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『狂いし蒼き太陽』

/過去からの来訪者01

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大地はすっかり荒廃していた。茶色い土を踏みしめると固い感触が靴から伝わってくる。そんな固い大地を延々と歩き続けて、疲労はピークに達していた。

 「少し、休むか?」

テオはボールスにそう聞いた。細く、白いうなじには汗がにじみ、疲労を訴えていた。

 「とりあえず、水を飲め。熱中症になる」

テオはそう言いながら、ボールスに水の入った皮袋を渡した。ボールスはそれを受け取り、皮袋を開けると一口だけ水を飲むとテオに返した。

 「もっと飲めよ。倒れるぞ?」

心配そうにテオは皮袋を渡そうとするがボールスは手をあげ、それを拒んだ。

 「テオ、水は水源が見つかるまで貴重なものだから、そんなに消費していいものじゃない。先は長いんだよね?」

 「む?」

ボールスの言うように次の街まで先は長い。馬を借りたが、途中シェイタンに会い馬を殺された。ある程度進んだ道中で引き返すことはできず、二人は進むことを選んだ。だが、思ったよりも道は険しく、二人を苦しめた。

荒廃した大地では食べ物を探すことはできず、水すらも望めない。手に持っていた荷物のなかでやりくりする他なかった。どうもボールスはこんな冒険は慣れているようで食料の配分や水の配分すら計算しているようだった。

つい最近まで奴隷として飼われていたとは思えないほど順応した能力だとテオは思った。過去の、遠い遠い過去の記憶がボールスをうまく動かし、順応させているのだと考える。

 「お前には感心するよ」

テオはそう言ってボールスを見つめた。同じように旅をすることはテオにもあった。だが、どこか無頓着で抜けているところもあった気がする。どうにかなるだろうと考えて、よく怒られた。

懐かしい。

郷愁にかられる。一体いつの記憶か探ろうとするがいくつもの記憶が重なり邪魔をする。思い出すために時間を費やす。どれだけ記憶を重ねてきたのか分からない。普通ならとっくに発狂してもおかしくないというのに。

テオは座りながら、大太刀に手をやる。その感触だけはずっと、長く、長く、今でも手に残る。なくてはならないものとして持ち続けなければならない。

不意に悔しさと憎しみが込み上げる。この感情だけはいくら記憶が重なろうとも消えることはない。

 「……テオ?」

心配そうにボールスが覗きこんでいた。
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