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大公令嬢は状況を知る
心配している(侍女視点)
しおりを挟むside チェリシア
「おねえちゃんが、アンジェとあそんでくれるんですか!」
私がお嬢様と初めてあったのは、彼女が6歳のときだ。
貧乏子爵家の末っ子。9歳になった年、小さくも聡明な姫君の話し相手として奉公に来た先で出会った少女は、とても天真爛漫で、明るく、そして泣きそうなくらい優しい方だった。
おねえちゃんとしたってくれる彼女と私、そしてシューティーが仲良くなるのはそう時間もかからなかった。
お嬢様は領地や王都の人達のことをいつも気にかけ、慈しんでらした。いつも第一に考えるはこの国に暮らす家族のこと、私たちのこと、そして、民のこと。
いつも自分のことは後回しで.......
それは、妹君ティターニア様が産まれてからはもっと顕著に……ひどく、なっていった。
紫銀の髪に薄桃色の瞳。まさに妖精姫のような容貌の妹君を、お嬢様はひどく溺愛した。
無駄に国家勢力を混乱させぬよう自国の有力貴族と将来は結婚するであろう妹君のため、この国に不利益にならぬよう王妃教育に全力を注ぎ、だんだん殿下に会うのも疎かにし始めた。
帝国で元属国の格下などと舐められぬように、いつしかお嬢様は完璧令嬢と呼ばれるまでになっていった。
でも、私もシューティーも心配だった。
だって、お嬢様の表情は氷のように冷たくなっていって。
奥様や旦那様も、ターニャ様だって無理するのはやめて欲しいと言っているのに聞かなくて。
誰よりもこのバングドリアを愛してくださるお嬢様。
でも、国のために自分のことすら蔑ろにするその姿勢は、いつか、お嬢様自身を破滅に導くような気がして、すごく怖かった。
けど、あの日。
殿下と再会してから、またお嬢様は怒ったり、笑ったりして下さった。小さい頃の、お嬢様に戻ってくださった。
これが、愛の力というやつなのかしら。だとしたら、もう心配しなくてもお嬢様は幸せになれるのだろう。
そう言えば……
お嬢様が男爵令嬢を追いかけた時、殿下の顔が真っ青になっていた気がする。
なぜなのかしら?
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