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ここはお城らしい

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そしてその間に、その人は何故か俺の前に膝をつき、
頭を下げ出した。
「えっ、ちょ、あのっ、やめてく…ださい!
 大体なん…ですか、みこ?って…」
所々タメ口が出そうになるのを必死に抑えながら
気になったことを聞く。
多分、彼の格好とこの部屋や廊下などを見るに
和風の方の巫女ではなさそうなんだが…。
と言うか、おとぎ話みたいな喋り口調だ。
何だか…凄く嫌な予感が頭をよぎる。
その人は酷く驚いた様な顔をした後に、漸く
立ち上がって俺はほっとする。
「その…聞いていらっしゃらない…のですか?
 "神々の予言"から、貴方が神の愛し子…
 即ち、神子である事は分かっているんだが…」
………なんっだ、それぇ…?
その言葉を聞いて思ったことは、それだった。
いやなんだ、はっきり言うと…頭を疑ってしまう。
日本語ではあるんだが日本語じゃないみたいな…。
…そう言えばこの人の顔立ちからして、日本人では
なさそうなんだよな。
と言うかどこの国からこんな美形が産まれるんだろうか。
不躾だがまじまじと見つめている俺のことが
不快に思ったのか、その人が声をかける。
「…神子…様?」
「あっはい!す、すみません!」
「何故貴方が謝るんだ…?」
あれ、俺が悪いんじゃなかったのかな。
その人は信じられないと言った感じで俺を見る。
「いや…な、何でもない、です」
「そうか…ではとりあえず、説明も兼ねて部屋の中に
 戻りましょう。
 神子を立たせたままは失礼に当たる」
はっきり言ったらそれこそ不快に思われるか、
そう思った俺は言わなかった。
その人も思うところはあったのか、だけど言わずに
部屋に入って椅子に座って喋ろうと提案してくれた。
俺はそれに素直に頷いた。

部屋に入り、その人に座ってもらおうと思って
部屋にあった高級そうな椅子を、とりあえず
持ち上げようとすると慌てた様子で止められた。
「み、神子様!?何をなさって…」
「え、いや、あん…貴方も疲れるでしょう?」
「あぁなるほど、そういう事か…私は平気…です、
 騎士は並大抵の事では疲れないのです。
 それと私に遠慮はいらないので、座ってください」
「そう、ですか…」
あ、やっぱり騎士なんだ…と思って椅子を
元の場所に戻して、ゆっくり座る。
いやおかしすぎるだろ、なんで騎士がいるんだよ。
と言うか、さっき言ってた神の愛し子と言うのも
まるで意味が分からないし…。
聞きたいような、聞きたくないような。
「それで神子様、何からお聞きしたいのでしょうか」
「…えっと、まずその…貴方のことからでいいですか?」
心の準備も兼ねて、目の前の相手を知ろうと
そう言うと騎士の人はまた驚いた様に、目を見開く。
「はっ?私の事…ですか?」
「あぁいや、守秘義務とか言いたくないとかなら
 全然いいんです、けど…」
「いえ…!申し遅れました、私は王城所属の近衛騎士
 レエリト・ドュランベルと申します」
まさかの衝撃?の事実が発覚した。
ここ、王城だったし近衛騎士?とか偉い人じゃん。
え?あの…本でしか見たことないけど、王城?
そんなとこにこんなド貧民を入れて、大丈夫?
つか知らずにベタベタ椅子を触っちゃったんだが!?
触っただけで賠償請求とかされないよね!?
「…神子様?」
「あ、いやちょっと考え事と言うか不安とかっ…」
「そう…ですよね、神子様はまだまだ幼く、
 親元が恋しい時期ですから…」
その言葉に、俺は黙った。
あんなクソみたいな親が恋しいとか、冗談じゃない。
そう思ったが…そうだ、レエリトさんの様子じゃ
まだ、何も知らないんだ。
俺を"ただの普通の子供"と見ていても仕方ないだろう。
…だからって、毎回こんな思いするのは御免だ。

「神子様?どうかなされ…」
「俺、親はいないんです」
「えっ…」
「だから、恋しいとか分からないんです」
「そっ、んな…そうとは知らず、も、申し訳ありませんッ!」
焦った感じで俺に頭を下げてきた。
この人、見ず知らずの子供に対していい人だな…。
…いや、俺が子供で、しかも"神子"だから、かな。
「いえ、大丈夫です。慣れましたから」
「そう…か」
当事者じゃなかろうに、何故か痛ましそうな顔をする。
よく分からないのは、俺がひねくれているからか。
「それより、レエリト…さんのことを」
「あ、あぁ、分かりました」
それから、レエリトさんの話を俺なりに噛み砕いて
理解する。
レエリトさんは侯爵家の家の三男で、
何か人の役に立ちたい、と言う素晴らしい志を持って
騎士になった様だ。
騎士の中では4番目に強い、らしい。
それから、神子の事について。
神子とは、200年に一度神々がこの世界に連れてくる
存在でありこの国で尊ばれるべき者、らしい。
そして俺がその神子、らしい。

つまり俺は、死んだと思ったら異世界転生を
していたと言う事だろう。
「最悪だな」と思わず口に出てしまった。
レエリトさんには聞こえてなかった様だが。
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