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第四話 【秘密】後ろめたさの理由。

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 翌日。
 いつもの社員食堂でいつものごとく、礼子さんとお昼を食べ終えた私は、陽花のことを相談してみた。

「心臓病かぁ……。私の知り合いにも、心臓病の人間がいるから分かるけど、あれって本人も相当辛いけど、看病する方も大変なのよね」

「そうなんですか……」

 心臓がおかしくなったら、即、命に関わるだろうことくらい、素人の私でも分かる。水を汲み上げるポンプが止まれば、水流は途絶えてしまうのだから。

「詳しい病状は……、分からないんだったわね」
「はい。いとこからの又聞きなんで、そこまでは……」
「食べ物は制限されているかもしれないから、お見舞いの品は、オーソドックスだけどお花か、そうね、何かお勧めの本でも持っていってあげたら?」

 お花と、本かぁ。
 今の季節だと、何があるだろう?

 やっぱり向日葵ひまわりかな?

 確か、切り花用の小振りの向日葵があった気がする。

 本は、どんな内容がいいんだろう?

 ホラーとかは、もっての外よね。あまり、ドキドキ・ハラハラするのもいけないような気がするし。泣ける話も、なんだかなぁ。ラブコメみたいのが、いいのかなぁ。

 う~ん……。

 と、考えを巡らせていたら誰かに後ろから肩をトントンと叩かれ、驚いて視線を上げると、珍しく直也がいた。

「あれ、直也?」

 別に社員どうしの恋愛が厳禁な会社じゃないけど、さすがに社内で会うのは、はばかられる。だから、お昼を一緒に食べることは滅多にない。

「あら、篠原さん、珍しく社食ですか?」

 礼子さんが、ニコニコと満面の笑みを、私の背後に立つ直也に向けると、直也もニコニコ笑顔を返す。同じ笑顔でも、礼子さんのはとっても艶やかで、直也の笑顔は見ているとなんだかホッとする。

「相席、いいかな?」

「どうぞどうぞ。邪魔者は消えますので、ご存分に愛を語らってくださいな」

 首を傾げる直也に、礼子さんはそう言って、洗練された所作で席を立ち上がった。

「ここへどうぞ、篠原課長」

 最近、課長に昇進したばかりの直也に、恭しく両手を差し出して自分の座っていた椅子を勧める。

「礼子さんってば!」

 いくら社内恋愛に寛容な社風でも、さすがに社食でイチャつけるほど、神経太くありません!

 私が少し口を尖らせてみせると、礼子さんは愉快そうクスクス一笑いして、『じゃーねー』と右手をヒラヒラ振りながら社食を出ていってしまった。

「なんだか、追い出したみたいで悪かったな」

「いいのいいの。今から、デートだそうだから」

「へぇ。あの礼子女史のお相手か。少し、興味がわくな」

 ほう。真面目を絵に描いたような直也でも、そう言うのは気になるんだ。

 お相手が我が社の後継者である現専務で家庭持ちだって知ったら、いったいこの人はどんな反応をするんだろう。と、イケナイ興味が湧いて、思わず直也の顔をマジマジと見つめた。

 もちろん、話すつもりはさらさらないけど。

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『ひまわり~この夏、君がくれたもの~』

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