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シャルルは知っている

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「なんでそう言う残酷なことを今まで行っていたかってことと、
誰がこの大量殺人に加担、協力したのかだが、簡単にいえば、
女性の永遠の悩み、年齢とともに肌が衰え自分の美が失われると言う、
恐怖心が原因で残酷行為を行っていたらしい
女であるシャルルなら解らんでも無い理由かな」

シャルルは舞台の上で、只(ただ)、真剣にペトルの話しを聞いていた。

「それもこれも、マーガレットの話しではジュリアスの為らしいとか、
ジュリアスが何時(いつ)でも帰って来た時に、
彼に相応しい以前と変わらない若々しさと美貌で迎え入れたかったとか、
彼女なりの涙ぐましい努力ってヤツだが、
地下の巨大な拷問部屋の奥に堆(うずたか)く重なりあっているカスナ国の農民の娘なり町民の娘の変わり果てた屍を見付けて見ていると、
そんな理由なんて何の効果もないけどな」

ペトルはこのカスナ城で起きたマーガレット妃による猟奇的若い娘大量殺人事件をうんざりした感じで俺たちに、
特にシャルルに言い聞かせるように話した。

「まさかな、あの忌(い)まわしい?
10年前の大規模な革命に比べたら、こんな事件等、
何処(どこ)かの頭がイカレタ女の若返りを夢想した馬鹿事件で片付きそうだが、
どうもそうはいかないらしい。
と言うのも、これもそれも根っこは、悪の種ってのはキサナ国のあの娘の行為に行き着く、
そうだろうシャルル、あなたは色々と知っているんじゃないのか?」

ペトルは今では明らかにシャルル一人に向かっての口撃となった。

「私は、自分でも言うのもなんだが、こんな風にこのような、
こうも自分の祖国なり、他の国、
今までジュリアスに仕えながら10年近くもいたキサナ国の衰退、
そして、キサナ国の北に位置するクレヤ国の衰退さを、
こんな感じでなにかの語り部みたいに話す役柄でも無かったし、
実際、私は道化のように物語前半でもイイ、
なんだったらあの盗賊達とのお粗末な討伐隊との混乱時に盗賊の放った矢によって、
あの時点でこの場から退散でもおかしくないのだが、運命は皮肉にも生かされ、
この場合は勇者ムートに助けられ、本来ならこの役はジュリアスが我が贖罪(しょくざい)の為にも、
この役を負うべきではあったのだが、事態はこうまでも複雑に気味悪くなってしまった。
だから、今の処、一番、贖罪の少ない私が選ばれたって訳なのだが」

「その、ジュリアスはどうした。
マーガレットはどうなる、息子のマルクスはどうなった?
あと、シャルルは一体何を知っているんだ」

俺は、エッチにかまけていたので、ここ最近の情勢にはホント疎かったから、ペトルに矢継(やつ)ぎ早に質問した。

「ああ、一遍にそう聞かないでくれ、
ジュリアスか、ジュリアスは兄のシリウスにも裏切られ、
息子である筈のマルクスにも父親とは認められず、
最後に奥さんであるマーガレットが実は猟奇的大量殺人犯だったから、
心にぽっかりと穴が空いた痴呆のような状態って言うのかな、それにかなりの鬱状態だ。
で、今、現在、まさかの私ことペトル・クランスキーが代理を任されている訳だけど、
正直、ね、何が何だか」

ペトルは天井を仰ぎ見ながら、なんか半分うんざりしたような雰囲気を醸し出していた。

「そうそう、マーガレットはいずれ処刑されるだろう。
一連の事件の詳細な調べが終わればね。
息子のマルクスのことか、これも結構デリケートなことでね。
実は、マルクスはもしかしたらジュリアスの息子じゃ無く、やはりシリウスの息子かもしれない。
と言うのも、10年以上前にはシリウスとマーガレットは婚約していて、
もう直ぐ結婚真近までの状態だったのだが、例のキサナ国の謎の失踪をした姫、
シャルル、名前を言っても良いよな?」

そうペトルはシャルルの方を見ながら一応、お伺(うかが)いは立てたぜ、って感じな表情で、
シャルルはシャルルで観念した表情で頷(うなず)いた。

「キサナ国の謎の失踪をしたシャーロット・グラムデル姫の歌会に出席し、
身も心も一遍に奪われてしまったらしい。
この話しはジュリアスから聞いただけで、私は実際には見ていない。
しかし、実はジュリアスもシャーロット・グラムデル姫に一目惚れしてしまったんだな。
このことは私も良く覚えている。
なにせ、ジュリアスはその時は誰とも婚約などしていないし、
まさか兄のシリウスがシャーロット・グラムデル姫に求婚を行うとは、夢にも思わなかったし、
だからこそ、その日の歌会でのシャーロット・グラムデル姫の美貌と気品ある身のこなし、
なによりも今までに聴いたことが無い魂が震えるシャーロン姫の歌声と、初めて聴く曲と歌、
全てがまさに天上からの贈り物に感じたらしい。
それを聞いて、私も早くその天上界の歌、声を聴きたい、会って見たいと思ったし、
実際に生で見て歌を聴いたら、ジュリアスと同じ気持ちさ、そうだったよなシャルル」

シャルルは10年前の事件を知っている?
それよりも俺はペトルが言ったキサナ国の失踪姫であるシャーロット・グラムデル姫と言う名前に衝撃を受けた。

オ・レ・は・シャーロット・グラムデルの名前を何故か知っている。

今の今まで忘れていたのか、故意にその記憶を封印(ふういん)していたのか解らないが、
兎に角、俺は知っていた。

そんな、俺の「あっ思い出した」見たいな表情をシャルルは目を細めて見ていた。

「おいおい、シャルル、
お前はまだ、色々と私には私達には知らせていない、何かを知っているようだな、
なるほど、その鍵の一つがやっぱり外人こと勇者ムートとの関わりかな」

「ムート、シャーロット・グラムデル姫のことを何か思い出したのか?」

シャルルは突然、俺の動揺する表情を読んで質問した。

俺は、正直、シャーロット・グラムデル姫のことを、俺にとっては20年も前のことを、
時間を掛けて自分で封印しやっと忘れていた記憶の扉を突然こじ開けられ、
頭の中がパニックっていた。

だから

「よ・く・わ・か・ら・な・い」

と、片言ずつ喋るだけで精一杯だった。

「なんだか、ここに来て、一気に役者が揃って来た感じだな。
面白くなってきた。
話しを戻しておこうか、
ま、その10年前の元凶(げんきょう)というべきかこちら側の3国の王族、
王子達を手玉に取った悪魔の歌姫ことシャーロット・グラムデル姫によって、
カスナ国の王子ことシリウス・バーンスタイン王子は突然の婚約破棄を行い、
キサナ国のシャーロット・グラムデル姫に猛烈に求婚のアプローチをし出した。
ここから、兄シリウスと弟ジュリアスの確執が産まれるのだが、
今ではこんな悲劇になろうとは、
悲劇なのか喜劇なのか、もはや解りませんな」

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