上 下
16 / 42
[Revenant/Fantome]

[04]第二話 白の化け物

しおりを挟む

ヘリンはそのまま、白い化け物の腕を避け、足元へと走る。

足を狙う。

そうやって、行動力を制御させる。

自分よりも大きい相手と戦うときは足から崩していくのがセオリーだ。

足元に潜り込んだヘリンは剣で白い化け物の足を斬りつけた。

だが、刃が通らなかった。

背中を斬りつけたときの様に弾かれたのだ。

外皮が固い。

まるで鉄の塊を斬りつけているかのような感触にヘリンは焦った。

動きが遅いのはこの鋼のような外皮を身に纏っているからだと直感した。

ヘリンは剣が弾かれ崩された体勢を急いで取戻し、足元から離れた。

距離を保ち、再び相対する。

どうにかして、この白い化け物を倒す策を考えなければとヘリンは焦る。

外皮が柔らかい部分を探し、そこを重点的に狙うしかない。

父ボールスならそんなことを考えるまでもなく、その外皮を刺し貫いていただろう。

特別なのだ。

父のあの強さは。

そんなことを考えると同時に己の非力さを呪う。

だが、この寒さの中、長期戦は見込めるのか。

こうして考えを巡らしている間にも体力は奪われていっている。

 「やるしか、ない」

決意を固めたヘリンの行動は早かった。

白い化け物へ、一陣の風となって駆ける。

ヘリンが向かってくると、白い化け物は近づかせぬように攻撃を始める。

叩きつけるような攻撃を避けながら、ヘリンは白い化け物に攻撃をしていく。

斬りつけるのではなく、まるで引っ掻くような弱い攻撃だった。

当然、白い化け物にしてみればくすぐられているようなものだろう。

ダメージはない。

まるで、無意味にも思える攻撃のように見えるが、ヘリンには考えがあった。

白い化け物の外皮の柔らかい部分を探っていた。

引っ掻き、斬りつけるべき的確なポイントを探している。

雲を掴むような僅かな賭けであったが、その小さな希望にすがるしかない。

もう一度、ヘリンは距離を置く。

白い息が先ほどより吐き出されている。

息が上がっている。

攻撃を避けながら、攻撃を繰り返しているのだ。

その疲労は、計り知れない。

深呼吸を繰り返し、呼吸を整える。

もう一度。

これで見つからなければ、きつい戦いになる。

ヘリンはもう一度、白い化け物に向かって疾走した。

だが、その疾走は止められた。

雪がヘリンの足に絡みついていた。

正確には氷が足を覆い、地面に張り付いていた。

 「な、に……?」

一瞬、何が起きたか理解できなかったが、よく考えると、答えにたどり着く。
しおりを挟む

処理中です...