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大公令嬢は状況を知る

不意をつかれてしまった

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「俺たちの婚約がなくなったら、大戦争勃発待ったナシなんだよ!」
ユージーンの発言が、最初は理解できなかった。
戦争って……あの、戦争?
大空襲とか、原爆とかの、あれ?
「な、何かの間違いじゃないの……? だってこれ乙女ゲーム……」
「だから言ったろ、ほかのゲームにはない機能が装備されたって。それがライバルとの友情判定、それと」
あくまでライバル令嬢が悪いわけじゃないというシナリオ設定である。
「幼い頃からの婚約を真実の愛とやらで破棄するんだ。乙女ゲームではヒロインでも、第三者から見たら高貴な身分の令嬢から婚約者を奪い取った女狐だ」
乙女ゲームユーザーもそれは分かっている、だからこそ悪役令嬢のスカッとする復讐小説はひとつのジャンルとして確立した。
そこに目をつけたのが、【雨の姫】の制作スタッフだ。

「【雨の姫】には悪役令嬢と呼ばれるライバルが3人いる」


1人目の悪役令嬢は、リブラーヴァ王国のイリス・ミューズエバー王女。
2人目は、カンツォプランツ国のユノー・カルテナイト公爵令嬢。
そして最後の1人.......

「バングドリア王国のアンジェリナ・ローズアリア大公令嬢。つまりお前だ」
「いやそれはあなたが婚約者な時点で分かってたけど、ちがうのよ!」
私はなぜ戦争エンドを迎えるかが知りたいの!
「わかってるさ。ここで重要なのが、悪役令嬢贔屓のシナリオになっているということ」
ユージーンは私をおさえ、話を続ける。

「俺とお前の立場は分かるな?」
「婚約者ね」
「裏背景は?」
「それは.......」

イルドマーズとバングドリアは元宗主国と属国という間柄だった。そこから独立戦争が怒り今に至るので、両国間の仲は険悪ではないにしろ良好とも言いづらい。
イルドマーズは、私を嫁がせることで人質にし、バングドリアに対する牽制を、
対するバングドリアは私を次期皇后とすることで帝国の政に介入することを考え、婚約を決めた。
要するに腹の探り合いだ。

「分かってるならいいが、さて問題です。こういう裏背景の中、婚約破棄を申し出せば?」
ユージーンの問いかけによって漸く事態を把握する。
いくら私が納得していようが婚約破棄なんてた日には姫君をバカにされたという大義名分で戦争を仕掛ける。
逆も然りだ、私が婚約破棄したいと言っても同じことが起きる。
「戦争じゃあん.......」
「そういうことだ。だから軽々しく婚約破棄とか言うなよ?」
誰が聞いてるかわからないからな。

そう言うと席をたち、そして.......


ちぅ
「へ?」


「今はこれくらいにして、また明日な? 婚約者殿」
ニヤリと笑って颯爽と部屋を出ていこうとするユージーン。
というか、今のほっぺの感触.......

「ちょっ、いまなにした!」
「じゃーなー」
「まてこらぁ!!」
もう一度投げた枕は閉まった扉に邪魔されてあいつにはとどかなかった。
無性にムカついてキスされた方の頬をゴシゴシと擦る。
ムカつく、
ムカつく!

何にムカつくって、散々振られて吹っ切れたと思ってたはずなのに、
ほっぺにキスされて、ちょっと嬉しく思ってしまった自分にだ。

それから、チェリー達が帰ってきて止められるまで、私は頬を擦ったりぱちぱちと叩いたりしていた。




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