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第8章
第247話
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「聞いてたんですか?」
「当然だ。異空間越しに外の景色や会話を聞くなど、私たちにとっては造作もない事だ」(緑の精霊)
緑の精霊様は自慢するわけでもなく、それが自分たちにとって普通であるかの様に言う。まあ、精霊の中でも最上位の存在である精霊様方にしてみれば、本人が言う様に意識することなく普通に出来る事なんだろうな。
「聞いてたなら、会話に参加してくれてもよかったじゃないですか」
「…………私たちも知っている話だったからな」(緑の精霊)
スーッと視線を逸らしながら、緑の精霊様が間を開けてから言う。その間の空け方や態度から、普通に聞いていたのではないという事を、今までの長い付き合いから察することが出来た。
「さては、酒を飲んだり、お菓子を食べながら聞いてましたね?」
「そ、そんな事はない。私たちは縁側でお茶を飲みながら、真剣に聞いていたぞ」(緑の精霊)
「ほう…………」
俺は、緑の精霊様を疑わしい目で見る。暫くの間見つめ続けていると、緑の精霊様の額からタラリと汗が流れていく。精霊様方が動揺し、この様にゆっくりと汗を流す時には、大抵やましい事や隠し事がある時なのだ。そして、精霊様方が最近異空間内ではまっているのが、異空間内に作った武家屋敷の縁側で、酒を飲みながらおつまみやお菓子、更にはアイスなどを食べる事だ。
精霊様方は、兄さんの家にいる時はテント内で過ごしているが、外出したり遠出する時は、実体化したまま異空間内で過ごしている。この実体化したまま異空間内で過ごすというのは、俺の方から精霊様方に提案した。
ウルカーシュ帝国内では、精霊様方は気軽に実体化する事も出来ないし、何をするにも色々と考えてから動かなくてはならない。精霊様方は、里を出る時にそれは分かり切っていた事だから気にしないと言ってくれたが、精霊様方の里での生活を知っている身としては、何とかして気楽に毎日を過ごしてほしいと思った。
なので異空間に色々と手を加えて、精霊様方が過ごしやすい快適な環境に整え、俺が外出や遠出をしている間自由に過ごせる場所を用意した。その快適な環境というものの中には、飲食に関する事も含まれている。流石に酒造りは専門外なので出来ないが、酒のおつまみやお菓子を作ったり、アイスなどのデザートを作って、異空間内に常備してある。
今日は孤児院へと遊びに行くという事を伝えてあったので、今回も例に漏れず、精霊様方は異空間内で過ごしてもらっていた。そしてこちらも例に漏れず、朝から酒盛りをして酔っぱらいながら、お菓子などを食べて俺の様子を見ていたのだろう。
「た、確かに酒を飲んでいたし、お菓子も食べていた。だが、話を聞いていたというのも本当だぞ。でなければ、私もこうして異空間から出てこないからな」(緑の精霊)
「……分かりました。今回はそう言う事にしておきましょう」
「カイル殿と貴方方の仲が良いのは分かりました。ですが、貴方がこうして異空間から出てきたという事は、何かしら新しい情報があるのですか?」(サリエル)
「私たちは、実際にカイルとやり合った魔人種を見ていたからな。魔人種たちの国が出来ている可能性も、その陰で悪神が暗躍している可能性についても、早々に予想出来ていた。だから私たちは、こちらからこの件について星に問いかけた」(緑の精霊)
「「「「「!!」」」」」
「何時の間にそんな事してたんですか?」
「私たちも、毎日酒を飲んで、お菓子をたらふく食べているだけではない。カイルが知らないだけで、ちゃんとやるべき事はやっているんだぞ。……それで星からの回答になるが、ほぼ確実だそうだ」(緑の精霊)
緑の精霊様が星から伝えられた情報を言葉にすると、この場の空気が張り詰めたものへと一気に変わる。四柱の中でも、比較的温厚な部類に入るであろうサリエル様やヘラクレス神ですらも、全身からもの凄い怒気の混じった威圧感を放っている。
だが緑の精霊様は、ほぼという言葉の部分を一番強調して言っていた。少なくとも最低一柱の悪神が、地上に建国された国への関与が確定であるにも関わらずにだ。
「その、ほぼというのはどういう意味なのでしょうか?」(サリエル)
「星が地脈を経由して、魔人種たちが建国した国の位置を特定した。だがその国には、星に対抗するためと思わる力が無数に張り巡らされており、容易に中を探る事が出来なかったそうだ。星も自ら力を揮えば、それらを強引に突破する事は出来たそうだが…………」(緑の精霊)
「…………そんな事をすれば、国がある地域一帯の均衡は崩れ、延いては世界全体の均衡にまで影響する可能性がある」(ヘラクレス)
「そして本当に最悪の場合には、星そのものにまで影響が出る可能性すらもある」(ルシフェル)
「だが、奴らの国がある場所を特定出来ただけでも、俺たちからしてみれば非常にありがたい事だ。諸々の手間が省けたと思えば感謝こそすれ、星に対して何かを文句を言うつもりなどない。これで星に文句をいう奴がいたら、俺が存在ごと綺麗に消し去る」(ゼウス)
「そう言う事であるから、悪神が何らかの形で地上へ過剰に干渉しているのは感じ取れたが、それが一柱だけで済むのか、他の悪神が協力しているのか分からないそうだ」(緑の精霊)
「分かりました。その情報は、しっかりと他の者にも伝えておきます」(サリエル)
「ああ、そうしてくれ」(緑の精霊)
ここで一旦話の流れが落ち着き、この場に流れる空気も和やかなものに戻る。そして、サリエル様たち四柱から放たれる、怒りの混じった威圧感も収まっていく。アメリアさんがほんの少しだけホッとしている様子から、サリエル様たちは何時も通りの状態へと戻ったみたいだ。
「では、今回の報告についてはここまでとしましょう。何か新しい情報を収集した際には、ミシェルやグレイスを通じてカイル殿にも伝えさせます」(サリエル)
「お願いします」
「アメリア、紅茶とお菓子の用意をお願いします」(サリエル)
「分かりました。カイルさん、少々お待ちくださいね」(アメリア)
「はい、楽しみに待ってます」
「ふふふ、楽しみにしていてくださいね」(アメリア)
「ここからは、気楽に世間話でもしましょうか」(サリエル)
サリエル様やルシフェル様たちとの世間話の最初の話題は、直近にある天星祭についてだ。今まで天星祭りについて聞いてきた人たちは、比較的気軽に参加する事が出来る人たちだ。しかしここにいる神々は、安易に地上へと降りる事は出来ない。サリエル様たちは、天星祭が開催されている期間中、どの様に過ごしているのだろうと率直に気になった。
「……その三日間については、星から許可を得て、地上に降りる事が許されている」(ヘラクレス)
「まあ、細かく厳しい条件があるがな」(ゼウス)
「毎年力を限界まで制限した分霊体で地上に降り、それぞれで天星祭を楽しんでいます」(サリエル)
「だが、毎年やる事は一緒だがな。美味い料理やお酒を飲み食いし、帝国の民たちと交流していく。そして各都市の教会や神殿へと赴いて、シスターや司祭たち、それから子供たちと遊んでと過ごし、天星祭りが終わっていくというものだ」(ルシフェル)
ルシフェル様の言葉に、サリエル様たちも今までの天星祭の事を思い出している様だ。そこから暫くは、四柱の神々による天星祭のプレゼンテーションが続いた。それと共に、天星祭り最初期からの思い出も色々と教えてくれた。その思い出を語るサリエル様たち全員が、心からの微笑みを浮かべていたのが、とても強く印象に残った。
「当然だ。異空間越しに外の景色や会話を聞くなど、私たちにとっては造作もない事だ」(緑の精霊)
緑の精霊様は自慢するわけでもなく、それが自分たちにとって普通であるかの様に言う。まあ、精霊の中でも最上位の存在である精霊様方にしてみれば、本人が言う様に意識することなく普通に出来る事なんだろうな。
「聞いてたなら、会話に参加してくれてもよかったじゃないですか」
「…………私たちも知っている話だったからな」(緑の精霊)
スーッと視線を逸らしながら、緑の精霊様が間を開けてから言う。その間の空け方や態度から、普通に聞いていたのではないという事を、今までの長い付き合いから察することが出来た。
「さては、酒を飲んだり、お菓子を食べながら聞いてましたね?」
「そ、そんな事はない。私たちは縁側でお茶を飲みながら、真剣に聞いていたぞ」(緑の精霊)
「ほう…………」
俺は、緑の精霊様を疑わしい目で見る。暫くの間見つめ続けていると、緑の精霊様の額からタラリと汗が流れていく。精霊様方が動揺し、この様にゆっくりと汗を流す時には、大抵やましい事や隠し事がある時なのだ。そして、精霊様方が最近異空間内ではまっているのが、異空間内に作った武家屋敷の縁側で、酒を飲みながらおつまみやお菓子、更にはアイスなどを食べる事だ。
精霊様方は、兄さんの家にいる時はテント内で過ごしているが、外出したり遠出する時は、実体化したまま異空間内で過ごしている。この実体化したまま異空間内で過ごすというのは、俺の方から精霊様方に提案した。
ウルカーシュ帝国内では、精霊様方は気軽に実体化する事も出来ないし、何をするにも色々と考えてから動かなくてはならない。精霊様方は、里を出る時にそれは分かり切っていた事だから気にしないと言ってくれたが、精霊様方の里での生活を知っている身としては、何とかして気楽に毎日を過ごしてほしいと思った。
なので異空間に色々と手を加えて、精霊様方が過ごしやすい快適な環境に整え、俺が外出や遠出をしている間自由に過ごせる場所を用意した。その快適な環境というものの中には、飲食に関する事も含まれている。流石に酒造りは専門外なので出来ないが、酒のおつまみやお菓子を作ったり、アイスなどのデザートを作って、異空間内に常備してある。
今日は孤児院へと遊びに行くという事を伝えてあったので、今回も例に漏れず、精霊様方は異空間内で過ごしてもらっていた。そしてこちらも例に漏れず、朝から酒盛りをして酔っぱらいながら、お菓子などを食べて俺の様子を見ていたのだろう。
「た、確かに酒を飲んでいたし、お菓子も食べていた。だが、話を聞いていたというのも本当だぞ。でなければ、私もこうして異空間から出てこないからな」(緑の精霊)
「……分かりました。今回はそう言う事にしておきましょう」
「カイル殿と貴方方の仲が良いのは分かりました。ですが、貴方がこうして異空間から出てきたという事は、何かしら新しい情報があるのですか?」(サリエル)
「私たちは、実際にカイルとやり合った魔人種を見ていたからな。魔人種たちの国が出来ている可能性も、その陰で悪神が暗躍している可能性についても、早々に予想出来ていた。だから私たちは、こちらからこの件について星に問いかけた」(緑の精霊)
「「「「「!!」」」」」
「何時の間にそんな事してたんですか?」
「私たちも、毎日酒を飲んで、お菓子をたらふく食べているだけではない。カイルが知らないだけで、ちゃんとやるべき事はやっているんだぞ。……それで星からの回答になるが、ほぼ確実だそうだ」(緑の精霊)
緑の精霊様が星から伝えられた情報を言葉にすると、この場の空気が張り詰めたものへと一気に変わる。四柱の中でも、比較的温厚な部類に入るであろうサリエル様やヘラクレス神ですらも、全身からもの凄い怒気の混じった威圧感を放っている。
だが緑の精霊様は、ほぼという言葉の部分を一番強調して言っていた。少なくとも最低一柱の悪神が、地上に建国された国への関与が確定であるにも関わらずにだ。
「その、ほぼというのはどういう意味なのでしょうか?」(サリエル)
「星が地脈を経由して、魔人種たちが建国した国の位置を特定した。だがその国には、星に対抗するためと思わる力が無数に張り巡らされており、容易に中を探る事が出来なかったそうだ。星も自ら力を揮えば、それらを強引に突破する事は出来たそうだが…………」(緑の精霊)
「…………そんな事をすれば、国がある地域一帯の均衡は崩れ、延いては世界全体の均衡にまで影響する可能性がある」(ヘラクレス)
「そして本当に最悪の場合には、星そのものにまで影響が出る可能性すらもある」(ルシフェル)
「だが、奴らの国がある場所を特定出来ただけでも、俺たちからしてみれば非常にありがたい事だ。諸々の手間が省けたと思えば感謝こそすれ、星に対して何かを文句を言うつもりなどない。これで星に文句をいう奴がいたら、俺が存在ごと綺麗に消し去る」(ゼウス)
「そう言う事であるから、悪神が何らかの形で地上へ過剰に干渉しているのは感じ取れたが、それが一柱だけで済むのか、他の悪神が協力しているのか分からないそうだ」(緑の精霊)
「分かりました。その情報は、しっかりと他の者にも伝えておきます」(サリエル)
「ああ、そうしてくれ」(緑の精霊)
ここで一旦話の流れが落ち着き、この場に流れる空気も和やかなものに戻る。そして、サリエル様たち四柱から放たれる、怒りの混じった威圧感も収まっていく。アメリアさんがほんの少しだけホッとしている様子から、サリエル様たちは何時も通りの状態へと戻ったみたいだ。
「では、今回の報告についてはここまでとしましょう。何か新しい情報を収集した際には、ミシェルやグレイスを通じてカイル殿にも伝えさせます」(サリエル)
「お願いします」
「アメリア、紅茶とお菓子の用意をお願いします」(サリエル)
「分かりました。カイルさん、少々お待ちくださいね」(アメリア)
「はい、楽しみに待ってます」
「ふふふ、楽しみにしていてくださいね」(アメリア)
「ここからは、気楽に世間話でもしましょうか」(サリエル)
サリエル様やルシフェル様たちとの世間話の最初の話題は、直近にある天星祭についてだ。今まで天星祭りについて聞いてきた人たちは、比較的気軽に参加する事が出来る人たちだ。しかしここにいる神々は、安易に地上へと降りる事は出来ない。サリエル様たちは、天星祭が開催されている期間中、どの様に過ごしているのだろうと率直に気になった。
「……その三日間については、星から許可を得て、地上に降りる事が許されている」(ヘラクレス)
「まあ、細かく厳しい条件があるがな」(ゼウス)
「毎年力を限界まで制限した分霊体で地上に降り、それぞれで天星祭を楽しんでいます」(サリエル)
「だが、毎年やる事は一緒だがな。美味い料理やお酒を飲み食いし、帝国の民たちと交流していく。そして各都市の教会や神殿へと赴いて、シスターや司祭たち、それから子供たちと遊んでと過ごし、天星祭りが終わっていくというものだ」(ルシフェル)
ルシフェル様の言葉に、サリエル様たちも今までの天星祭の事を思い出している様だ。そこから暫くは、四柱の神々による天星祭のプレゼンテーションが続いた。それと共に、天星祭り最初期からの思い出も色々と教えてくれた。その思い出を語るサリエル様たち全員が、心からの微笑みを浮かべていたのが、とても強く印象に残った。
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