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ヤンデレかしら
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「………肝が冷えた」
「すいません」
「逃げたのかと思った」
「……すいません?」
「……おい」
「すいません……」
「とりあえず謝っとけばいいと思ってるだろう」
「…………はい」
「はいじゃねえよ」
鬼みたいな男の人に初めの言った台詞が゛顔色良くなりましたね゛
当たり前だけどそりゃあ睨まれるよね、うん。
即座に謝ったは良いが男のご機嫌は斜めなようで無言であの部屋に連行されて早々、男の膝の上淡々と愚痴を聞いて……あ、なんでもないです心読んだみたいに睨まないで。
……何故僕は膝の上にいるのだろうか。
逃げないためにならそれこそ紐で繋いでおけば事足りる筈……。
「グスタフだ」
「はい?」
とりあえず謝っていたことを簡単に見破られ若干気まずい気持ちになっていると、おもむろに男は親指で自分を差すと言った。
「俺の名前だ、覚えろよ」
「……えーと」
「グスタフ」
「ぐすたふ……さん」
「敬称はいらん」
「ぐすたふさま」
「いらんて言ってるだろ」
「ぐすたふ」
「そうだ……今後はそう呼べ」
「はぁ……」
「………さっきの良い返事はどうした」
そっと目線をはずして言えばじろりと見られ気まずくなる。
「…………いや何も」
「あるだろ、言ってみろ」
えー……んん、まぁこれくらいなら。
「…………会って二日でそれは早くないですかね」
「いいや、早ければ早い方がいい」
「さい、ですか……僕はこれからどうすれば」
「ここに住むんだ」
いいですかと続けようとしたところで食い気味に言った男……ぐすたふに目を丸くする。
「……すむ?」
……ん?
「ああそうだ、俺はお前を手放せんからな、観念しろ」
「……なんで?」
首を傾げ言えばぐすたふは真っ直ぐな目で僕を見る。
「俺はな、眠れねぇんだ」
「……寝てましたけど」
ぐっすりと。
「あぁ寝てた、寝れた、そこが重要なんだ……三年前俺は……魔王の呪いを受け眠れなくなった」
「呪い」
嫌な響きだ。
「疲れようが、夜がこようが、薬を飲もうが他の呪いをかけようが気絶すら出来ず……二十四時間意識だけが鮮明に続く」
「あらま」
「他国から色々と取り寄せて片っ端から使っても眠気一つ起きやしねえ……寝れねえ」
「それはまた恐ろしい」
眠らない奴は即刻死すべしだけど逆に寝たくても眠れない人は……ね。
真剣に語っていたぐすたふはそこまで言うとくしゃりと顔が歪む。
「眠らなくても大丈夫だと余裕を保っていたが一年、二年、今年で三年……駄目だ、駄目なんだ……夜が来る事が恐ろしい、時間の進みが酷く遅く感じる、……他人が眠る姿が妬ましい……、気がおかしくなりそうだ、魔王の呪いは強大で巫女でも解けねぇ体はだりい、休むことの出来ない頭は痛え……長い夜を何度も過ごして目に染みる朝日を何度も拝んで……寝ない分鍛練に費やせると思ったが今はもう……だるくてだるくて……ただ辛くて、心の支えはねえ、耐える耐えれないじゃねえ、嫌だ、眠りたい、ただベッドに沈んで体を休めて安らぎを… 得たい」
震える声で、辛そうに言った内容は……酷く切ない。
夜は長い、とても、とても。
眠れない中ずっと星空を眺めるというのはたまになら良いが年中は酷い
「ここ最近は妬みだけじゃ収まらず、見る者全員恨むほどに俺は……限界なんだ何でお前は意識を手放せるんだと行き場のない怒りがつのる……大の男が情けねえだろ? 三年前は英雄ともてはやされてたんだぜこれでも はぁ……今はただ、眠れりゃいい、寝床で横になって気づいたら朝になってる生活に俺は戻りたい、それが無理ならいっそ……殺してくれ、そう思ったさ」
「……僕と言う魔族にすがるほど?」
「あぁ、そうさ…!前はこの屋敷にも使用人がいたが全員追い出した、夜そいつらが眠る姿を見ると衝動的に叩き切りたくなってな、くくっ、手遅れだろ?」
「……やだ怖い」
ぽつりと呟けば、ふいにぐすたふは口を綻ばせる。
「俺だって怖いさ……だが、どういうわけか知らねえが坊主、お前に撫でられるとあっさりと俺は……眠れる」
「はぁ……」
「眠れる……寝れるんだぜ? くくっ」
噛み締めるように言い笑うぐすたふは僕の頬に手を添える。
「坊主が魔族じゃなけりゃ……なんなら女だったら最高だったが……んなもんどうでもいい、……坊主、いくつか聞いていいか?」
これまた張りつめた空気を出したぐすたふに姿勢を正す。
「なんでしょう」
へいへい。
「お前、子供はいるか?」
「いません」
「結婚は?」
「してません」
「好きな奴はいるか?」
「いません」
「あの森に大事な奴は」
「大事……特別」
ふむ。
「いるんだな? 誰だ、言え」
「いや……大事……んー?」
「言え」
怖いか押したぐすたふがただえさえない距離を更に詰めてくる。
「一緒に暮らしてた……熊の親子……?」
「………くま」
「くま」
割りと真面目に言ってるんだけど……なんで目を丸くしてるのぐすたふ……あ、笑った。
「なんだ、そうか、ならたまに遊びに行けばいい」
「……んー?」
どう言うこと?
瞬きを繰り返し分からないでいると、僕のお腹に頭を押し付けたぐすたふは掠れた声を出した。
「なぁ坊主、お前の望む贅沢もやりたいことも全部俺が叶えてやる、ここが嫌なら森にだって家を……だから、だからどうか、俺とずっと……ずっと、一緒にいてくれ」
「……エェ?」
すがり付く。
その言葉が相応しく必死な顔で僕に言い逃がすまいと僕の両手を握るぐすたふ……。
どう反応を返せば……あの、その。
重くない?
「すいません」
「逃げたのかと思った」
「……すいません?」
「……おい」
「すいません……」
「とりあえず謝っとけばいいと思ってるだろう」
「…………はい」
「はいじゃねえよ」
鬼みたいな男の人に初めの言った台詞が゛顔色良くなりましたね゛
当たり前だけどそりゃあ睨まれるよね、うん。
即座に謝ったは良いが男のご機嫌は斜めなようで無言であの部屋に連行されて早々、男の膝の上淡々と愚痴を聞いて……あ、なんでもないです心読んだみたいに睨まないで。
……何故僕は膝の上にいるのだろうか。
逃げないためにならそれこそ紐で繋いでおけば事足りる筈……。
「グスタフだ」
「はい?」
とりあえず謝っていたことを簡単に見破られ若干気まずい気持ちになっていると、おもむろに男は親指で自分を差すと言った。
「俺の名前だ、覚えろよ」
「……えーと」
「グスタフ」
「ぐすたふ……さん」
「敬称はいらん」
「ぐすたふさま」
「いらんて言ってるだろ」
「ぐすたふ」
「そうだ……今後はそう呼べ」
「はぁ……」
「………さっきの良い返事はどうした」
そっと目線をはずして言えばじろりと見られ気まずくなる。
「…………いや何も」
「あるだろ、言ってみろ」
えー……んん、まぁこれくらいなら。
「…………会って二日でそれは早くないですかね」
「いいや、早ければ早い方がいい」
「さい、ですか……僕はこれからどうすれば」
「ここに住むんだ」
いいですかと続けようとしたところで食い気味に言った男……ぐすたふに目を丸くする。
「……すむ?」
……ん?
「ああそうだ、俺はお前を手放せんからな、観念しろ」
「……なんで?」
首を傾げ言えばぐすたふは真っ直ぐな目で僕を見る。
「俺はな、眠れねぇんだ」
「……寝てましたけど」
ぐっすりと。
「あぁ寝てた、寝れた、そこが重要なんだ……三年前俺は……魔王の呪いを受け眠れなくなった」
「呪い」
嫌な響きだ。
「疲れようが、夜がこようが、薬を飲もうが他の呪いをかけようが気絶すら出来ず……二十四時間意識だけが鮮明に続く」
「あらま」
「他国から色々と取り寄せて片っ端から使っても眠気一つ起きやしねえ……寝れねえ」
「それはまた恐ろしい」
眠らない奴は即刻死すべしだけど逆に寝たくても眠れない人は……ね。
真剣に語っていたぐすたふはそこまで言うとくしゃりと顔が歪む。
「眠らなくても大丈夫だと余裕を保っていたが一年、二年、今年で三年……駄目だ、駄目なんだ……夜が来る事が恐ろしい、時間の進みが酷く遅く感じる、……他人が眠る姿が妬ましい……、気がおかしくなりそうだ、魔王の呪いは強大で巫女でも解けねぇ体はだりい、休むことの出来ない頭は痛え……長い夜を何度も過ごして目に染みる朝日を何度も拝んで……寝ない分鍛練に費やせると思ったが今はもう……だるくてだるくて……ただ辛くて、心の支えはねえ、耐える耐えれないじゃねえ、嫌だ、眠りたい、ただベッドに沈んで体を休めて安らぎを… 得たい」
震える声で、辛そうに言った内容は……酷く切ない。
夜は長い、とても、とても。
眠れない中ずっと星空を眺めるというのはたまになら良いが年中は酷い
「ここ最近は妬みだけじゃ収まらず、見る者全員恨むほどに俺は……限界なんだ何でお前は意識を手放せるんだと行き場のない怒りがつのる……大の男が情けねえだろ? 三年前は英雄ともてはやされてたんだぜこれでも はぁ……今はただ、眠れりゃいい、寝床で横になって気づいたら朝になってる生活に俺は戻りたい、それが無理ならいっそ……殺してくれ、そう思ったさ」
「……僕と言う魔族にすがるほど?」
「あぁ、そうさ…!前はこの屋敷にも使用人がいたが全員追い出した、夜そいつらが眠る姿を見ると衝動的に叩き切りたくなってな、くくっ、手遅れだろ?」
「……やだ怖い」
ぽつりと呟けば、ふいにぐすたふは口を綻ばせる。
「俺だって怖いさ……だが、どういうわけか知らねえが坊主、お前に撫でられるとあっさりと俺は……眠れる」
「はぁ……」
「眠れる……寝れるんだぜ? くくっ」
噛み締めるように言い笑うぐすたふは僕の頬に手を添える。
「坊主が魔族じゃなけりゃ……なんなら女だったら最高だったが……んなもんどうでもいい、……坊主、いくつか聞いていいか?」
これまた張りつめた空気を出したぐすたふに姿勢を正す。
「なんでしょう」
へいへい。
「お前、子供はいるか?」
「いません」
「結婚は?」
「してません」
「好きな奴はいるか?」
「いません」
「あの森に大事な奴は」
「大事……特別」
ふむ。
「いるんだな? 誰だ、言え」
「いや……大事……んー?」
「言え」
怖いか押したぐすたふがただえさえない距離を更に詰めてくる。
「一緒に暮らしてた……熊の親子……?」
「………くま」
「くま」
割りと真面目に言ってるんだけど……なんで目を丸くしてるのぐすたふ……あ、笑った。
「なんだ、そうか、ならたまに遊びに行けばいい」
「……んー?」
どう言うこと?
瞬きを繰り返し分からないでいると、僕のお腹に頭を押し付けたぐすたふは掠れた声を出した。
「なぁ坊主、お前の望む贅沢もやりたいことも全部俺が叶えてやる、ここが嫌なら森にだって家を……だから、だからどうか、俺とずっと……ずっと、一緒にいてくれ」
「……エェ?」
すがり付く。
その言葉が相応しく必死な顔で僕に言い逃がすまいと僕の両手を握るぐすたふ……。
どう反応を返せば……あの、その。
重くない?
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