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……おなかすいた

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「…………」
「…………」


暫しの沈黙。

にっこり笑っているぐすたふとぎょっと目を剥いている僕。


好き……愛してる、男が異性に対して贈る最上の愛情表現……。

同性だし軽い気持ちで言ったけど……ぐすたふの声的に冗談で言ってるとは思えない。

固まる僕に嬉々とした笑顔から徐々に怪訝な顔に変わったぐすたふに思わず視線を外し手元の肉にかじりつく。

「ニール……?」
こらえきれなくなったのかぐすたふが名前を呼ぶタイミングで顔を上げた。

「干し肉おかわり」
「おいまて」
聞かなかったことにするのが賢明だな、うむ。
悲しい事故だ、うむうむ。

「焼いた干し肉、正義」
「違う違う……聞いたよな? 俺に聞いたよな? 」
「……………」
「黙るな! あからさまに目を剃らすんじゃないこっち向け! 」
最もな文句を回避しようかなと……無理そうだね、
仕方なく僕は口をとがらせる。

「……だってー、自分で自分を追い詰めた気がしたから緊急回避しようかなと」
「出来てない……全然出来てない」
僕的にはさっきの台詞のインパクトがやばい。

真顔で肉を枝に刺すぐすたふに言われ苦し紛れに僕は笑った。

「だってノリで愛してるって言って同じ言葉が帰ってきたらびっくりするじゃん」
「そうだな」
うんうんと頷くぐすたふを見て僕は話を進める。

「そしたらよし、話剃らすかってなるでしょ」
「なるな」
「これだよ今やってるの」
「……やっていることは間違っていないが、うやむやにするのは許さねえ」
「許してよ」
「なにいってんだ、誤魔化しも遠回しも無く言うぞ、俺は 」
「えー……」
機嫌良く言い切ったぐすたふは実に凛々しい……。

「肉だ」
「ありがとう……」
追加の焼き干し肉を貰い、息を吹き掛ける。
ふー、ふー、あむ……。

むぐ……美味しい。

む?


「…………可愛い」
「はふて?(なんて?)」
「食ってから喋ろ」
「はひ」
言われた通り食べてから考えよう。




※※※

熱々の肉を食べ、クッキーにと美味しい紅茶もゆっくり頂いていたときそれは起こった


ぎゅるるる……。


満腹な胃袋とは裏腹になるお腹。


「…………あら」
腹ごしらえも済み、後は毛布にくるまるだけと言う時に少し高めの音。



「なんだ? ……ニール?」
キョロキョロと暗闇を見ていたぐすたふは何もいないと分かると、今度は確信をもった目で僕を見ると瞬きを繰り返し膨れた僕のお腹に視線を移す。



「……干し肉5枚」
「ぐすたふ」
「クッキー十枚に紅茶三杯」
「ちょっと?」
「いやー、あんだけ食ってまだ足りねえか、そうかそうか」
「喧嘩売ってる?」
「いや、断じて笑ってるわけじゃねえぞ? ただ良く食べるなと感心しただけだ、からかってるわけじゃねえ」
フォローを付け足すぐすたふはちょっと滑稽だけだ……今回だけは許そう。

そんな事を気にしている余裕はないのだ。


「おなかすいた」
「……マジで…?」
ほくほくとした顔はどこへやら、口を一文字にお腹を抑えればぐすたふは身を乗り出す。

「マジで……ねぇぐすたふ」
「おう、どうすりゃいい」
毛布片手に隣に来たぐすたふが僕の肩に手を置き顔を覗きこんできた。

よーしそれじゃあ。

その場で立ち上がり、火に揺れ見えるぐすたふの目を見つめ言った、


「それじゃあ寝ておくれ」






穏やかな夜が過ぎていく……(?)。










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