128 / 136
『狂いし蒼き太陽』
/愛しき輪廻14
しおりを挟む次の瞬間、ガウェインの蹴りがテオの腹部に食い込む。
「ぐぁッ……」
「残念。お前に勝ち目はないよイリオカ=テオドール・クァトル」
痛みを圧し殺し、テオはガウェインを見る。
まだ、負けてない。
勝ち目がない訳じゃない。
いや、負けられない。
「死は受け入れることだ。受け入れれば安らぎを得られる。何故か分かるか?」
ガウェインは茶色い瞳でテオを見る。
「死は平等だからだ。誰にでも訪れる。上も下も、身分も地位も関係ない。そこにはただ己だけだ」
その表情はどこか穏やかで、安らいでいるようにも見える。
「お前は死を受け入れられるか?」
「さあな。死んだことがないからわからんな」
テオはガウェインの言葉にそうやって返すと再び大太刀を向けた。
「今、味わえ」
ガウェインも同じように剣を向ける。
再び、大太刀と剣が合間見える。
重ね、弾き、返し。
幾度となく続く応酬。
そこに狂気を孕み、狂喜を得る。
二人は剣を交わらせ続けた。
怪我をしているにも関わらず、テオは一歩も退かない。
それに気圧され、ガウェインは一歩後退る。
「なかなか、粘る……」
そう呟くガウェインの額に汗が滲む。
「ふふ、そろそろ殺してあげる」
歪んだ笑みを見せ、ガウェインはテオに告げる。
そして、ガラティンの光球をテオの周囲に発生させた。
今までのガラティンの光球とは違い、それははっきりとした殺気を放ち、重々しくテオの身にのし掛かった。
チリチリとその殺意が身を焦がすようだ。
「その罪は原罪よりも重い。畏れるな崇高というやつを」
ガウェインは静かに言葉を紡ぐ。
テオに話すでもなく独り言のようにも思える。
「死は誰にでも平等に訪れる」
ガウェインの言葉と共に風に混じる奇妙な言葉にテオは気づいた。
詠唱。
言葉の裏に隠された人間では意味をなさない言葉。
体全身でこの状況が危険だと警告を発している。
一歩、歩み、ガウェインを止めなければならない。
だが、光球はその光を強め、赤い炎を揺らした。
光球の点が静かに繋がっていく。
五芒星。
その瞬間、危険察知はレッドラインを越えた。
逃げ出さなければそこにあるのは完全なる焼失。
「―――ッ!!」
テオは声にならない咆哮をあげた。
「イグナイテッド・ゲヘナ」
同時にガウェインの詠唱が終わっていた。
………
……
…
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる