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『狂いし蒼き太陽』
/愛しき輪廻21
しおりを挟むあまりにも苦い。
痛み。
あのシェムハザからボールスを解放しなければならない。
だが、ボールスに剣を向けることが果たして正しいのか?
テオは不意にそう考えた。
攻撃性を増大させられているのならば戦いをすることは逆効果なのではないか?
大太刀に伸ばしていた手をスッと下ろすとボールスに向かって歩き出した。
「おいっ!」
ガウェインがそのテオの行動に声をあげる。
ガウェインはよく知っていた。
シェムハザと言う武器の恐ろしさも、ボールスの実力も。
向かっては来ないが一瞬でも攻撃出来る範囲に近づくとあの鋭い突きが待ち構えている。
シェムハザの特性を最大限に活かした突き。
貫けぬものはない。
傲慢を表したようなその特性を。
「だ、ダメ、テオ……来ちゃダメ」
ボールスも分かっている。
攻めてこないのはボールスが抑えているからだと分かった。
傷つけたくないと言うことが本当によく分かる。
だから、泣きながらも強い意思を持って抵抗している。
「大丈夫だ。だから、泣くな」
テオは手を前に差し出す。
ボールスの体がピクリと反応する。
シェムハザを持つ手がカタカタと震えていた。
間合いに入った瞬間、シェムハザがテオに向かって放たれた。
鋭く早い突き。
テオに向かって繰り出された攻撃がテオの頬を掠める。
血がボールスの目の前舞う。
テオの赤い髪とそれが重なって見えた。
「嫌、嫌ぁだぁ」
それを見たボールスは泣きじゃくり、子供のように叫ぶ。
パニックになり、次の瞬間にはテオに向かって二太刀目を繰り出していた。
心が混乱し、最早攻撃を抑える事が出来なくなっていた。
テオはボールスの攻撃を何とか躱し、距離をとった。
だが、すぐにボールスに向かって行く。
「ダメぇ、駄目! テオ、やだよ……ッ」
近寄ってくるテオを目にするとボールスはそう叫び続ける。
「嫌だ、嫌だ……いやぁぁ」
自分自身を嫌悪し、何もかもを拒絶するように嫌だと言葉を溢し続ける。
テオがボールスの間合いに入る。
パニックになっているから、攻撃は出鱈目だった。
だからこそ、テオは難なく攻撃を躱しボールスのそばに立つ。
「大丈夫だ。恐れるな。俺は傷つくのは怖くない」
そして、ボールスの顔を見つめた。
「泣くなボールス」
テオはボールスの体を抱き締める。
突き離そうと暴れるが、やがて力なく脱力する。
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