131 / 136
『狂いし蒼き太陽』
/愛しき輪廻17
しおりを挟む「前も話しただろ? あいつが俺の過去を知るものだからだ」
「その理由は、分かるが……他に理由があるような気がしてな」
ガウェインが前に語ったことは理解できた。
同じ境遇だから分かる。
だが、それだけで固執することもない。
考え方が違うと言われたらそれまでだが、昔馴染みというだけで全てを奪うというのは違うような気がしていた。
「いいよ。話してあげる。だが、それで納得するかは分からんだろうがな」
そう言うとガウェインは焼け焦げた地面の元に歩き、そこに転がる大太刀を掴むとテオの方に投げた。
「む?」
「アンフェアは好きじゃない。お前とは対等に立ちたいだけだ」
大太刀を返した理由を話すとガウェインはテオを見つめた。
テオは大太刀を受けとると、大太刀を背に担いだ。
それを満足そうに見てガウェインは笑う。
歪んだ笑みではない。
そこには柔らかな、どこか安らかな表情があった。
「俺がボールスを自分のものにしたい理由はな。ボールスと約束をしているからだ。ずっとずっと昔にな」
「約束?」
「そう、約束。ボールスもその約束を覚えているはずだよ。生まれ変わっても決して消えない場所にその記憶があるからな」
ガウェインがそう語る表情はひどく穏やかだった。
先程まで戦い、狂気を見せていたのが違うような気がするほど。
「ボールスはその約束で俺を救ってくれた。酷く絶望していた俺をたった一言でだ。他の奴が口にしたら決して信じはしなかっただろう。あの言葉はボールスだからこそ意味があるし、真実味があるのだ」
ガウェインの言葉はボールスを深く信頼していると言えた。
だが、それは分かる気がする。
テオもボールスの言葉に偽りを感じず、そして、それを必ず実行する真っ直ぐな心があるのを知っている。
「約束しよう……神に誓って裏切りはしない。君が死ぬまで側に居よう」
ガウェインはその言葉を大事そうに、噛み締めるようにゆっくりと、そして、今までよりも遥かに穏やかな声で呟いた。
「ボールスの誓いの言葉だ」
その言葉を聞き、テオの胸がチクリと痛んだ。
なぜだと不思議に思う。
だが、解答を得ることはできない。
それは己の内に生じた痛みだからだ。
「そして、俺が死ぬときボールスはその約束をきちんと守ってくれた。俺の体を血がつくのも構わずに抱きしめ、俺の死に涙を流していた」
それはガウェインの死の瞬間であった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる