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『狂いし蒼き太陽』

/愛しき輪廻14

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次の瞬間、ガウェインの蹴りがテオの腹部に食い込む。

 「ぐぁッ……」

 「残念。お前に勝ち目はないよイリオカ=テオドール・クァトル」

痛みを圧し殺し、テオはガウェインを見る。

まだ、負けてない。

勝ち目がない訳じゃない。

いや、負けられない。

 「死は受け入れることだ。受け入れれば安らぎを得られる。何故か分かるか?」

ガウェインは茶色い瞳でテオを見る。

 「死は平等だからだ。誰にでも訪れる。上も下も、身分も地位も関係ない。そこにはただ己だけだ」

その表情はどこか穏やかで、安らいでいるようにも見える。

 「お前は死を受け入れられるか?」

 「さあな。死んだことがないからわからんな」

テオはガウェインの言葉にそうやって返すと再び大太刀を向けた。

 「今、味わえ」

ガウェインも同じように剣を向ける。

再び、大太刀と剣が合間見える。

重ね、弾き、返し。

幾度となく続く応酬。

そこに狂気を孕み、狂喜を得る。

二人は剣を交わらせ続けた。

怪我をしているにも関わらず、テオは一歩も退かない。

それに気圧され、ガウェインは一歩後退る。

 「なかなか、粘る……」

そう呟くガウェインの額に汗が滲む。

 「ふふ、そろそろ殺してあげる」

歪んだ笑みを見せ、ガウェインはテオに告げる。

そして、ガラティンの光球をテオの周囲に発生させた。

今までのガラティンの光球とは違い、それははっきりとした殺気を放ち、重々しくテオの身にのし掛かった。

チリチリとその殺意が身を焦がすようだ。

 「その罪は原罪よりも重い。畏れるな崇高というやつを」

ガウェインは静かに言葉を紡ぐ。

テオに話すでもなく独り言のようにも思える。

 「死は誰にでも平等に訪れる」

ガウェインの言葉と共に風に混じる奇妙な言葉にテオは気づいた。

詠唱。

言葉の裏に隠された人間では意味をなさない言葉。

体全身でこの状況が危険だと警告を発している。

一歩、歩み、ガウェインを止めなければならない。

だが、光球はその光を強め、赤い炎を揺らした。

光球の点が静かに繋がっていく。

五芒星。

その瞬間、危険察知はレッドラインを越えた。

逃げ出さなければそこにあるのは完全なる焼失。

 「―――ッ!!」

テオは声にならない咆哮をあげた。

 「イグナイテッド・ゲヘナ」

同時にガウェインの詠唱が終わっていた。



………
……
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