元いじめられっ子の俺が今流行りの異世界転生モノに！？にしちゃ、様子がおかしいんだが？

知らない場所、知らん人

　　

一瞬、落ちていく数秒の間だけ見えた。
あのいじめっ子が、フェンス越しでこの世の終わりみたいに
怯えた目と青ざめた顔をしていたのを。
はは、ざまぁみあがれ！と俺は笑えた。
これだけで十分だ。
アイツの家は金持ちだから、都合の悪いいじめの事実は
揉み消されるだろう。
でもあの反応を見る限り、きっとアイツのトラウマに
なれたに違いない。
ならそれでいい、少しは苦しめ、ゴミ虫はお前だ。
今まで散々やられっぱなしだった俺が、唯一
最初で最後に反撃できた瞬間だった。



それから、程なくして違和感に気付いた。
…いつまで経っても痛みと言うか…それっぽい
衝撃すら来なかった。
と言うか、柔らかい布か何かに包まれている気すら
するんだが。
確かに飛び降りた感じがした筈なのに、一体どうなって…
恐る恐る、俺は瞼を開いた。
…なんだこれ、天井に模様が、ある？
なんと言うか、シミも汚れも見当たらない真っ白な天井。
いや違うな…布っぽい感じがするから、えーっと、
よく分からないがとにかく高そうだ。
てかそうじゃない、なんで生きてるんだ、俺は。
しかも、あの朝方から俺の胃を中心に支配していた
気持ち悪さとかが一切ない。
腕も足もちゃんと動かせるし、若干の気怠さはあるが、
それでも前よりもかなり身体が軽く感じられる。
天井に向けて手を伸ばすと、これまた真っ白で
清潔そうなシャツを着ていた。
巻くってみると、昔アイツらにやられた傷は
そのまま残っていた。
ゆっくりと身体を起こして、周りをちゃんと見る。
…病院…じゃないとは思う。
病院がこんな、古本屋の本で見た王宮だが
何だかみたいな高級そうな広い部屋な訳がない。
ベッドはふかふかだけど、点滴とかそういうのは
見当たらないし。
じゃあ一体、どこなんだって話なんだが。
全く見当はつかない…と言うか、ついてたまるか。
…と言うか、この場合はどうしたらいいんだろう。
よく分からないのに動くのは危ないだろうけど、
もう俺死んでるからな。
今更2度死のうが怪我しようが、誰も悲しまない。
と、言う事で散策してみよう！
俺は気持ちのいい柔らかいベッドから這い出て、
ぺたぺたと裸足のまま扉に向かった。
俺がドアノブに触れるより先に、ガチャリと
音がしてドアが開いた。
…燃える炎の様に赤い髪と浅黒い肌が特徴的な、
なんと言うんだろう、野生的？ワイルドな人？が
現れた。
まるで騎士みたいな、黒い甲冑を身にまとっている。
で、何故かその人は固まった状態のまま動かない。
「…あの～………」
「あ…あぁすまない、神子よ。まさかもう起きているとは
　思わず…失礼した」
ん？？みこ？巫女？？なんて言ったこの人？？
今度は俺が固まる番だった。