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第7章
第201話
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この世界における、最強の一角である竜種の牙、それも、その竜種の中の最強である竜神様と、それを支える陰陽の一族の、現役と先代の牙。
これらの代物には、高濃度・高密度・高純度と三拍子揃った、膨大という表現が、過小評価になってしまう程の、魔力が含まれていた。牙という、竜が誇る武器の一つであり、竜の中の、ほんの一部分とも言っていい物質の中に。
つまり、竜神様や陰陽の一族の竜たちは、その身を構成する全て、細胞一つに至るまで、魔力を宿しているという事だ。さらにそこに、純度の高い竜種の魂が合わさる事で、最強の一角である竜種の中で、頭一つどころか、二つも三つも突き抜けているのだ。
そんな竜神様の牙、陽の一族の竜王の牙を、徹底的に【解析】で調べ尽くした。まず、竜種の牙自体が、どの様な構造をしているか、という所から始め、牙の中に含まれる魔力の質と量、その魔力そのものが、どの様に繋ぎ合わさって、牙という物質の中に宿り続け、暴発しないのかを調べた。
その結果分かったのは、竜の身体に宿る魔力そのものや、その魔力同士の繋がりは、この世界に生きる、俺たち人型生物を含めた、全ての生物と、根本から違ったという事だ。これによって、竜種の鱗や翼、爪や牙の、異様なまでの硬さの秘密が、一つ解明できた。
そして、物質の中に魔力が宿り続け、暴発しないのは、他の生物との、根本から違う魔力同士の繋がりもあるが、牙という、物質的な構造においても、外側も内側も、他の生物と根本から違う、という事が分かった。それに伴って、籠められる魔力の質と量が、桁外れに多い事が分かった。
さらに驚くべき事に、自らの魔力に最適化されているのは勿論の事だが、異なる生物の魔力、周囲に満ち溢れている、何ものにも染まっていない自然の魔力すらも、取り込んだ際に、牙に馴染む様に、ある程度最適化されるのも分かった。
これらの、【解析】によって得られた情報を基に、まず試作品兼影打ちである、魔鉱石の打刀シリーズを作り始めた。様々な角度から、色々なものを試していき、幾多の失敗の後に、魔鉱石の打刀の雛型が完成。さらにその雛型を基に、打刀のみならず、様々な派生形のものや、刀以外のものも、生み出してみた。
色々な事を試して失敗が続き、行き詰った時に、心機一転して原点に立ち返り、牙を調べた際の資料を読み直し、全く別のアプローチで、打刀を打ち始めた。魔鉱石などの素材を使わずに、一般的な素材を使う事にし、刀になるまでの工程一つ一つにかける時間を増やし、竜の牙の物質的な構造、魔力的な構造を、刀という形に落とし込み、再現する事を目標にして、一本一本打っていった。
こちらのコンセプトの打刀も、魔鉱石シリーズの時と同様に、幾多の失敗と、数少ない成功を積み重ね、最初に満足いく出来で完成したのが、この一振りだ。
「ハハハハ‼何だ、そのバカみたいな魔力は‼相棒にも引けを取らない武器は、久々に見たぞ‼」(アッシュ)
興奮した様子で、笑いながら打刀を評価する。八角棒と同等レベルと言われて、率直に嬉しい気持ちもあったが、アートルム爺ちゃんの牙で生み出した太刀や、竜神様の牙で生み出した太刀、それらと比べると、まだまだ天地の差が開いている。
刀身に魔力を籠めた時、周囲の魔力を取り込んだ時に、それらの魔力を、刀身に最適化させるまでに時間がかかるし、最適化させたはずの魔力と、刀身に宿る魔力との繋がりが、甘く緩い時がある。そうなると、力が上手く発揮出来ず、竜の牙として力が、再現出来なくなる。再現出来たとしても、よくて四割で、最大でも五割、半分の力でも再現出来たら良い方だ。
「それなら、相棒の力をもう一段階解放させても、大丈夫そうだな‼」(アッシュ)
アッシュがそう言うと、八角棒の半ばまで染まっていた唐紅が、八角棒の先端まで、急速に染まりきっていく。そして、八角棒の全ての面に、正方形の四角推型の突起物が、等間隔で現れる。その姿はまさに、日本の物語に出てくる鬼が持つ、象徴的な武器である、金砕棒そのものだ。
そんな金砕棒は、唐紅に染まっている事もあり、まるで金砕棒全体が、赤熱している様に見える。そして、金砕棒全体を、可視化出来る程の濃密な魔力が覆っており、それがまるで、高温の熱によって、空気が揺らめている様にも見える。
そして恐ろしい事に、八角棒のみが強化されているのであって、アッシュ自身は、身体強化のみにとどまっているのだ。しかも、身体強化の深度は、戦闘が始まってから、あまり変わってはいない。つまりアッシュは、これぽっちも本気ではなく、まだまだ力を温存しており、余力がたっぷり残っているという訳だ。
力を解放した金砕棒と、真面に打ち合える様に、膨大な量の無属性の魔力を、打刀に籠めて強化する。籠められた魔力が、スムーズに最適化されて、刀身に宿る魔力と綺麗に繋がり合う。そして、繋がり合った魔力が活性化し、アッシュの金砕棒と同じ様に、可視化出来る程の濃密な魔力が刀身を覆い、打刀の形をした、竜の牙が目覚める。
「久々に、心躍る戦いになりそうだ‼なあ、相棒‼」(アッシュ)
アッシュの魔力が昂り、それに呼応するかの様に、金砕棒を染める唐紅が一瞬だけ、より色濃く輝く。
静かに、ゆっくりと、深呼吸を繰り返して、改めて精神統一をする。
打刀の柄を、右手のみで持っていたものを、両手持ちに切り替える。左脚を一歩前に出して、左半身をアッシュの方に向け、右半身を後ろに引きながら、両腕を上に上げていく。そして、両手を顔のすぐ横、両肘が胸の位置にくる様にして、刃先を上向きに、切っ先をアッシュに向ける、霞の構えをとる。
アッシュは構えを取ることなく、自然体のままにその場に立ち、その顔に笑みを浮かべたまま、金砕棒を肩に担ぐ。だが、身体全体から発する、高濃度の荒々しい魔力によって、その笑みが向けられたものに、獰猛な笑みという印象を与える。
そして、両者同時に加速し、その姿を掻き消す。
「――――――‼」
「――――――オラァ‼」(アッシュ)
互いに、真っ向からぶつかり合う様に突き進む。刀身と金砕棒が、真っ向からぶつかり合う。魔鉱石シリーズの打刀と違い、どれだけ魔力を籠めようと、刀身から悲鳴が上がる事はない。それどころか、どこかヤンチャで、気性の荒いお爺ちゃん竜の様に、もっと質の良い魔力を寄越せとばかりに、周囲の魔力を取り込んでいく。
時に押し勝ち、時に押し負け、一進一退の攻防を繰り返す。時間が経つ事に、アッシュのテンションが上がっていき、それに比例する様に、金砕棒を振るう速度と威力が、徐々に上昇していく。
真っ向から打ち合い続け、打刀で受け止め、受け流し、そこから反撃する。竜の牙として目覚めた刀身は、一切の刃毀れもなく、罅もない。魔力を籠めれば籠めるほど、刀身の切れ味が増し、硬度が増していく。
「――――フッ‼――――ハッ‼――――ハァッ‼」
流れる様な三連撃。最初の一撃は、水属性の魔刃を刀身に纏わせ振るい、二撃目は、風属性の魔刃を刀身に纏わせ振るい、最後の三撃目は、雷属性の魔刃を刀身に纏わせ振るう。
一撃一撃の、ほんの短い時間の間に、瞬間的に属性変換し、さらに、一撃目から三撃目までの速度を、一気に上げていった。狙った場所も、腹部・胸部・頭部と、下から順番に狙っていき、最後の頭部を狙った三撃目の速度は、目にも止まらぬ速さで振るった。
一撃目と二撃目は、その驚異的な身体能力、動体視力でもって避けられた。だが連撃の終、三撃目の速度には対応出来ず、アッシュの左頬に、一筋の切り傷が出来る。アッシュは、その傷を指で触り、その指に血が付いているのを見て、深く深く、心の底からの笑みを浮かべる。
「ハハハハハハ‼自分の血なんて、暫くぶりだ‼いいぞいいぞ‼それでこそ、世界樹の守り手だ‼」(アッシュ)
一頻り楽しそうに笑い、そして、真剣な表情に変わる。
「これなら、俺も全力で楽しめそうだ」(アッシュ)
今までの、興奮した様子から放たれる言葉とは違い、ただただ静かに、先程と比べると、別人なのかと思う程に冷静になり、顔から笑みを消したまま、アッシュがそう言った。
これらの代物には、高濃度・高密度・高純度と三拍子揃った、膨大という表現が、過小評価になってしまう程の、魔力が含まれていた。牙という、竜が誇る武器の一つであり、竜の中の、ほんの一部分とも言っていい物質の中に。
つまり、竜神様や陰陽の一族の竜たちは、その身を構成する全て、細胞一つに至るまで、魔力を宿しているという事だ。さらにそこに、純度の高い竜種の魂が合わさる事で、最強の一角である竜種の中で、頭一つどころか、二つも三つも突き抜けているのだ。
そんな竜神様の牙、陽の一族の竜王の牙を、徹底的に【解析】で調べ尽くした。まず、竜種の牙自体が、どの様な構造をしているか、という所から始め、牙の中に含まれる魔力の質と量、その魔力そのものが、どの様に繋ぎ合わさって、牙という物質の中に宿り続け、暴発しないのかを調べた。
その結果分かったのは、竜の身体に宿る魔力そのものや、その魔力同士の繋がりは、この世界に生きる、俺たち人型生物を含めた、全ての生物と、根本から違ったという事だ。これによって、竜種の鱗や翼、爪や牙の、異様なまでの硬さの秘密が、一つ解明できた。
そして、物質の中に魔力が宿り続け、暴発しないのは、他の生物との、根本から違う魔力同士の繋がりもあるが、牙という、物質的な構造においても、外側も内側も、他の生物と根本から違う、という事が分かった。それに伴って、籠められる魔力の質と量が、桁外れに多い事が分かった。
さらに驚くべき事に、自らの魔力に最適化されているのは勿論の事だが、異なる生物の魔力、周囲に満ち溢れている、何ものにも染まっていない自然の魔力すらも、取り込んだ際に、牙に馴染む様に、ある程度最適化されるのも分かった。
これらの、【解析】によって得られた情報を基に、まず試作品兼影打ちである、魔鉱石の打刀シリーズを作り始めた。様々な角度から、色々なものを試していき、幾多の失敗の後に、魔鉱石の打刀の雛型が完成。さらにその雛型を基に、打刀のみならず、様々な派生形のものや、刀以外のものも、生み出してみた。
色々な事を試して失敗が続き、行き詰った時に、心機一転して原点に立ち返り、牙を調べた際の資料を読み直し、全く別のアプローチで、打刀を打ち始めた。魔鉱石などの素材を使わずに、一般的な素材を使う事にし、刀になるまでの工程一つ一つにかける時間を増やし、竜の牙の物質的な構造、魔力的な構造を、刀という形に落とし込み、再現する事を目標にして、一本一本打っていった。
こちらのコンセプトの打刀も、魔鉱石シリーズの時と同様に、幾多の失敗と、数少ない成功を積み重ね、最初に満足いく出来で完成したのが、この一振りだ。
「ハハハハ‼何だ、そのバカみたいな魔力は‼相棒にも引けを取らない武器は、久々に見たぞ‼」(アッシュ)
興奮した様子で、笑いながら打刀を評価する。八角棒と同等レベルと言われて、率直に嬉しい気持ちもあったが、アートルム爺ちゃんの牙で生み出した太刀や、竜神様の牙で生み出した太刀、それらと比べると、まだまだ天地の差が開いている。
刀身に魔力を籠めた時、周囲の魔力を取り込んだ時に、それらの魔力を、刀身に最適化させるまでに時間がかかるし、最適化させたはずの魔力と、刀身に宿る魔力との繋がりが、甘く緩い時がある。そうなると、力が上手く発揮出来ず、竜の牙として力が、再現出来なくなる。再現出来たとしても、よくて四割で、最大でも五割、半分の力でも再現出来たら良い方だ。
「それなら、相棒の力をもう一段階解放させても、大丈夫そうだな‼」(アッシュ)
アッシュがそう言うと、八角棒の半ばまで染まっていた唐紅が、八角棒の先端まで、急速に染まりきっていく。そして、八角棒の全ての面に、正方形の四角推型の突起物が、等間隔で現れる。その姿はまさに、日本の物語に出てくる鬼が持つ、象徴的な武器である、金砕棒そのものだ。
そんな金砕棒は、唐紅に染まっている事もあり、まるで金砕棒全体が、赤熱している様に見える。そして、金砕棒全体を、可視化出来る程の濃密な魔力が覆っており、それがまるで、高温の熱によって、空気が揺らめている様にも見える。
そして恐ろしい事に、八角棒のみが強化されているのであって、アッシュ自身は、身体強化のみにとどまっているのだ。しかも、身体強化の深度は、戦闘が始まってから、あまり変わってはいない。つまりアッシュは、これぽっちも本気ではなく、まだまだ力を温存しており、余力がたっぷり残っているという訳だ。
力を解放した金砕棒と、真面に打ち合える様に、膨大な量の無属性の魔力を、打刀に籠めて強化する。籠められた魔力が、スムーズに最適化されて、刀身に宿る魔力と綺麗に繋がり合う。そして、繋がり合った魔力が活性化し、アッシュの金砕棒と同じ様に、可視化出来る程の濃密な魔力が刀身を覆い、打刀の形をした、竜の牙が目覚める。
「久々に、心躍る戦いになりそうだ‼なあ、相棒‼」(アッシュ)
アッシュの魔力が昂り、それに呼応するかの様に、金砕棒を染める唐紅が一瞬だけ、より色濃く輝く。
静かに、ゆっくりと、深呼吸を繰り返して、改めて精神統一をする。
打刀の柄を、右手のみで持っていたものを、両手持ちに切り替える。左脚を一歩前に出して、左半身をアッシュの方に向け、右半身を後ろに引きながら、両腕を上に上げていく。そして、両手を顔のすぐ横、両肘が胸の位置にくる様にして、刃先を上向きに、切っ先をアッシュに向ける、霞の構えをとる。
アッシュは構えを取ることなく、自然体のままにその場に立ち、その顔に笑みを浮かべたまま、金砕棒を肩に担ぐ。だが、身体全体から発する、高濃度の荒々しい魔力によって、その笑みが向けられたものに、獰猛な笑みという印象を与える。
そして、両者同時に加速し、その姿を掻き消す。
「――――――‼」
「――――――オラァ‼」(アッシュ)
互いに、真っ向からぶつかり合う様に突き進む。刀身と金砕棒が、真っ向からぶつかり合う。魔鉱石シリーズの打刀と違い、どれだけ魔力を籠めようと、刀身から悲鳴が上がる事はない。それどころか、どこかヤンチャで、気性の荒いお爺ちゃん竜の様に、もっと質の良い魔力を寄越せとばかりに、周囲の魔力を取り込んでいく。
時に押し勝ち、時に押し負け、一進一退の攻防を繰り返す。時間が経つ事に、アッシュのテンションが上がっていき、それに比例する様に、金砕棒を振るう速度と威力が、徐々に上昇していく。
真っ向から打ち合い続け、打刀で受け止め、受け流し、そこから反撃する。竜の牙として目覚めた刀身は、一切の刃毀れもなく、罅もない。魔力を籠めれば籠めるほど、刀身の切れ味が増し、硬度が増していく。
「――――フッ‼――――ハッ‼――――ハァッ‼」
流れる様な三連撃。最初の一撃は、水属性の魔刃を刀身に纏わせ振るい、二撃目は、風属性の魔刃を刀身に纏わせ振るい、最後の三撃目は、雷属性の魔刃を刀身に纏わせ振るう。
一撃一撃の、ほんの短い時間の間に、瞬間的に属性変換し、さらに、一撃目から三撃目までの速度を、一気に上げていった。狙った場所も、腹部・胸部・頭部と、下から順番に狙っていき、最後の頭部を狙った三撃目の速度は、目にも止まらぬ速さで振るった。
一撃目と二撃目は、その驚異的な身体能力、動体視力でもって避けられた。だが連撃の終、三撃目の速度には対応出来ず、アッシュの左頬に、一筋の切り傷が出来る。アッシュは、その傷を指で触り、その指に血が付いているのを見て、深く深く、心の底からの笑みを浮かべる。
「ハハハハハハ‼自分の血なんて、暫くぶりだ‼いいぞいいぞ‼それでこそ、世界樹の守り手だ‼」(アッシュ)
一頻り楽しそうに笑い、そして、真剣な表情に変わる。
「これなら、俺も全力で楽しめそうだ」(アッシュ)
今までの、興奮した様子から放たれる言葉とは違い、ただただ静かに、先程と比べると、別人なのかと思う程に冷静になり、顔から笑みを消したまま、アッシュがそう言った。
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