲンガー_の項目を押し、声を潜めて唱えれば部屋の隅の薄暗い所から音もなく真っ黒な人影が現れる。

色こそ真っ黒だが、姿形は僕と同じ、そしてお次


目当ての技の項目を押し、僕は指を鳴らした

「っう……!?」


シャドーチェンジと唱えようとした瞬間、僕の視界がグニャリと曲がり、目の前には上半身裸で眠るアルさん。


そしてそのアルさんの腕の中には真っ黒な影。



「………とりあえず脱出成功だね」

目を開けた状態でこれやると酔うな……今度から気を付けよう………。



目腕を組んで頭の上に持っていき思い切り伸ばし長時間同じ体制を取って凝った体を伸ばす。



ドッペルゲンガー解いておこう、


こきこきと首を動かしパチンと指を鳴らせばアルさんが抱いている影がそこに何も無かったかのようにふっと消えて無くなる、



そして僕のいた場所が何もなくなり、アルさんの腕がパタリと落ちたその瞬間。

直前までいびきをかくほど寝入っていたはずのアルさんのおめめがパチリと開いたかと思うとガバリと勢いよく起き上がる。


「………あぁ? 」

そして部屋の隅で目を丸くしている僕と目が合うと眉間にシワを寄せて大変ご立腹な声を出した。


起き抜けにメンチきるってなんなのあなた………、てそんなこと考えている暇ないや………。


「え? 」

え、蛇ににらまれた蛙感。



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