上 下
12 / 182
一章 森

やりすぎた?

しおりを挟む
調理スキルをフルスロットルで活用、そして頭に浮かぶ最短、最善のレシピとその進行手順、その全ての行程を終えてかかる時間がでかでかと表示される。


後はすることは簡単、そのレシピ通り心を無にして、手早く作業をこなす。


十五分後、後は煮込んだり余熱を入れるだけになったら、アルギスさんが湯船につかる音を耳にいれながら次の作業に移す。



それはあの人の服作り。

あいにく、この家やバッグの中に入っている服や装備する防具には2メートル近いアルギスさんにぴったりのものは無い。

だから、迅速にそして丁寧で完璧な仕上がりの最高の服を今、十分以内に作ってやろう!


レシピは「鍛冶技術」から引っ張りだし、あの人の背丈や肩幅等の重要な部分はあの人が来ていたボロボロの服を参考に。


用意する物は布と針と糸、のみ!


ただ、服を造るために意識全てを手元に捧げる……さぁ、開始よ。








それから20分程して一式の服が出来上がり、丁度お風呂から上がったアルギスさんに今作りました! と自信満々に見せた。


「……は? 今作ったのか? 」
「ええ、そうですよ? 頑張りました」

作り終えた時首とか腰がすっごいいたかったよ……。


「……俺の着てた服は? 」
「水につけて明日洗いますよ」
「…………」

アルさんの服は汗まみれで汚かったしでっかくて重い鎧は血と土がこびりついてたからこれじゃ僕的にもアルギスさん的にも最悪だろうと思って現在洗剤につけております。


早速ほかほかとしているアルギスさんに着てもらえば予想通りサイズはぴったり、やったね!


「……すげぇな」


え、なにその反応……なんか駄目だった?


「何かご不満な点が御座いましたら是非お申し付けくださいね? 」
「口調が固い通り越してどっかの店員みたいになってるぞ……」
「あ、すいませんつい(ゲームの時の)癖が」

作った服や鎧を他のプレイヤーに売るときにいつの間にかついたこのセールスマンモード、地味に気に入ってるんだよね……。


でも不満はないっぽいけどなんでそんな微妙そうな顔……ん?



あ。


考えてみたら 僕のこの力って異常じゃね?


レベルにしたら46と低いけど、それに対してスキルの数は生産系が6割、補助系が1割、特殊能力が3割、スキルの合計が100以上もある…………しかも僕は人族よりも魔力のある魔族だから。

見た目人間だけど特殊能力とか一般的に考えたら人間業じゃないな…………。

だってほら、日本でいきなり時止めたり瞬間移動すれば騒がれるし最悪引かれる……。


これってばれたらやばい?


うんやばいね。



「…………とりあえず服を全部着てくださいな」

「お、おう」

上の部分の服は着ているけどズボン、それもパンツがまだだよこの人……。


アルギスさんのアルギスさん……でかい


眼福やわ~……………………おいこら違う。













きつね色に美味しく揚げた唐揚げ、じゃがいもとかが余ってたから肉じゃが、お腹の事も考え里芋やなめこの味噌汁、ご飯……はないから代わりに食パン。


どれもこれも僕一人じゃ食べられないような量を作って無造作にでかいお皿に盛ってみたよ。

いつもより多く、豪勢にテーブルに並べられた今夜の夕食を挟んで僕とアルギスさんが椅子に座る。



「さぁ食べましょうアルギスさん」
「さっきのあだ名呼びはどうしたんだ? 」
「あぁ、忘れてた」
「おいおい……んじゃ、遠慮なく頂くぜ……」

そう言ってフォーク手に取ったアルさんのめがギラリと光ったような………。









ふと、窓の横についている四角い時計を見るとそろそろ8時を過ぎていた、

どうも皆さん、異世界生活何日目かもう忘れたけどラグーンです。


現在、みるみる内に消えていく唐揚げの山をおかずに味噌汁を飲んでおります……いやあの、なんかすごい顔でアルさんもぐもぐしてるからついつい……ね?


自分のぶんはきちんとキープしてるからのんびりすごい勢いで食べてるアルさんを眺めよう。




すごい食べるなぁ……、


「美味しいですか? 」
「おう!! 」

そりゃ良かった。


頑張って作ったものを喜んでくれるってのは嬉しいね。

そして少しして一通り料理が無くなった頃、アルさんは満足そうに口を拭いた。


「ふう……、ちょっと落ち着いた」
「……ちょっと? 」

……あれで?
少し呆れた目でアルさんを見ればアルさんは口元を吊り上げる。


「まぁ欲を言えばあの二倍は欲しいが、流石に駄目だな」

いや駄目じゃあないけど……。


「たくさん食べますね」
「いつもはもう少しマシだぜ? ただここ最近全然食ってなかったから……わりいな」
「いえ、構いませんけど」
「ならよかったぜ」
にっと笑顔を浮かべたアルさん。……その笑顔に何故か圧を感じる。


「いやな、ちょっとこれから世話になるんだからきちんと話さねえといけねえなと思ってな、いいか? 」
「………………そうですか?」
「おう、決めたんだ」

い、いきなりどうしたこの人。

「晩飯に風呂と世話になって悪いが聞いたことに答えてくれるか? 全部?

へ?全部?


「…………答えられる範囲内でなら」
「いいや、全部、余すことなく、答えてくれ」

え~何故……しかも何故言葉区切って言うの。


「な、なんでですか……………」
「なんでって今お前と俺がいるこの森、ここ魔物のの平均ランクは最高のA、あの魔大陸にも引けを取らねえ場所で俺らみてえなやつでも余程のことがない限り近づかねぇ………なんでここに住んでるんだ? 」


………危険な所って言うのはゲームと変わってないんだね……いや、て言うか危険な場所だからここを選んだんだよ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

使い捨ての元神子ですが、二回目はのんびり暮らしたい

夜乃すてら
BL
 一度目、支倉翠は異世界人を使い捨ての電池扱いしていた国に召喚された。双子の妹と信頼していた騎士の死を聞いて激怒した翠は、命と引き換えにその国を水没させたはずだった。  しかし、日本に舞い戻ってしまう。そこでは妹は行方不明になっていた。  病院を退院した帰り、事故で再び異世界へ。  二度目の国では、親切な猫獣人夫婦のエドアとシュシュに助けられ、コフィ屋で雑用をしながら、のんびり暮らし始めるが……どうやらこの国では魔法士狩りをしているようで……?  ※なんかよくわからんな…と没にしてた小説なんですが、案外いいかも…?と思って、試しにのせてみますが、続きはちゃんと考えてないので、その時の雰囲気で書く予定。  ※主人公が受けです。   元々は騎士ヒーローもので考えてたけど、ちょっと迷ってるから決めないでおきます。  ※猫獣人がひどい目にもあいません。 (※R指定、後から付け足すかもしれません。まだわからん。)  ※試し置きなので、急に消したらすみません。

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?

「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。 王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り 更新頻度=適当

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

処理中です...