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第336話

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「なっ!?俺の魔法を、風の槍を!?」

 奇襲と風の属性魔法に相当の自信があった様で、奇襲が見破られた事と、全ての風の槍が切り裂かれた事に衝撃を受けている。だが俺たちからすれば、あんな魔力制御の甘い魔法を放っておいて、切り裂かれないと思っている方が驚きだ。
 ミスリルゴーレムと融合した男も、グリフォンと融合した男も、場数を踏んできた事は事実だ。だが戦場で生き残ってこれたのも、相対した敵を倒してこれたのも、暗き闇から力や魔力を授かっていたからだ。その強大な力や魔力を敵にふるい続ける内に、鍛錬を日々怠らない事や研鑽を積む事を忘れ、楽に楽にと流されて生きてきたんだろう。
 そして、楽で怠惰たいだな生活を繰り返し続けたその結果が、こうして魔力操作・制御の甘さとなって表れている。グリフォンと融合した男や、他の魔法使いたちもその事実から目を逸らし、怠惰を棚に上げて相手が悪いのだとするから目も当てられない。

「それならば、量より質でいくまで!!」

 グリフォンと融合した男はそう言って、周囲に幾つも展開していた魔法陣を別の魔法陣に掛け合わせていき、一つの巨大な魔法陣へと変化させていく。その際、さらに漆黒の魔力を込めて魔法を大幅に強化する。グリフォンと融合した男の言葉通り、ここから発動する魔法は全て、量で攻めるよりも一つ一つの魔法の質を高める方向でいく様だ。
 一つ、また一つと巨大な魔法陣が完成し、魔力の高まりによって周囲にバチバチと放電がほとばしる。周囲に放電する程に魔力が高まっているという事から、次に放たれる魔法の威力に関しては、先程の風の槍とは比較にならないだろう。

(というか、そんな威力の魔法を放って、この地下空間は大丈夫なのか?)
『暗き闇が干渉してダンジョンの様にしている事から、多少の無茶をしても崩れる事はありません。ウォルターたちも、存分に力を揮っても大丈夫ですよ』
『なる程。それなら気にする事なく力を出せますね』

 どれだけ広い空間であったとしても、ここが地下空間である事に変わりはない。戦闘によってこの空間が崩落して生き埋めにでもなってしまえば、賢者と呼ばれるジャック爺や、稀代の魔女であるローザさんとカトリーナであったとしても、生き残れる可能性は限りなく低いだろうと考えられる。
 なので、ミスリルゴーレムと融合した男と戦闘した時もそうだったが、俺たちはこの地下空間に生き埋めにならない様に、地下空間が崩壊しない様にと気を付けていた。しかし、アモル神が多少の無茶をしても大丈夫だとお墨付きをくれた事で、崩落を気にする事なく力を揮うことが出来る。

「皆、アモル様が多少無茶しても大丈夫だと」
「じゃが、あまりやり過ぎると崩落するかもしれんぞ」
「そうじゃ。いくら魔法の腕が良くとも、地下の崩落に巻き込まれたらどうしようもない」
「ウォルター君、アモル様は他に何か言ってた?」
「暗き闇が干渉して、地下一帯をダンジョン化させているそうです。普通の地下空間に比べて頑丈だから、多少の無茶もって事だそうです」

 俺がそう言うと、ジャック爺たちはなる程と納得してくれた。地下の崩落を気にしなくてもいいとなれば、全力を出す事は出来なくとも、もう何割かは力をあげても問題はない。本物の魔法使いと魔女、そして剣士というものがどういうものか、怠惰に過ごしてきたお前に教えてやろう。
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