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第8章
第246話
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実際に対面したサリエル様は、あの通信魔術越しの姿は一緒なのだが、全身から放たれるオーラや覇気がもの凄い。それに魔力の量や質も凄まじく、それらが俺の肌をビリビリと震わせてくる。
これ程までに格の違いを感じさせてくるのは、ヘクトル爺やルイス姉さんたち強者の戦士たち、竜種たち上位存在や精霊様方などの超上位存在、里の外に出て最初に遭遇した悪神といった存在たちと相対した時以来だ。
「初めまして。アールヴの一族が一人、カイルと申します。お会い出来て、とても光栄に思います」
「初めまして。私は天空島ロクス・アモエヌスに暮らす四柱の内の一柱、サリエルと申します。こちらこそ、世界樹の守護者にして、今代の契約者にお会いすることが出来て光栄ですよ」(サリエル)
俺とサリエルさんが、和やかな雰囲気で頭を下げ合って挨拶をする。そんな俺たちを見て、アメリアさんもにこやかに微笑んでいる。
「カイル殿、今日はあの方々も来ていらっしゃいますか?」(サリエル)
「精霊様方ですか?ええ、今も一緒にいますよ」
「そうですか、それは良かった。もしカイル殿のご都合が宜しいのならば、報告の後で少し時間をいただけますか?」(サリエル)
「今日この後は特に用事はないので、夜までの時間なら全然大丈夫です」
「そうなのですね、助かります。ではミシェルやグレイスたちに変わり、報告をお願いしてもよろしいですか?」(サリエル)
「はい、分かりました」
「では、アメリアと共に家の中へどうぞ。ルシフェルたちも既にこちらに集まっていますので、直ぐにでも始めましょう」(サリエル)
「了解です」
サリエル様に招かれた俺は、アメリアさんと共にログハウスの入り口である扉へと近づいていく。そして、サリエル様と共にログハウスの中へと足を踏み入れた。
ログハウスの中は、とても心が落ち着く木の良い匂いが漂い、鼻腔をくすぐってくる。ここまで良い匂いがする木材は、故郷の里や森以外では初めて見た。これ程まで質の良い木になるには、高濃度・高密度・高純度の三拍子揃った魔力が必要になる。地上の大陸でこのクラスの木に巡り合い、手に入れるとなれば相当魔力濃度の濃い場所へ赴かなければならないだろう。
だがここは、アメリアさんの言った様に疑似的な神の領域と呼べる空間だ。そうであるのならば、この異空間で物質を生み出す際に、サリエル様たちが求める品質にするのも自由自在か。
〈いや、それにしても本当に良い匂いだ。里の実家や自分の家の匂いを思い出す、とても懐かしい匂いだ。というよりもこの匂い……〉
「……世界樹の匂いによく似てるだろ?」(ゼウス)
「ええ、とても良く似ています」
「ログハウスを生み出す時にイメージしたのが、この世界の世界樹だったからな。匂いが似てるのも当然だ」(ゼウス)
「その分、生み出すのに苦労したがな」(ルシフェル)
「世界樹を模した事に、星から何も言われなかったんですか?」
「…………余り精巧に複製しすぎるなと。……私たちとしても、新たな世界樹を生み出すつもりはなかったからな」(ヘラクレス)
「魔力を豊富に保有している木以上、世界樹未満のラインで収まる様に調整しました。地上にも、私たちの生み出した木と酷似している木々が生えているでしょう?」(サリエル)
「そうですね。世界樹には及ばないものの、自我や意思の宿った木々を知っています。このログハウスの木には、そういったものを感じる事はありませんが」
「まあな。その辺は色々と調整して、普通の木として生み出した」(ゼウス)
「……さて、雑談はこの辺りにしましょうか。カイル殿、報告をお願い出来ますか?」(サリエル)
「了解です」
サリエル様が場の空気を切り替える様に言うと、ルシフェル様たちの雰囲気が真剣なものに変わる。サリエル様がそれを確認した後、チラリと俺に視線を向けてくる。俺はサリエル様に対して頷き返して、魔人種たちの国が建国されている可能性が高いであろう事や、その裏に少なくとも一柱の悪神の陰が見え隠れしている事を報告する。
報告が始まった頃は、四柱とも静かに聞いていた。だが俺の語る予想を含めた報告が深刻さを増していくごとに、徐々に怒気が強まっていった。その怒りの度合いは、普段のサリエル様たちからも感じた事がない様で、アメリアさんも非常に驚いている。
ミシェルさんやグレイスさんからも聞いていた通り、神と言う存在が地上に過度に干渉する事は、強大な力を持つ神に課せられた制約を破る事であり、絶対に超えてはならない一線の様だ。建国された魔人種の国の陰に、悪神が見え隠れしているかもしれないという未確定な情報であっても、その可能性が高いと言うだけで四柱ともこの怒気だ。これで悪神が裏で力を貸していたり、複数の悪神が地上に影響を及ぼしていた事が確定したら、どれ程の怒りになるのだろうな。想像するだけも恐ろしいな。
「もし本当に地上に過度に干渉しているのならば、善神であろうが悪神であろうが、決して許されざる行いだ」(ルシフェル)
「そうだな。恐らくだが、この過度の干渉を行っている悪神は、悪神側の過激派の一柱だと予想出来る。そして悪神側の過激派の神々が動いてるとなれば、善神側の過激派の神々が動いている可能性も出てきた」(ゼウス)
「……可能性があるとするならば、ウルカーシュ帝国の影響力が小さい大陸中央か、大陸東側の地域だと考えられる。もしくは……」(ヘラクレス)
「この大陸とは別の大陸で、着々と過激派の勢力を増大させていた可能性がありますね。とても厄介な事になりました。各地にいる調停者の皆さんにも連絡をとり、異常なまでの力を感じる場所や物などがないか、大陸の調査をお願いする事にしましょうか」(サリエル)
「実際にその場所や物を見つけた場合、サリエル様たちはどう動くでしょうか?」
「見つけたのが場所であっても物であっても、まずは詳細な情報を得るためにも、徹底的な調査を行う。そして調査によって十分な情報を収集し、それらの情報を星と共有してから、星と共にどの様な行動に移すのかを決める事になるだろうな」(ルシフェル)
「直ぐにでも殲滅、という訳ではないんですね」
俺の素直な感想に、サリエル様たちは苦笑する。どうやら、地上への過度な干渉が確定したとしても、早々簡単に手を出す事は出来ない様だ。ルシフェル様が教えてくれた内容によれば、過度な干渉をしている悪神に対して力を揮うのにも、十分な時間と詳細な情報、それから星の許可が必要となる様だな。
まあ相手が悪神たる神であるのなら、それを相手に戦うのも善神たる神だ。当然神々同士の戦いともなれば、戦闘の規模も地上への影響も凄まじいものとなる。そうなれば、かつての大戦の時の様に世界の均衡が大きく崩れてしまう。かつての大戦の再現を避けるためにも、色々と慎重に動く必要があるという事だろう。
「カイル、お前にもこの件で動いてもらう時がくるかもしれん」(ゼウス)
「はい、分かっています。今代の契約者としても、一人の調停者としても、再び大戦の様な大きな争いが起こる事は望んでいません。それにこの件を放置したままだと、いずれ世界樹が狙われたり、災いが降りかかってくる可能性もありますから。事前にそれらを回避して、世界樹の安寧を守るためにも、俺も微力ならが協力させていただきます」
「…………カイルが協力してくれるなら、我々としても心強い」(ヘラクレス)
「そうですね。魔人種と一対一でやり合える戦士は、今の時代には大変貴重ですからね。それに契約者としての力を解放せずとも、高位存在に匹敵する力を持つ強き戦士です。我々にとって大きな助力になります」(サリエル)
「歴戦の戦士であるヘクトルやルイス、アールヴの長であるアストや世界樹自身が認めた戦士。悪神との戦いでも、大いに戦力になってくれるだろう」(ルシフェル)
「それはそうだ。カイルは私たち全員が認めた、歴代でも最高の契約者だと断言しても良い戦士だからな」(緑の精霊)
サリエル様たちの言葉に反応する様に、俺の右横から新たな声が発せられた。チラリとそちらに視線を向けると、俺の右横に異空間が開いており、そこから緑の精霊様が顔を出していた。
これ程までに格の違いを感じさせてくるのは、ヘクトル爺やルイス姉さんたち強者の戦士たち、竜種たち上位存在や精霊様方などの超上位存在、里の外に出て最初に遭遇した悪神といった存在たちと相対した時以来だ。
「初めまして。アールヴの一族が一人、カイルと申します。お会い出来て、とても光栄に思います」
「初めまして。私は天空島ロクス・アモエヌスに暮らす四柱の内の一柱、サリエルと申します。こちらこそ、世界樹の守護者にして、今代の契約者にお会いすることが出来て光栄ですよ」(サリエル)
俺とサリエルさんが、和やかな雰囲気で頭を下げ合って挨拶をする。そんな俺たちを見て、アメリアさんもにこやかに微笑んでいる。
「カイル殿、今日はあの方々も来ていらっしゃいますか?」(サリエル)
「精霊様方ですか?ええ、今も一緒にいますよ」
「そうですか、それは良かった。もしカイル殿のご都合が宜しいのならば、報告の後で少し時間をいただけますか?」(サリエル)
「今日この後は特に用事はないので、夜までの時間なら全然大丈夫です」
「そうなのですね、助かります。ではミシェルやグレイスたちに変わり、報告をお願いしてもよろしいですか?」(サリエル)
「はい、分かりました」
「では、アメリアと共に家の中へどうぞ。ルシフェルたちも既にこちらに集まっていますので、直ぐにでも始めましょう」(サリエル)
「了解です」
サリエル様に招かれた俺は、アメリアさんと共にログハウスの入り口である扉へと近づいていく。そして、サリエル様と共にログハウスの中へと足を踏み入れた。
ログハウスの中は、とても心が落ち着く木の良い匂いが漂い、鼻腔をくすぐってくる。ここまで良い匂いがする木材は、故郷の里や森以外では初めて見た。これ程まで質の良い木になるには、高濃度・高密度・高純度の三拍子揃った魔力が必要になる。地上の大陸でこのクラスの木に巡り合い、手に入れるとなれば相当魔力濃度の濃い場所へ赴かなければならないだろう。
だがここは、アメリアさんの言った様に疑似的な神の領域と呼べる空間だ。そうであるのならば、この異空間で物質を生み出す際に、サリエル様たちが求める品質にするのも自由自在か。
〈いや、それにしても本当に良い匂いだ。里の実家や自分の家の匂いを思い出す、とても懐かしい匂いだ。というよりもこの匂い……〉
「……世界樹の匂いによく似てるだろ?」(ゼウス)
「ええ、とても良く似ています」
「ログハウスを生み出す時にイメージしたのが、この世界の世界樹だったからな。匂いが似てるのも当然だ」(ゼウス)
「その分、生み出すのに苦労したがな」(ルシフェル)
「世界樹を模した事に、星から何も言われなかったんですか?」
「…………余り精巧に複製しすぎるなと。……私たちとしても、新たな世界樹を生み出すつもりはなかったからな」(ヘラクレス)
「魔力を豊富に保有している木以上、世界樹未満のラインで収まる様に調整しました。地上にも、私たちの生み出した木と酷似している木々が生えているでしょう?」(サリエル)
「そうですね。世界樹には及ばないものの、自我や意思の宿った木々を知っています。このログハウスの木には、そういったものを感じる事はありませんが」
「まあな。その辺は色々と調整して、普通の木として生み出した」(ゼウス)
「……さて、雑談はこの辺りにしましょうか。カイル殿、報告をお願い出来ますか?」(サリエル)
「了解です」
サリエル様が場の空気を切り替える様に言うと、ルシフェル様たちの雰囲気が真剣なものに変わる。サリエル様がそれを確認した後、チラリと俺に視線を向けてくる。俺はサリエル様に対して頷き返して、魔人種たちの国が建国されている可能性が高いであろう事や、その裏に少なくとも一柱の悪神の陰が見え隠れしている事を報告する。
報告が始まった頃は、四柱とも静かに聞いていた。だが俺の語る予想を含めた報告が深刻さを増していくごとに、徐々に怒気が強まっていった。その怒りの度合いは、普段のサリエル様たちからも感じた事がない様で、アメリアさんも非常に驚いている。
ミシェルさんやグレイスさんからも聞いていた通り、神と言う存在が地上に過度に干渉する事は、強大な力を持つ神に課せられた制約を破る事であり、絶対に超えてはならない一線の様だ。建国された魔人種の国の陰に、悪神が見え隠れしているかもしれないという未確定な情報であっても、その可能性が高いと言うだけで四柱ともこの怒気だ。これで悪神が裏で力を貸していたり、複数の悪神が地上に影響を及ぼしていた事が確定したら、どれ程の怒りになるのだろうな。想像するだけも恐ろしいな。
「もし本当に地上に過度に干渉しているのならば、善神であろうが悪神であろうが、決して許されざる行いだ」(ルシフェル)
「そうだな。恐らくだが、この過度の干渉を行っている悪神は、悪神側の過激派の一柱だと予想出来る。そして悪神側の過激派の神々が動いてるとなれば、善神側の過激派の神々が動いている可能性も出てきた」(ゼウス)
「……可能性があるとするならば、ウルカーシュ帝国の影響力が小さい大陸中央か、大陸東側の地域だと考えられる。もしくは……」(ヘラクレス)
「この大陸とは別の大陸で、着々と過激派の勢力を増大させていた可能性がありますね。とても厄介な事になりました。各地にいる調停者の皆さんにも連絡をとり、異常なまでの力を感じる場所や物などがないか、大陸の調査をお願いする事にしましょうか」(サリエル)
「実際にその場所や物を見つけた場合、サリエル様たちはどう動くでしょうか?」
「見つけたのが場所であっても物であっても、まずは詳細な情報を得るためにも、徹底的な調査を行う。そして調査によって十分な情報を収集し、それらの情報を星と共有してから、星と共にどの様な行動に移すのかを決める事になるだろうな」(ルシフェル)
「直ぐにでも殲滅、という訳ではないんですね」
俺の素直な感想に、サリエル様たちは苦笑する。どうやら、地上への過度な干渉が確定したとしても、早々簡単に手を出す事は出来ない様だ。ルシフェル様が教えてくれた内容によれば、過度な干渉をしている悪神に対して力を揮うのにも、十分な時間と詳細な情報、それから星の許可が必要となる様だな。
まあ相手が悪神たる神であるのなら、それを相手に戦うのも善神たる神だ。当然神々同士の戦いともなれば、戦闘の規模も地上への影響も凄まじいものとなる。そうなれば、かつての大戦の時の様に世界の均衡が大きく崩れてしまう。かつての大戦の再現を避けるためにも、色々と慎重に動く必要があるという事だろう。
「カイル、お前にもこの件で動いてもらう時がくるかもしれん」(ゼウス)
「はい、分かっています。今代の契約者としても、一人の調停者としても、再び大戦の様な大きな争いが起こる事は望んでいません。それにこの件を放置したままだと、いずれ世界樹が狙われたり、災いが降りかかってくる可能性もありますから。事前にそれらを回避して、世界樹の安寧を守るためにも、俺も微力ならが協力させていただきます」
「…………カイルが協力してくれるなら、我々としても心強い」(ヘラクレス)
「そうですね。魔人種と一対一でやり合える戦士は、今の時代には大変貴重ですからね。それに契約者としての力を解放せずとも、高位存在に匹敵する力を持つ強き戦士です。我々にとって大きな助力になります」(サリエル)
「歴戦の戦士であるヘクトルやルイス、アールヴの長であるアストや世界樹自身が認めた戦士。悪神との戦いでも、大いに戦力になってくれるだろう」(ルシフェル)
「それはそうだ。カイルは私たち全員が認めた、歴代でも最高の契約者だと断言しても良い戦士だからな」(緑の精霊)
サリエル様たちの言葉に反応する様に、俺の右横から新たな声が発せられた。チラリとそちらに視線を向けると、俺の右横に異空間が開いており、そこから緑の精霊様が顔を出していた。
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