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エピローグ
136 永遠の誓いをあなたと②
しおりを挟む二十畳ほどの広い洋間の応接セットのソファーに腰かけて談笑していた男女が、私の方に視線を向けた。
白いベビードレス姿の赤ん坊をその胸に抱いている、上品な黒留袖に身を包んだ五十代に見える女性には、見覚えがあった。
間違いない。祐兄ちゃんちのおばさん、『咲子さん』だ。記憶の中の姿との差異が、ほとんどないことに驚いた。
そして、咲子おばさんの隣りに座る男性の姿を見た瞬間、私はさらに驚いた。モーニングコートの正礼装に身を包んだロマンスグレーの素敵なおじさま。
少し鋭さを持った切れ長の瞳や、通った鼻筋、薄めの唇。どこをとっても、祐一郎さんにそっくり。
――いや、この場合、祐一郎さんがお父さんに似ているんだ。
思わずチラリと祐一郎さんに視線を向ければ、なんとなく不機嫌そうな表情を浮かべている。
――うん。間違っても、「そっくり」とは言わないようにしよう。
それだけのことを数瞬の間に決意すると、私は「初めまして、祐一郎さんには大変お世話になっています、篠原茉莉です。この度は、美由紀さんと守さんのご結婚、おめでとうございます」と、ソファーに座る二人に向かって深く頭を下げた。
「あら、まあまあまあ! やっと会えたわ茉莉ちゃん!」
咲子おばさんは、ソファーから立ち上がると赤ん坊、美由紀とスマイリー主任、もとい守さんの愛娘、八カ月になる美咲ちゃんを胸に抱いたまま、満面の笑顔で私の方に歩みよってきた。
「こんなに素敵な女性になって。佳代さんもきっと天国で喜んでいるわね……」
おばさんの瞳の中に、うっすらと涙の膜が張る。
「お久しぶりです。咲子おばさん……」
私も母との思い出がオーバーラップしてしまい、少しうるうると目が潤んでしまう。
「美咲ちゃんも、こんにちはー」
ニコニコと私たちの様子を見ていた美咲ちゃんのもみじみたいな手を握り、声をかけると「にぱっ!」と天使の笑顔を向けられる。
ふふふ。いつ見ても美咲ちゃんは、エンジェルだ。守さんが、でろでろのパパ馬鹿になるのもうなずける。
「まったくもう、祐ちゃんってば、茉莉ちゃんとお付き合いしているなんて一言も教えてくれないんだから。みぃちゃんに聞いた時には、驚くやら嬉しいやらで大変だったのよ。本当、今日会えるのを、楽しみにしていたわ。ねえ、彰成さん!」
ニコニコと話を振られた彰成さんこと、祐一郎さんのお父さんは、少しだけ目元をほころばせた。
――ような気がする。
「まあ、立ち話もなんだから、座りましょうか」
咲子おばさんに促されてソファーに腰を落ち着けようとしたとき、入り口のドアがパタリと開いた。
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