32 / 136
『アネモネの傭兵』
紅き再会/26
しおりを挟む「イリオカさんも知らないわけはないと思いますが、私は街から出ることができません」
そう言ってボールスは服の袖をまくり、両手首をテオに見せた。
「所有紋か……」
所有紋とは所有者が決まった奴隷につけられる。ただ、これをつけられるのは王族、または権力、金を持った一部の貴族、商人だけだ。所有紋は奴隷の証と同じように書かれたり、掘られたりするものではない。特別な力で書き込まれる。ただ、奴隷の証と違うのは所有者の意思で消せるということくらいだ。
「すいません。逃げた時は逃げることに精一杯で忘れていたのです」
申し訳なさそうにボールスは言う。
「いや、気にするな。お前ほどの奴隷ならそれがあっても不思議じゃない。俺もうっかりしていた」
巨額の金で売られていったボールスにそれがついていない訳がないのだ。自分の物だと主張する独占欲の塊のような証。他人は他人、己は己。それだと言うのに他人を弄び独占する心。その醜さにテオは顔を一瞬しかめた。
「しかし、厄介だな」
そう呟き、目を閉じてテオは思案する。どうすればいいのか。自分だけなら街を出ることはできる。だが、ボールスは出ていくことができない。それならば何のために助けたのか分からなくなる。逃がしてやるからには必ず逃がしてやりたい。
そして、テオは結論にたどり着いた。
「その所有紋を消せば逃げられるな?」
………
……
…
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる